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第一章
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「そういうベルだって、いいところなんて見た目くらいのくせに!」
実際エーベルトの見た目はとても良い。
柔らかな淡い金の髪に青灰色の瞳の貴公子然とした容姿から、令嬢達の間ではかなりの人気があることをリディアーヌも知っている。
でも彼女たちはエーベルトのこの性格を知らないから、そうやって騒げるのだ。
リディアーヌの前のエーベルトは、嫌味たらしい嫌な男だ。
「リディ、間違ってもレイノルドの前でその性格を出すなよ?」
「良く言うわ。ベルこそ精々アデーレの前では猫を被ることね」
互いににっこり笑って嫌味の応酬をする。
エーベルトと一緒に居ると、いつもこうだ。
「本当、ベルと結婚なんかしたら毎日こうやって嫌味を言われるわけでしょ?」
「そうだな。リディと結婚なんかしようものなら、毎日こうやってねちねち嫌味を言われるわけだ」
「ベルなんか-------」
「リディなんか------」
「「絶対嫌」」
「よ」
「だ」
まったく、こんなに仲が悪いというのに、何故皆わかってくれないのか。
嫌味を言いすぎて喉が渇いてしまったではないか。
お茶のおかわりをよそおうとしたところで、それよりも早くエーベルトが離れた所に控えていた使用人に視線を送った。
ニヴルヘルム侯爵家の優秀な使用人が、心得たようにすぐ新しいお茶を用意する。
同じタイミングでお茶を口に含んだ二人が、ホッとしたように息を吐き出した。
「……このお茶美味しいな。ダーリディンの今年のお茶か?」
「そうよ。……別に、ベルの為にわざわざ用意したわけじゃないわ」
「はは、そんなのわかってるさ。それより、そのケーキはもういいのか?」
「じゃあいただくわ。これ、ディメルの新作?」
ディメルはリディアーヌが好きな菓子の専門店だ。
「そうだ。……別に、リディが好きそうだからって用意したわけじゃないぞ。たまたまそれが美味しそうだったから買ってみただけだ」
「もちろんそんなのわかってるわよ。わざわざそんなこと言うなんて、本当嫌な人ね」
「そういうリディこそ」
にこにこと笑いながら再び嫌味の応酬を始める。
しかしなんやかんや言いながらティーポットのお茶がなくなるまで居た後で、エーベルトは帰っていった。
実際エーベルトの見た目はとても良い。
柔らかな淡い金の髪に青灰色の瞳の貴公子然とした容姿から、令嬢達の間ではかなりの人気があることをリディアーヌも知っている。
でも彼女たちはエーベルトのこの性格を知らないから、そうやって騒げるのだ。
リディアーヌの前のエーベルトは、嫌味たらしい嫌な男だ。
「リディ、間違ってもレイノルドの前でその性格を出すなよ?」
「良く言うわ。ベルこそ精々アデーレの前では猫を被ることね」
互いににっこり笑って嫌味の応酬をする。
エーベルトと一緒に居ると、いつもこうだ。
「本当、ベルと結婚なんかしたら毎日こうやって嫌味を言われるわけでしょ?」
「そうだな。リディと結婚なんかしようものなら、毎日こうやってねちねち嫌味を言われるわけだ」
「ベルなんか-------」
「リディなんか------」
「「絶対嫌」」
「よ」
「だ」
まったく、こんなに仲が悪いというのに、何故皆わかってくれないのか。
嫌味を言いすぎて喉が渇いてしまったではないか。
お茶のおかわりをよそおうとしたところで、それよりも早くエーベルトが離れた所に控えていた使用人に視線を送った。
ニヴルヘルム侯爵家の優秀な使用人が、心得たようにすぐ新しいお茶を用意する。
同じタイミングでお茶を口に含んだ二人が、ホッとしたように息を吐き出した。
「……このお茶美味しいな。ダーリディンの今年のお茶か?」
「そうよ。……別に、ベルの為にわざわざ用意したわけじゃないわ」
「はは、そんなのわかってるさ。それより、そのケーキはもういいのか?」
「じゃあいただくわ。これ、ディメルの新作?」
ディメルはリディアーヌが好きな菓子の専門店だ。
「そうだ。……別に、リディが好きそうだからって用意したわけじゃないぞ。たまたまそれが美味しそうだったから買ってみただけだ」
「もちろんそんなのわかってるわよ。わざわざそんなこと言うなんて、本当嫌な人ね」
「そういうリディこそ」
にこにこと笑いながら再び嫌味の応酬を始める。
しかしなんやかんや言いながらティーポットのお茶がなくなるまで居た後で、エーベルトは帰っていった。
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