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第4話 宇宙での戦い

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俺は脳内に届いた警告で目が覚めました。
理由は不法アクセス警報。

61番機の反応から、行える事の無い現象・・・つまり不許可発進シークエンスを知らされ。
「やれやれ、やっと動き出したか」
ずっとマークしていた人物が我々に牙をむいた。
裏切り行為とされるのは、ファルコンやファングに対し許可または非常時以外の接触を禁じる規則が破られた時。
例外は有るものの、防衛設備なので大破壊兵器として充分に機能する存在だからだ。


61番機は封印状態を解除していき、富士号とは異なる格納壁を解除して最終拘束ケーブルを強引に引き千切って空中に浮かんだ。
浮かび出したのは本体となる機体のみならず、付属する連携機器もだ。
もう一つの封印方法として完全な状態で出撃させない工夫、また警告装置の発動の為の時間稼ぎ。

非常事態を告げる基地の中、61番機は次の行動を始める。
付属装置は拒否権を発動しているが、残念ながらセーフガードは突破されてしまい、変形を開始した本体に接続していく。
それも逃亡の為に上空を目指して加速しながら。


犯人は要警戒対象の為、尻尾を出させる様に誘導もしていた。
それがやっと実った事になる。

機体の履歴情報から以前から犯人がしきりに細工していたことが判明している。つまり、引っかかってくれた。

「さすがに。今度こそは俺だけの、本気かな」

その時、不愉快な音色でしかもでっかい音が鳴り響く・・・。子供たちがいなくて良かった。

非常用のアラート。

【休んでいるとこすまん。緊急事態発生!個人招集。拒否権強制解除!来てくれ!!】

焦っている隊長の声が続く。それ程の事が起きている。
そして、これは予め定めらていたコールサインで有り、俺の能力解禁を示す。

その為、急いで身だしなみを整えてから個人招集用の個室に転移する。
こんな時にしか使わないが、倉庫の代わりにしないのと俺以外が入室が出来なく処理された、とても狭い小部屋だ。

扉を開けて、廊下に出る。ひっきりなしに緊急事態のアラーム音が響く。
軽く息を整えて作戦室に入る。
中には既にほとんどのメンバーが揃っている。足りないのは及川隊員と竜ちゃんか。
まあ、協力者は来れないけどな。

俺は自分のデスクの展開をして61番機のコントロールを戻す為に作業をするが、やはり直結回線のブロックに阻まれる。
「報告!復帰は不可を確認!!」

「了解した!・・・。これより緊急非常対応トリプルエスを発動する」
「すみません!!遅くなりましたあ!」
おおう。いいタイミングだな竜ちゃん、けど今回は休んでいてくれて良いんだ。
「ふむ全員そろったな。もう一度発令する!トリプルエスの発動だ」
全員が緊張感を漲らせて姿勢を正す。
「今後は解決若しくは決着するまでここから出ることを禁じるが一名のみを除外する!」

ザッと皆が俺を見る。竜ちゃんだけちょとオロオロ。まあ、知らせていないしな。

「了解!これよりトリプルエスを執行します。特殊権限復活。・・・みんな俺が戻るまで遠隔防御に集中し、最悪は軌道上の迎撃システムを起動!では行って来る!」

そう言って、俺は非常用と書かれた壁に手を当てる。
フッと視線を皆に向けると無言で見つめて来る。
彼女も口を引き結び、強い視線を向けて来る。ああ、やっぱり知らされていたか。
なるたけ判らない様にしていたけど。いや、待て・・・親父さんからか。
ちっ・・・仕方ないか。

軽く敬礼をして壁を透過する。
竜ちゃんは「え?え?・・・あの先って何も無い分厚い装甲板なんじゃ?」って狼狽えているが皆はクールにスルー。

特殊権限。創始者に名を連ねる者の内生き残っているのは俺一人、非常事態発生時に解決するその為の処置。
隊長や最高意思決定機関の指示を受けずに、俺が単独で全力全開を許される優先権限。
宇宙から渡来して地球防衛の為に尽力してくれた友人に報いる為の便宜的手段。

今回は自重は無し。

外に転移して宙に浮かび、屋上を目指して空中を蹴る。
あっと言う間に天井に至る。高さとして50メートル位か。
この階層は防御用の物理的・力場的な能力を持っている。
主に直上に対しての設備で、側面方向にはこの敷地に仕掛けてある壁がせり上がって来る。ついでにバリヤー的なのも発生できる。

さて乗っ取られた機体の回収か機能停止を直接したいが。
ちと、準備がいる。
簡単な装備を実体化して装着する。左腕に鎧風な透明と金属の覆い、右足の膝から下に三個のリングが連なった脛当てが。右肩に少し大げさな大きさの肩当が貼り付く。
これらは61番機のコントロールを取り戻す為の物。
もしできなかったら・・・。その時は力技で止めるしかなくなる。

俺の足元に輝く魔力陣が回転しながら現出。直径3メートル位まで広がって収縮し両足に集まる。
そう。莫大な魔力を持つ俺のコントロールシステムこそ、魔法で有り、魔術である。

「術式開放:比例加速。スタート」

足元に魔法陣が煌めき、収束していき、丁度足元で二つに分かれて消える。
身を屈めて伸ばす。ジャンプする仕草で屋上から離れると一定距離ごとにオートで起動して、その都度加速が倍になる。

相手の位置が不動を決め込んでいるから、転移では無く徐々に接近するのを選んだ。

衛星軌道上に61番機が佇む。その先、視認可能な距離にスペースコロニーと宇宙ステーションを混ぜた感じの防衛装置が浮遊している。
有人無人ともに運用でき、地表と宇宙から地球に近づく敵対する生物と物体に攻撃を行う。

彼の決め技と同等以上の火力を持つ。地球側の切り札の一つ。まあ、その火力故に危険性が高い事も事実。
その眼前にふわりと俺は停止する。

一つは撃たせない為と撃つのを止める為、もう一つは干渉をさせない為で本当の理由は別に有る。
何故、61番機がここに来たのかがその理由だ。
簡単に言えば裏がいる・・・。

メガサムソックMk・Ⅻとしての本体は頭部のみ。現在は活動停止状態で封印のまま。
つまり機体のみが強制的に稼働して伊織、その動力源と制御装置の代わりを及川隊員、いや、マシナリィ・シングが行っている。

機械生命体。
シリコン生命なんて概念が流行ったが、それに近い。
有機物だけが、いのち、では無いと知らしめた存在。
以前に一度地球に訪れて格好派手に暴れたので、キレた俺が肉体言語を持って互いに語り合って仲良くなった稀有な相手だ。

まだ竜ちゃんが赴任する前の出来事で、孤児になった子供を預かって、今ではそれぞれが自立して頑張っている。

この種族は外部からエネルギー供給が有ればかなりの長期間活動している。
それとは別に体内でも産出するのでかなりの強敵。
個体差も多くて特殊能力も有って、同一種族とはとらえられないから、大きな括りで一括して後は個体ごとに指定している。

仲が良くなった個体は裏方になってくれている。
実は別個体の到来の情報は此処から齎されており、敵意を持っている事と、紛れ込み更に目的の為に誘ってきた事を知らされた。
その為、要注意人物としてマークされ、尻尾を出させるように色々と仕掛けた。
協力者として結構深い所を曝して。
まあ、お互いに利益が有ったし、俺の情報も知る事が出来たので、上手く行けば大人しくしてくれるとも考えた。

他から横やりを入れられなければもう少し仲良く過ごせたかも。
いや無理か。
話してみたけど結構頑なだったから、元から命令でも受けていたんだろう。
あの種族は身内でドンパチやっているし、階級とかグループとかかなり多いみたいだからな。
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