A happy drive day!

シュレディンガーのうさぎ

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リュー

〈5〉

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次の日も清々しいほどの晴れだった。太陽がぎらぎらと外に出た朝陽を照りつける。
(日差しが痛いな……)
庭で雲一つない空を眺めていた朝陽を磯部が呼んだ。
「おい、そろそろ行くぞ」
朝陽は頷くと用意しておいたシュノーケルセットを持ち、車に乗り込んだ。
宮古島は決して狭い島ではないが、あちこちに美しいビーチがあるため、少し車を走らせればすぐに泳げる海岸まで行くことができる。
「宮古島の程々に田舎っぽい所が好きなんだよな。さとうきび畑や空き地みたいなのどかな所がある一方、スーパーマーケットや家電量販店みたいな都会っぽいところもある。しかも沖縄屈指の綺麗な海もある。最高だろ?」
磯部の言葉に朝陽はこくりと頷く。
「それに道路も人通りや車通りが少ないから運転しやすいですね」
「そうなんだよな、のんびり走れるのがいいんだよなあ」と磯部がすっかり陶酔しきったように言った。
道のあちこちに立つ警察型人形『宮古島まもる君』を見ながら道を走っていると、次第に青い海が見え始めた。
「もうすぐつくぞ」
磯部の言葉に、朝陽は海に目を釘つけにしながら頷いた。

間近で見る海は、遠くから見た海より一段と美しかった。水中に頭を入れなくても、魚が泳いでいるのが見えるほど水は透明だ。海の底にある白い砂に水面の泡の影がちらちらと映っているのが見えた。
テントを組み立て、荷物を重石にしてから磯部が立ち上がりぐるぐると肩を回す。
「晴れて良かったな。やっぱり海に入るときは晴れていないとな」
そうはしゃいだ声で言いながら海の方を見ていた磯部が朝陽の方を振り返る。そして怪訝な顔をした。
「……何しているんだ?お前」
「見ての通り日焼け止めを塗っているんですよ」
肌にこぼしたクリームを伸ばしながら朝陽が言う。
「宿から出る前も塗っていたじゃないか」
呆れたような顔をして見ている磯部を気にせず、朝陽は
「汗で少し流れてしまったので」と日焼け止めを肌の上で薄くのばす。
「お前、少しは日焼けした方が健康そうに見えるぞ」
「先輩みたいに綺麗に日に焼けないんですよ。赤くなってしまって」
そう困ったように言う朝陽に、磯部は
「あー、なるほどな。そうなると痛いもんな」と頷いた。
「意外と繊細だよな、お前って」
そう言って笑う磯部に、「意外と、ってなんですか」と朝陽が不満そうな顔をしながら尋ねた。

準備運動を終えたあと、朝陽はそっと水に足をいれた。海水は温かく、泳ぐのにちょうどいい温度だった。
「よし、海に入るか。……っと、そうだ」
思い出したように磯部が言う。
「ここ、クマノミがいるんだよ」
「へえ、クマノミですか?」
反芻した朝陽の言葉に磯部が頷く。そしてにやりと笑った。
「ああ。どっちが先に見つけられるか勝負しようぜ」
それを聞いて朝陽もにやりと笑う。
「いいですよ。賞品はあるんですか?」
「負けた方が飲み物を奢るってことで」と磯部が言う。
「分かりました」
朝陽の言葉を聞いて磯部が満足そうに笑った。
「よし。じゃあお前に少しヒントをやる」
「ハンデをくれるんですか?」と朝陽が尋ねる。
「まあな。俺は意地悪な先輩じゃないからな。……クマノミがイソギンチャクに住んでいるのは知っているな?」
「ええ」と朝陽は頷く。
「イソギンチャクは大体さんご礁にはりついている。まずさんご礁を探せ」
それを聞いて朝陽が海の方に視線を巡らせる。
「……あの黒っぽいのがさんご礁ですか?」
砂浜からあまり遠くないところにぽつぽつと岩のような黒いものが見えた。朝陽はそれらを指さして尋ねる。
「ああ。まずそこを探してみろ。だが探しに夢中になってさんご礁を傷つけないように。いいな?」
朝陽が頷いた。そして、磯部と別れるとさんご礁の方に向かってゆっくりと泳ぎだした。
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