A happy drive day!

メルダー

〈2〉

歩いてきた朝陽にリオンとティーが銘々に挨拶をした。
朝陽はいつものように挨拶を返したが、その声には元気がない。
そのことに素早く気づいたティーが心配そうに尋ねる。
「朝陽さん、大丈夫ですか？」
「……ああ、まあな」
リオンも窓から顔をだし、朝陽の様子を伺う。
「体調が優れませんか」
心配そうな二人を安心させるよう朝陽がぎこちなく笑った。
「いや、大丈夫だ。心配かけて悪いな」
そう言って運転席に乗り込む。
ティーはバイクのシートから飛び降りると、車に乗りこみ後部座席に座った。
「ティー、今日はついてこなくてもいいぞ」
朝陽がサイドミラーの調節をしながら言うと、ティーは首を振った。
「朝陽さんが元気がないのが気になるんです。何かあったのですか？」
そう尋ねるティーにリオンが顔をしかめる。
「……人間の問題に我々が首を突っ込むのは筋違いだと思いますが」
リオンに鋭く言われティーがうつむく。
「そう、ですけど。でも、いつもと違うせいで、運転に支障が出るのは嫌なんです」
「……」
ティーの言葉にリオンは黙りこんだ。
二人の主張を聞いて、朝陽がふっと微笑んだ。
「ありがとな、二人とも。そうだな、こんな気分で運転するのはあまりよろしくないな」
朝陽はそう言ってから腕時計を見た。まだ急ぐような時間ではない。
「じゃあ、少しだけ俺の話を聞いてもらおうかな」
朝陽の言葉にリオンが首をかしげた。
「朝陽の話、ですか」
「ああ。俺がどうして『車なんでも相談所』を始めたのか、という話だ」
ティーが目を丸くする。
「そういえば、それについては一度も聞いたことがありませんでした」
リオンも頷く。
「そうだよな。まあ、つまらない話かもしれないが聞いてくれ」
朝陽はそう言うと真剣な顔をした。そして口を開く。
「俺は元々タクシーの運転手として働いていた。だが、事故に遭ってしばらくしてからその仕事をやめて、『車なんでも相談所』を始めたんだ」
「え、朝陽さん、事故に遭ったことがあるんですか……？」
ティーが驚いたように言う。
「ああ、まあな。実は、今の俺の顔は本当の顔じゃない。事故の衝撃で顔が歪んでしまったから、少し整形しているんだ」
リオンが目から鱗が落ちたような顔をする。
「……初めて聞きました」
「話してなかったからな」
朝陽が笑う。
「まあ、頭や顔からの出血は多かったんだが、傷自体はそんなに大したことがなくてすぐに退院できたんだが。……だが、それから俺の世界はがらっと変わってしまったんだ」
話の続きを待つリオンとティーを見ながら、朝陽は話し出した。