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水族館にて
〈2〉
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車のすぐ横を通るのも危ないので、朝陽たちは早めに駐車場内に設けられた、ひさしのついた歩行者用通路の方に移動した。
ティーもそちらの方が気分的にいいようで、車を降りたばかりのときは「車が近くにいる」と朝陽の服の裾を掴んでびくびくしていたものの、今はわくわくした顔で足取り軽く歩いていた。
「ティー。初めて会ったときに比べて、大分他の車への恐怖が減ったな」
そう朝陽に言われてティーは嬉しそうに笑った。
「はい!朝陽さんのお陰です。ありがとうございます」
その表情を見て朝陽は微笑む。
朝陽は、車で出掛けるときは、出来るだけティーを連れていくようにしていた。そうすることで道路に出る時間が増え、かつリオンとも交流を深められると考えたからだ。
また、ティーが他の車への信頼を取り戻すためには、まず身近なリオンに心を開くのが最優先だと考えた。性格的な問題があるから友達にはならなくてもいいが、心の距離はもう少し縮まってほしい。
朝陽の努力のお陰か、最近では二人は顔を合わせれば挨拶を交わすくらいの仲にはなっていた。しかしまだお互いがお互いによそよそしく、打ち解けるには至っていなかった。
朝陽はリオンとティーの方を振り返った。二人とも銘々に違うところを見ながら歩いている。近すぎず遠すぎずといった微妙な距離を見ながら、朝陽は水族館で二人の仲がさらに縮まることを願った。
朝陽がチケットを買って戻ってくると、二人はいなくなっていた。どこに行ったのかと視線を巡らせれば、二人はガラス窓にはりついてお土産売り場を覗きこんでいた。
見たことのないカラフルなおもちゃやぬいぐるみに目が釘付けになっているようだ。
リオンもティーも大人の見た目ではあるが、どうやら精神は好奇心旺盛な子供と同じらしい。朝陽は二人に近づくと、肩をとんとんと叩き中に入るよう促した。
水族館の中に入ると、早速イルカが三人を出迎えてくれた。ティーが目を輝かせ、イルカのいる大きな水槽にめがけて走っていく。
「転ぶなよ」と朝陽が父親のように声をかけた。
ティーとは反対に、リオンは朝陽と共にのんびり水槽の方に向かう。
水槽にいち早く到着したティーは、体をガラスにべったりとくっつけると、キラキラとした目でイルカを見た。イルカがティーの方に寄ってきて、つぶらな瞳を彼女に向ける。
「わあ……」
ティーが額を水槽につける。イルカと頭がくっついてしまいそうだ。
「これはなんという生き物ですか」
リオンに尋ねられ朝陽が視線を巡らせる。彼の目が水槽の横にあった小さな看板に留まった。
「これは……バンドウイルカだ」
「バンドウイルカですか……」
リオンは(聞いたことがない名前だ)と思いながら、ゆっくりティーの横に立った。そして一緒にイルカを眺める。
大人二人が水槽前を独占したせいで、リオンとティーの後で小さな子供が一生懸命背伸びをしてイルカを見ている状態になってしまっていた。
さすがに可哀想に思った朝陽は二人に声をかけ、もう少し後ろで見るよう伝えた。
「あの小さいのは子供ですか?」
リオンが指を指したのは、大きなイルカの隣に並ぶ一回り小さなイルカだった。
「ああ、多分そうだな」
朝陽が頷く。
「イルカの子供も人間の子供みたいに小さいんですね!」
ティーが目を細めて子イルカを見る。
朝陽はゆっくりとイルカから腕時計に視線を移した。
「ん、いい時間だな」
そう呟いてリオンとティーに声をかける。
「もう少しでイルカショーが始まるぞ。見に行かないか?」
「イルカショーですか?」とリオンが首を傾げる。
「ああ。そこにいるイルカが芸をするんだよ」
それを聞いてティーが目を丸くする。
「芸、ですか?イルカが?」
「ああ、見たいだろう?」
朝陽の言葉にティーがさらに目を輝かせ、大きく頷いた。
「はい!見たいです!」
朝陽はいい返事を聞いて満足そうに笑うと
「よし、じゃあ行くぞ」と言い歩き出した。
ティーもそちらの方が気分的にいいようで、車を降りたばかりのときは「車が近くにいる」と朝陽の服の裾を掴んでびくびくしていたものの、今はわくわくした顔で足取り軽く歩いていた。
「ティー。初めて会ったときに比べて、大分他の車への恐怖が減ったな」
そう朝陽に言われてティーは嬉しそうに笑った。
「はい!朝陽さんのお陰です。ありがとうございます」
その表情を見て朝陽は微笑む。
朝陽は、車で出掛けるときは、出来るだけティーを連れていくようにしていた。そうすることで道路に出る時間が増え、かつリオンとも交流を深められると考えたからだ。
また、ティーが他の車への信頼を取り戻すためには、まず身近なリオンに心を開くのが最優先だと考えた。性格的な問題があるから友達にはならなくてもいいが、心の距離はもう少し縮まってほしい。
朝陽の努力のお陰か、最近では二人は顔を合わせれば挨拶を交わすくらいの仲にはなっていた。しかしまだお互いがお互いによそよそしく、打ち解けるには至っていなかった。
朝陽はリオンとティーの方を振り返った。二人とも銘々に違うところを見ながら歩いている。近すぎず遠すぎずといった微妙な距離を見ながら、朝陽は水族館で二人の仲がさらに縮まることを願った。
朝陽がチケットを買って戻ってくると、二人はいなくなっていた。どこに行ったのかと視線を巡らせれば、二人はガラス窓にはりついてお土産売り場を覗きこんでいた。
見たことのないカラフルなおもちゃやぬいぐるみに目が釘付けになっているようだ。
リオンもティーも大人の見た目ではあるが、どうやら精神は好奇心旺盛な子供と同じらしい。朝陽は二人に近づくと、肩をとんとんと叩き中に入るよう促した。
水族館の中に入ると、早速イルカが三人を出迎えてくれた。ティーが目を輝かせ、イルカのいる大きな水槽にめがけて走っていく。
「転ぶなよ」と朝陽が父親のように声をかけた。
ティーとは反対に、リオンは朝陽と共にのんびり水槽の方に向かう。
水槽にいち早く到着したティーは、体をガラスにべったりとくっつけると、キラキラとした目でイルカを見た。イルカがティーの方に寄ってきて、つぶらな瞳を彼女に向ける。
「わあ……」
ティーが額を水槽につける。イルカと頭がくっついてしまいそうだ。
「これはなんという生き物ですか」
リオンに尋ねられ朝陽が視線を巡らせる。彼の目が水槽の横にあった小さな看板に留まった。
「これは……バンドウイルカだ」
「バンドウイルカですか……」
リオンは(聞いたことがない名前だ)と思いながら、ゆっくりティーの横に立った。そして一緒にイルカを眺める。
大人二人が水槽前を独占したせいで、リオンとティーの後で小さな子供が一生懸命背伸びをしてイルカを見ている状態になってしまっていた。
さすがに可哀想に思った朝陽は二人に声をかけ、もう少し後ろで見るよう伝えた。
「あの小さいのは子供ですか?」
リオンが指を指したのは、大きなイルカの隣に並ぶ一回り小さなイルカだった。
「ああ、多分そうだな」
朝陽が頷く。
「イルカの子供も人間の子供みたいに小さいんですね!」
ティーが目を細めて子イルカを見る。
朝陽はゆっくりとイルカから腕時計に視線を移した。
「ん、いい時間だな」
そう呟いてリオンとティーに声をかける。
「もう少しでイルカショーが始まるぞ。見に行かないか?」
「イルカショーですか?」とリオンが首を傾げる。
「ああ。そこにいるイルカが芸をするんだよ」
それを聞いてティーが目を丸くする。
「芸、ですか?イルカが?」
「ああ、見たいだろう?」
朝陽の言葉にティーがさらに目を輝かせ、大きく頷いた。
「はい!見たいです!」
朝陽はいい返事を聞いて満足そうに笑うと
「よし、じゃあ行くぞ」と言い歩き出した。
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