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水族館にて
〈1〉
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「あーあ、完全無駄足だったな……」
朝陽がリオンに乗り込みながらため息をつく。
「残念でしたね」とティーが困ったような顔をして同情した。
朝陽は新たな依頼を受け、今朝依頼主の家へ向かって出発した。しかし、よく聞いてみたところ、その車の精神はいたって健常で、体の方が壊れていたらしい。朝陽は工具での車の直し方は知らないため、依頼者に車屋に直して貰うよう頼むと、向こうに十分もおらずに帰ってきたのだった。
「最近、こういうの多いな……」
朝陽がため息をつく。
(『車屋でも直せなかったら、うちを頼ってください』とでもホームページに書いておくか……)
そう思いながら腕時計をちらりと見た。
まだ一日は始まったばかりだ。このまま家に帰るのはもったいない。
どこかに寄ろうかと思考を巡らせて、一ついいところを思いついた。
「水族館に行くか」
朝陽の言葉を「水族館、ですか」とリオンが反芻する。
「そうだ。どういう場所か知っているか?」
リオンがこくりと頷く。
「昔行ったことがあります。確か魚がたくさんいるところだと」
「私も行ったことがあります!」とティーも嬉しそうに言う。
「そうか。でも、中まで見たことはないだろう?」
二人は同時にこくりと頷く。それを見て朝陽は軽く笑みを作った。
「よし、だったら決まりだ。水族館に行くぞ」
朝陽はリオンに目配せをする。リオンが頷き
「どこの水族館ですか?」と尋ねた。
「名古屋港水族館だ」
「名古屋港水族館ですか?そこなら行ったことありますよ」
朝陽の言葉にティーがぱっと明るい顔をする。
「そうか。まあ、愛知県民なら知らない人はほとんどいないだろうな」
朝陽がそう言っている間にリオンはさっとカーナビを操作し、そこまでの道を選択した。
朝陽は駐車場の空いているところを探す。夏休み前とはいえ、休日だからか駐車場はほとんど車で埋まっていた。
ようやく見つけた場所の隣に停まっていた車を見て、朝陽は顔をしかめた。
「げ。外車か」
そう苦々しげに呟く。
「外車は嫌いですか?」
リオンに問われ朝陽が首を振る。
「いや。ただ、ぶつけてしまった時に国産車以上に面倒くさいってだけだ」
別の場所を探そうかとも思ったが、見た限りでは空いているところはそこしかない。朝陽は仕方なくギアをリバースにいれ、細心の注意を払ってバックした。
駐車場に車を入れ、エンジンをきる。朝陽は振り返り、降りる準備をするティーに声をかけた。
「ティー。隣の車に扉をぶつけないようにな」
ティーが「はい」と返事をし、恐る恐る扉を開く。
その際に、隣の外車が扉をぶつけられないかとひやひやした顔をした。それは朝陽の方も同じなのだが。
なんとか無事に車から降りた朝陽とティーが車の前に立ってリオンを手まねく。
「私はいいですよ」
リオンが助手席で鬱陶しそうに首を振る。ガソリンを無駄に使うのは彼の趣味ではないのだ。ただでさえ今日も無駄足だったというのに。
「まあ、そう言わずに来い。お前、水中の生き物なんて見たことないだろ?」
そう言われてリオンは言葉につまる。
『いるか』や『あしか』など、名前だけは知っているものの、実際の姿は見たことがないものは確かにたくさんある。
「せっかく来たんだ。行かないともったいないぞ。なあ?ティー」
朝陽に話を振られてティーがこくりと頷く。
「……」
リオンはしばし考えてからついて行くことにした。彼のなかの好奇心が勝ったためである。
朝陽がリオンに乗り込みながらため息をつく。
「残念でしたね」とティーが困ったような顔をして同情した。
朝陽は新たな依頼を受け、今朝依頼主の家へ向かって出発した。しかし、よく聞いてみたところ、その車の精神はいたって健常で、体の方が壊れていたらしい。朝陽は工具での車の直し方は知らないため、依頼者に車屋に直して貰うよう頼むと、向こうに十分もおらずに帰ってきたのだった。
「最近、こういうの多いな……」
朝陽がため息をつく。
(『車屋でも直せなかったら、うちを頼ってください』とでもホームページに書いておくか……)
そう思いながら腕時計をちらりと見た。
まだ一日は始まったばかりだ。このまま家に帰るのはもったいない。
どこかに寄ろうかと思考を巡らせて、一ついいところを思いついた。
「水族館に行くか」
朝陽の言葉を「水族館、ですか」とリオンが反芻する。
「そうだ。どういう場所か知っているか?」
リオンがこくりと頷く。
「昔行ったことがあります。確か魚がたくさんいるところだと」
「私も行ったことがあります!」とティーも嬉しそうに言う。
「そうか。でも、中まで見たことはないだろう?」
二人は同時にこくりと頷く。それを見て朝陽は軽く笑みを作った。
「よし、だったら決まりだ。水族館に行くぞ」
朝陽はリオンに目配せをする。リオンが頷き
「どこの水族館ですか?」と尋ねた。
「名古屋港水族館だ」
「名古屋港水族館ですか?そこなら行ったことありますよ」
朝陽の言葉にティーがぱっと明るい顔をする。
「そうか。まあ、愛知県民なら知らない人はほとんどいないだろうな」
朝陽がそう言っている間にリオンはさっとカーナビを操作し、そこまでの道を選択した。
朝陽は駐車場の空いているところを探す。夏休み前とはいえ、休日だからか駐車場はほとんど車で埋まっていた。
ようやく見つけた場所の隣に停まっていた車を見て、朝陽は顔をしかめた。
「げ。外車か」
そう苦々しげに呟く。
「外車は嫌いですか?」
リオンに問われ朝陽が首を振る。
「いや。ただ、ぶつけてしまった時に国産車以上に面倒くさいってだけだ」
別の場所を探そうかとも思ったが、見た限りでは空いているところはそこしかない。朝陽は仕方なくギアをリバースにいれ、細心の注意を払ってバックした。
駐車場に車を入れ、エンジンをきる。朝陽は振り返り、降りる準備をするティーに声をかけた。
「ティー。隣の車に扉をぶつけないようにな」
ティーが「はい」と返事をし、恐る恐る扉を開く。
その際に、隣の外車が扉をぶつけられないかとひやひやした顔をした。それは朝陽の方も同じなのだが。
なんとか無事に車から降りた朝陽とティーが車の前に立ってリオンを手まねく。
「私はいいですよ」
リオンが助手席で鬱陶しそうに首を振る。ガソリンを無駄に使うのは彼の趣味ではないのだ。ただでさえ今日も無駄足だったというのに。
「まあ、そう言わずに来い。お前、水中の生き物なんて見たことないだろ?」
そう言われてリオンは言葉につまる。
『いるか』や『あしか』など、名前だけは知っているものの、実際の姿は見たことがないものは確かにたくさんある。
「せっかく来たんだ。行かないともったいないぞ。なあ?ティー」
朝陽に話を振られてティーがこくりと頷く。
「……」
リオンはしばし考えてからついて行くことにした。彼のなかの好奇心が勝ったためである。
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