45 / 138
遊園地にて
〈7〉
しおりを挟む
空が茜色に染まる頃に朝陽と磯部は車に戻ってきた。銀色の車は朝陽達より一足先に出ていったが、最後の最後まで朝陽に男のことを伝えるようリオンに念押ししていった。
「あの男は何かよからぬことを考えています。嫌な予感がする。あなたの運転手さんに話した方が良いでしょう」
リオンは頷いてお礼を述べた。銀色の車はさも心配そうにリオンを見ながら駐車場を出て行った。
朝陽と磯部は一日中遊んで疲れたようで、帰りの車内では二人とも終始無言だった。時折寝息が聞こえたかと思うと、磯部が体を背もたれにあずけて眠り込んでいるのが見えた。朝陽はカップホルダーからコーヒー缶を取り上げ、時々口に含んでいた。
辺りが薄暗くなってから磯部の家についた。家の前に降ろして軽く二言三言交わしたあと、朝陽は車を発車させた。
少し経ってからリオンを呼び出す。リオンが助手席に音もなく現われた。
「日がな一日、何をやっていたんだ?後ろの車とずっとお喋りか?」
朝陽の言葉にリオンは窓の外を眺めて「ええ」と頷く。
「へえ、大分盛り上がったみたいだな。本当にお前にしては珍しい」
『止まれ』と書かれた標識を見つけて朝陽がブレーキペダルを踏んだ。一時停止して他の車がいないか確認してから、ブレーキペダルから足を離しアクセルペダルに乗せ換える。その動作をリオンは目で追った。
「あれは一時停止の標識なのですね」
その場所を通り過ぎてからリオンが発した言葉に朝陽は頷いた。
「ああ。あの標識があったら、全ての車は停止線か標識手前で一時停止しなければならない。……まあ、お前は標識の意味なんていちいち覚えなくていいんだけどな」
朝陽がそう言って笑った。
「……そうですね」
朝陽の言葉に相づちを打ちながら、リオンはポケットにしまい込んだ小さな紙切れにそっと触れた。
「あの男は何かよからぬことを考えています。嫌な予感がする。あなたの運転手さんに話した方が良いでしょう」
リオンは頷いてお礼を述べた。銀色の車はさも心配そうにリオンを見ながら駐車場を出て行った。
朝陽と磯部は一日中遊んで疲れたようで、帰りの車内では二人とも終始無言だった。時折寝息が聞こえたかと思うと、磯部が体を背もたれにあずけて眠り込んでいるのが見えた。朝陽はカップホルダーからコーヒー缶を取り上げ、時々口に含んでいた。
辺りが薄暗くなってから磯部の家についた。家の前に降ろして軽く二言三言交わしたあと、朝陽は車を発車させた。
少し経ってからリオンを呼び出す。リオンが助手席に音もなく現われた。
「日がな一日、何をやっていたんだ?後ろの車とずっとお喋りか?」
朝陽の言葉にリオンは窓の外を眺めて「ええ」と頷く。
「へえ、大分盛り上がったみたいだな。本当にお前にしては珍しい」
『止まれ』と書かれた標識を見つけて朝陽がブレーキペダルを踏んだ。一時停止して他の車がいないか確認してから、ブレーキペダルから足を離しアクセルペダルに乗せ換える。その動作をリオンは目で追った。
「あれは一時停止の標識なのですね」
その場所を通り過ぎてからリオンが発した言葉に朝陽は頷いた。
「ああ。あの標識があったら、全ての車は停止線か標識手前で一時停止しなければならない。……まあ、お前は標識の意味なんていちいち覚えなくていいんだけどな」
朝陽がそう言って笑った。
「……そうですね」
朝陽の言葉に相づちを打ちながら、リオンはポケットにしまい込んだ小さな紙切れにそっと触れた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる