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36「不可思議な方向に奥深い味」
しおりを挟む「プックル、おはようございます」
『ヴァン、オハヨ』
プックルが夕方より少し前に起きました。
僕もゆっくり眠れましたので、魔力はほぼ全快です。
「相談なんですが、プックルの魔法を詳しく教えて貰っても良いですか?」
『良イ』
「プックルの魔法は、この前見せてくれた音の波に魔力を乗せる魔法ですよね。眠らせる意外に何か出来ますか?」
んー、と首を捻って考えるプックル。
『雄々シク歌ウ、聴クト、強クナル』
「そんなんできるっすか!」
『デモ、強クナッタ後、イツモヨリ弱クナル』
「ダメっすやん」
「他にはどうですか?」
んーー、と唸って考えるプックル。
『悲シク歌ウ、聴クト、死ニタクナル』
「怖すぎー!」
「惜しい感じです。他には?」
んーーー、と眉を下げて考えるプックル。
『愛ヲ込メテ歌ウ、聴クト、プックルヲ好キニナル』
「聴きたいっす!」
「もうちょっと! 他には?」
んむーーー、と体ごと捻って考えるプックル。
『切ナク歌ウ、聴クト、帰リタクナル』
「なんすかそれ?」
「それです!」
「え? それなんすか?」
『それなんでござるか?』
「それでいけるのか?」
みんな首を捻っていますね。
「とりあえず家に追い返すって事っすか?」
「その通りなんですが、それだけだとまたすぐ別のマヘンプクがやって来るでしょう」
「そうであろうな。倒しても倒しても湧くようにやってくるのだから」
「ですので、今夜はこちらから攻め込みましょう」
試しにプックルに、帰リタクナル魔法を使ってみて貰います。
今後の為にも全員で聴きました。
『西の森はあちらでござるな。では、失礼するでござる』
「……地球……、日本……、菓子パン……」
弱い魔力でとお願いしたからか、ロップス殿は平気でしたが、ロボは丁寧に辞去しようとし、タロウは本能的に帰れないのが分かっているからか、蹲って途方に暮れていました。
いけそうですね。
どうでも良いですけど、ニホンに戻ってやりたい事はカシパンを食べる事だけなんでしょうか。
日暮れまでまだもう少しあります。
二人に、魔力を使っての帰リタクナル魔法を防ぐ方法、を練習させましょう。
「ロボ、まずは自分の中の精霊力を感じられるようにしましょう。やり方は――」
「違う! 魔力循環が得意なのは良く分かったから、循環でなく身に纏う様にだな――」
タロウはロップス殿の魔力を使っています。今までできなかった魔力感知が、この短時間でできるとは思えませんから。
なんとか二人とも魔力または精霊力による防御をマスターしました。
本番では、プックルに本気の帰リタクナル魔法を使って貰うので、本当はテストをしたいんですが、もしここで三人が帰りたくなってしまうと終わりです。お手上げですね。
なので本番一発勝負です。
もし賭けに負けたら、はい、そこまでです。
三人とも使い物になりませんので、今夜は僕とプックルだけで凌がなくてはなりません。
是が非でも三人には帰リタクナル魔法を凌いで頂きたいですね。
一通りやるべき事はやりました。
後はしっかり食事して備えましょう。
「マヘンプクを煮たスープです。口に合うと良いですが、きっと合わないと思います。それでも無理して食べて下さいね」
絶対に口に合わないと思っていたんですが、なんとタロウとロップス殿はいけるそうです。
「この臭みというか、苦味というか、不可思議な方向に奥深い味が癖になるな」
「ロップスさんもそうっすか? 一口目はめちゃくちゃ不味いと思ったんすけど、なんか止められないというか、いつまでももう一口、を繰り返してしまうっす」
失敗しましたね。
この二人にはこの八日間マヘンプクだけ出しておけば携行食ももっと残ってましたのに。
ちなみに、僕とロボとプックルには受け入れられない味でした。
魔力の回復の為に少々は食べましたが、はっきり言って激マズです。
さあ、皆さん。
そろそろ日の入りですよ。
打ち合わせ通りにお願いします!
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