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しおりを挟む「どこで間違えたんだ…」
狭い石壁で作られた地下牢で自分の声が反響する
私のリオノーラの手を握りニヤニヤと笑うあの男が許せなくて腰に下げていた短剣を握ったところまでは記憶がある
そのあとはよく覚えていない
気づいたら地下牢で拘束されていた
(「あともう少しだったのに。あと一年経てばリオノーラと結婚できたのに」)
ずっと夢見てきたリオノーラとの結婚生活
大事な大事な初夜を失敗したくなくて公妾のエイミーに相談して紹介されたのがルーシーだった
ルーシーはあくまでリオノーラとの美しい初夜を迎えるための練習台だった
「リオノーラ、リオノーラ、リオノーラ」
反響する声に帰ってくる声はなかった
~~~アーロン視点 終~~~
グリアーソン王国に住むすべての貴族が集まる会堂は100人以上がいるにも関わらず静寂で異様な雰囲気を出していた
誰もが喋ることもなくただ、決められた椅子に座り下を向いている
みな自分たちに咎が及ばないか不安だった
『反逆罪』
現在グリアーソンの王族は1人残らず拘束されている
議会が行われていた会議室に突如押し入ってきたエヴァーツ帝国の騎士たちに誰も抵抗することができなかった
何十人と流れ込んでくる騎士達の間に静かに佇んでいたセザール・エヴァーツは玉座に近づき王に向かって剣を突きつけた
「グリアーソン王太子が私に向かって剣を振り上げた。帝国への反逆と見なし、王族全てを拘束する。」
セザールがそう言い放つと、普段は威厳溢れる国王の顔がどんどん青くなった
その横で宰相の、リオノーラの父親である公爵は何も言わずに佇んでいた
貴族達が呆けている間に全ての準備が帝国の者達によって進められた
「諸君。貴殿達に反逆の意思がないことは重々承知している」
静まり返った街道に響き渡るセザールの声を聞いて貴族達は勢いよく顔を上げる
何人かはセザールの言葉を聞きながら肯定を表すかのように大きく首を縦に振っている
「罪人、アーロン・グリアーソンは恐れ多くもエヴァーツ帝国皇太子であられるセザール殿下に剣を向けました」
セザールの横に立つヨーゼフが淡々と事実だけを述べる
つい数時間前に行われたアーロンの愚行を聞いた貴族達の顔は顔面蒼白だった
「アーロン・グリアーソンは斬首刑に処す。」
ヨーゼフのその言葉に会場がザワザワと騒ぎ出す
容赦のないその結果を聞き、みな納得しながらも驚きを隠せない様子だ
「グリアーソン国王に関しては…帝国属国統治法に置いて、敵国との干渉は禁止されているのにも関わらず、敵国への武器輸出の証拠が発見されましたので、こちらも斬首刑に処す」
ヨーゼフが読み上げた内容に会場はさらにざわつきが大きくなる
国王の不正を知らなかった貴族達と、不正のことを知りながらも甘い汁を吸っていた貴族達とでは反応の違いが大きく違った
ヨーゼフは話しながらもその貴族達を確認して後方に控えていた騎士達に指示を出す
すぐに動いた騎士達は何人かの貴族を拘束した
その中にはルーシーの父親であるランテーリ侯爵の姿もあった
「さて、これによりグリアーソン王国の王族は不在となった。帝国属国法において王族の不在となった国は社会主義国家となってもらう。貴族から議員を選出し、国政はそのもの達が主に舵取りを行う。…その首相にフェルディーン公爵、そなたが務めるように」
「……御意に」
セザールの言葉に公爵はしばし考えた後に返事をした
公爵の返事に満足したセザールは座っていた玉座から立ち上がった
「今回の件は王族のみが起こした問題として処理する。貴殿達には引き続き民衆が困らぬように国政を行ってもらう。
そして……リオノーラ・フェルディーンは皇太子妃として帝国へ連れて行く」
良いだろう、公爵?とニヤリと笑ったセザールを公爵は殺意がこもった瞳で見つめ返した
属国の王族ではなく首相レベルの自分が否定できないかことをいいことにセザールは外堀を埋めてきたのだ
「……娘が、同意すればのことです」
「わかっている。流石の私もリオノーラの意思は尊重する」
これから末長くよろしく頼んだぞ、お義父様。とクスクス笑いながら言い放ったセザールに公爵の額には青筋が立っていた
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