7 / 9
7
しおりを挟む「おまえが、おまえがリオノーラに何か吹き込んだんだろう!!!かえせ!!私のリオノーラをかえせ!!」
床に膝をつき項垂れていたアーロンが突然大声を上げた
その声に驚愕したリオノーラはサッとアーロンに向き直った
「おかしいと思ったんだ、今までおとなしかったのに急にそんな格好をし出して、俺のいうこともきかなくなった」
ぶつぶつと言い出したアーロンの姿にリオノーラはたじろぐ
セザールはそんなリオノーラを背中で庇いながらアーロンと対峙した
「私のせいではない。全ては貴様の自業自得だ」
はっきりとそう言ったセザールの言葉を聞いてぴたりとアーロンの呪詛のような言葉が止まった
その光景をみてリオノーラがホッと息をついた瞬間
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ」
腰に下げていた短剣を振りかぶったアーロンの姿が眼前へと迫っていた
~~アーロン視点~~~
「はじめまして。リオノーラ・フェルディーンともうします」
よろしくおねがいします。と年齢に似合わず大人びたその姿で挨拶をしてきたのがリオノーラとの出会いだった
アーロン・グリアーソン
それが私の名前
グリアーソン王国の王太子に選ばれるにあたって万全な後ろ盾を、ということで選ばれたのがフェルディーン公爵家の長女でだったリオノーラだった
淡いクリーム色の長い髪に、クリッとしたヘーゼルナッツの瞳、ぷっくりとした唇はチェリーのように瑞々しかった
(「可愛い」)
一目惚れだった
私に惜しみない愛情を注いでくれた王妃であった母親からリオノーラが私の婚約者、そして行く行くは妻となるということを教えてもらった
(「嬉しい嬉しい嬉しい!」)
リオノーラとの婚約が結ばれたのがお互いが10歳の時だった
リオノーラはその時からすでに立派な貴族令嬢としての心構えが出来ていた
マナーも問題がなく、王妃教育も優秀だった
「リオノーラ!お菓子を食べよう!」
「殿下。授業はどうされたのですか?」
「つまんないから抜け出してきた。それより、母上のところに行ってお菓子食べよう」
さあ!と細くて折れそうなリオノーラの腕を掴んで母上の部屋に何度も通っていた
その度にリオノーラは何も言わずにただ黙って私の後ろをついてきてくれていた
そんな自分にとっては幸せな日々が続き、気づけば13歳になっていた
私の友達候補として上がってきた5歳年上の1人の侯爵令息の言葉で私がリオノーラに対する態度が変わってしまった
「あぁいう女を躾けるには最初が大事だって父上が言ってましたよ。女は黙って男の言うことを聞いていればそれで幸せだそうですよ」
その言葉を聞いてハッとした
リオノーラは頭が良い。顔も良いし、誰もが完璧な淑女だと評価していた。
サロンに行っても注目を浴びるのはいつだってリオノーラ
王太子という立場からみんな、挨拶はしてくれるがその後はずっとリオノーラばかりに話しかけていた
それを面白くないと思っている自分がいた
リオノーラと大人が話す内容は難しくて自分には理解ができなかったから仲間外れにされているような感覚だったのだ
(「そうか、私がしっかりとリオノーラを躾けていないからそう感じていたのか!」)
そこからの行動は早かった
まず母上のもとへ行き、
「リオノーラは私のいうことは聞いてくれますよね?」
と投げかけた
母上はにっこりと笑って
「えぇ。もちろんよ。彼女は貴方の妻になるんだもの。しっかりと愛を育むのよ」
「愛を…」
私はリオノーラのことが好きだった
言葉には出していなかったが私を見るリオノーラの目は優しかったし、何より王妃教育で長い時間を共にしている母上が愛を育みなさい。ということはリオノーラはちゃんと私を愛してくれている。という事だと認識した
「はい!頑張ります!」
私の返事を聞いて母上はにっこりと笑った
それが母上との最後の別れだった
(「どうして…」)
母上の訃報を聞いたのはあの会話から1週間もしない日だった
私に対して愛を育みなさい。と告げて母上は父上以外との男と愛を育んでいたそうだ
それを知った父上が激怒してその場で母上を切り捨てたらしい
葬儀は静かに行われた
突然の王妃の死に国中が悲しんだ
表向きは病死となっている
「自分のものはしっかりと管理せねばならない」
母上の埋葬が終わり王宮に帰ってきた私を呼びつけた父上がそう言い放った
「お前もしっかりとリオノーラを管理しておけ」
「あれはあの女の教育を受けている。いつどこで勝手に股を開くような女になってるかもしれんからな」
矢継ぎ早にそう話す父上の言葉を聞いて頭の中がぐるぐると回る
「管理、することがリオノーラのためなんですか?」
「女というものは男に順従してこそだ。……エイミー。こちらにこい」
「はあい、へいか」
父上の一番のお気に入りの公妾が胸元が大きく開いたドレスを着て父上の膝の上に乗る
「エイミー。貴様は私に管理されて嬉しいだろう?」
「勿論でございます。アーロン殿下、リオノーラ嬢もきっと殿下に管理されたがっていると思いますわ」
「管理されたがってる…?」
父上の胸元にそっと手を置いた公妾の真っ赤に彩られた唇をニヤッと開いて流し目を向ける
「同じ女だからわかりますわ。リオノーラ嬢は少し強引なぐらいにされるのがきっとお好きな方ですわ」
ですから、リオノーラ嬢の全てを殿下がお決めになられたら良いのです。と妖艶に笑う彼女の言葉にどくどくと心臓が高鳴った
(「そうだ、同じ女性がいってるんだから、間違いない。それにリオノーラはどんどん綺麗になっていく…変な虫がつかないように私が管理しなければ!」)
父上と彼女に礼を告げてこれからどうするべきか頭の中で整理する
そして出来上がったのが今の私だった
0
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【完結】わたしの隣には最愛の人がいる ~公衆の面前での婚約破棄は茶番か悲劇ですよ~
岡崎 剛柔
恋愛
男爵令嬢であるマイア・シュミナールこと私は、招待された王家主催の晩餐会で何度目かの〝公衆の面前での婚約破棄〟を目撃してしまう。
公衆の面前での婚約破棄をしたのは、女好きと噂される伯爵家の長男であるリチャードさま。
一方、婚約を高らかに破棄されたのは子爵家の令嬢であるリリシアさんだった。
私は恥以外の何物でもない公衆の面前での婚約破棄を、私の隣にいた幼馴染であり恋人であったリヒトと一緒に傍観していた。
私とリヒトもすでに婚約を済ませている間柄なのだ。
そして私たちは、最初こそ2人で婚約破棄に対する様々な意見を言い合った。
婚約破棄は当人同士以上に家や教会が絡んでくるから、軽々しく口にするようなことではないなどと。
ましてや、公衆の面前で婚約を破棄する宣言をするなど茶番か悲劇だとも。
しかし、やがてリヒトの口からこんな言葉が紡がれた。
「なあ、マイア。ここで俺が君との婚約を破棄すると言ったらどうする?」
そんな彼に私が伝えた返事とは……。
婚約破棄をされたら王子様が襲来して来ました
宵闇 月
恋愛
王家主催の夜会で馬鹿な婚約者が婚約破棄を言い渡してきたので受け入れたら何故か王子様がやって来ました。
※ 思い立って書いただけなので設定はゆるゆるです。
【完結】不倫夫は地獄に落とします!~私が妊娠中に浮気をするような貴方を許すことはできません!ゴミクズのように捨てますので悪しからず~
仰木 あん
恋愛
伯爵令嬢のアンリエッタは、ハルト=ヴィルムス侯爵と結婚し、幸せな時を過ごしていた。
アンリエッタはハルトの子を妊娠し、幸せの絶頂にいると思っていた。
そんなある日のこと、ハルトが、浮気をしている事を知る。
アンリエッタは、妊娠の最中に浮気をしたハルトを地獄に落とすために動き出す。
そんなお話。
設定はユル~イ感じです。
異世界のお話で、フィクションであり、名称等は実際のものと何も関係ありません。
素人の作品ですので、温かい目で見守って下さい。
お気に入りしていただけると、大変、励みになります。
感想も頂けると嬉しいです。
宜しくお願いいたします。
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。
有川カナデ
恋愛
憧れのお義姉様と本当の家族になるまであと少し。だというのに当の兄がお義姉様の卒業パーティでまさかの断罪イベント!?その隣にいる下品な女性は誰です!?えぇわかりました、わたくしがぶっ飛ばしてさしあげます!……と思ったら、そうでした。お兄様はお義姉様にべた惚れなのでした。
微ざまぁあり、諸々ご都合主義。短文なのでさくっと読めます。
カクヨム、なろうにも投稿しております。
側妃が欲しいのですか? 言い訳は聞きたくありません
みみぢあん
恋愛
王太子妃ベアトリスは、隣国から嫁いで5年になるが、王子を身籠ることができず悩んでいた。
そんな時に、夫のマクシミリアンが国王に即位するのと同時に、側妃を娶るという噂を聞き動揺する。
【婚約者を妹に譲ったら~】のスピンオフで、1年後のお話になります。
😓ざまぁ系のお話ではありません、ご注意を!
※R15タグは、もしもの時の備えでつけてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる