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しおりを挟むドレスの採寸をしてから3週間後に仕上げ段階に入ったというドレスを抱えてグローヴ女男爵が大公家を訪れてきた
「本番までのお楽しみですので、妃殿下は目を瞑っていてくださいね」
グローヴ女男爵にそう言われて私はずっと目を閉じていた
ーーー
「本日は朝からエステ、マッサージとお忙しいスケジュールですので、少しでも体調に変化があればお伝えください」
「ええ、わかったわ」
夜会当日の朝
いつもより少し早めに起こされて今日1日のスケジュールを伝えてくる侍女長の目はメラメラと燃え上がっていた
「奥様は磨かれる前の原石です。今から私達で綺麗に磨いて参ります!」
「よ、よろしく…」
侍女長の後ろに控えるメイド達も闘争心あふれる眼差しをしていた
朝食を終えて始まったのはまず入浴
足の先まで隅々と洗われたかと思えば、花の香油をこれでもかと肌に塗り込まれた
「奥様は無駄なお肉がありませんからマッサージは省きましょう。髪とお肌の輝きが増すように香油を足していきます」
矢継ぎ早にメイド達が説明をしてくれるが、普段とは違う行動をしている私はぐるぐると目まぐるしく変わる内容についていくのがやっとだった
途中からは何も考えずに流れに身を任せていたのは自分だけの秘密だ
「さあ、ドレスを着ましょう!」
「や、やっとドレスなのね…」
起きてからもみくちゃにされて気づけば空は夕日が傾く時間になっていた
メイド達のおかげで肌は艶々、ブロンズピンクに戻ってきた髪も心なしか輝いているように見える
ドレスが置かれている部屋に向かう
中に入るとグローヴ女男爵の右腕だという1人の女性が立っていた
「グローヴ女男爵は王妃様のお支度に向かわれた為、私が参りました」
「ええ。そのことはシオン様を通して聞いております。わざわざありがとう」
頭を下げる女性に頭を上げるように伝える
「これが妃殿下のドレスでございます」
布で隠されたドレスを見せるために女性がバサリと布を捲り上げた
「素敵…!!」
デコルテからドレスの裾に広がる総レースのマーメイドラインのドレス
上から下に徐々に深い紫に変わっていくグラデーションを表現するにはかなりな労力が必要だっただろう
メイド達の力を借りてドレスを着る
オーダーメイドなだけあって体にピッタリと寄り添うドレスの着心地は中々のものだった
ドレスの大半は繊細なレースで作られているため、見た目に反してドレスは軽く、これならなんとか夜会も乗り切れるだろうとアイリスは確信した
それに最近は長距離を歩いても息切れはしなくなった上に、なんだったら小走りまで出来るほどだ
「奥様。こちらのピアスに変えます…あれ?いつものピアスはどうされましたか?」
「お姉様からもらったピアスとネックレスならここ最近外していたわ。シオン様から貰ったものを優先的につけていたから」
「左様ですか。あれほど頑なに外されなかったのに…愛の力ですわね」
「愛?!そ、そんなんじゃないわっ だ、だってシオン様は私の旦那様だし…旦那様から貰ったものを身につけるのが普通なんでしょう?」
メイド達の言葉に顔が火照る
愛とか恋とかまだよくわからない
でも、シオン様のそばにいるのは心地が良い
私の手を包み込んでくれる大きな手も、優しく微笑んでくれるアメジスト色の柔らかい瞳が自分に向けられていると思うと、どうしてか恥ずかしくなってきてしまう
「グローヴ女男爵様から聞いたのですね。グローヴ女男爵様は流行の最先端ですから言われたことをしていればファッションでの間違いはありません」
「そうね。グローヴ女男爵様が『旦那様から頂いたものこそ身につけるべきです』って言ってたから、お姉様には申し訳ないけど外させてもらってるの」
左様ですか、と言うメイド達は手を止めずにどんどんドレスとアクセサリーを私につけていく
「さあ、できあがりました。旦那様を呼んできましょう」
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