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しおりを挟む(「同情も芽生えないか」)
押さえつけられた彼女に昔馴染みの同情が芽生えるかと危惧していたがそんな心配は杞憂に終わった
今のマリーの姿を見てもなにも湧き上がってくる感情はなかった
むしろ、人を物扱いするその態度に怒りが芽生えた
「返して?ジュストは貴様が捨てたんだろう?なら、
私がもらっても構わないのだろう? 」
「ッッッ!陛下…!」
「顔が赤いなジュストよ。そういう意味で貴様をもらうわけじゃないから安心しろ」
何を勘違いしたのか頬を赤らめるジュストにくすくすと笑う
悔しそうに歯軋りしているマリーに再び視線を戻して、王として最後の言葉を述べた
「罪人マリーを地下牢へ。罪人を出したマルブレ公爵及び、コルトー侯爵両家は1カ月間謹慎の後に追って沙汰を伝える。……夜会はここまでだ。みな気をつけて帰るように」
有無を言わさないその言葉で夜会の幕は閉じた
「ジュスト・コシェ。願いを一つ聞いてやろう」
「願い、ですか」
あの夜会から1週間後
私の執務室に呼ばれ、来訪したジュストは私の言葉に首を傾げた
「マリーの処刑は問題なく終わった。」
罪人となったマリーとカミーユは本来であれば法律に則り毒杯を仰ぐことになっていた
しかし、そこに待ったをかけたのが、私の即位式に出席し、あの会場にいた帝国の第三皇女だった
「人は見かけによらないな。マリーとカミーユ両方を飼いたいと言っていたぞ」
「…帝国では有名な話です。第三皇女は美しいものを集めるのが好きだと」
清廉で、儚い物静かな皇女の本性に私は見て見ぬ振りをした
きっと兄も大事に飼ってくれているのだろう
目の前に立つジュストへと視線を向ける
夜会ではかきあげられていた前髪が今は少し下されていた
「仮にも純王族である公女が迷惑をかけたわけだ。王家として家臣に禍根を残すのは良くない。対したことはしてやれぬが何か一つ願いを聞いてやろう」
その言葉に納得したのかジュストは口元に手を当て真剣に考えていた
「では、陛下のおそばにいることを許可してください」
「ん?私のそばか?話し相手は務めてもらうぞ?」
「陛下、違います。……陛下のパートナーとしておそばに居させてください」
「パートナー…?……王配を望むか」
王配。つまり私の夫になるものの存在
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「(…結局は権力か」)
女王として君臨し、兄の不祥事も見てきた私にとって恋愛というものは御伽噺の話だ
いつかは白馬の王子様が迎えに来てくれるかもしれないと夢見た時期もあったが19歳となった今、そんな寝言は言えない
「王配はそう簡単に決められるものではない」
眉間に皺を寄せ睨みつけるようにジュストへと話しかける
「陛下誤解です。私は、私自身が陛下へアプローチすることの許可を願いたいのです」
「は?アプローチ?」
「はい。恐悦ながら、私は陛下をエルヴィーラ様をお慕いしております」
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