私がもらっても構わないのだろう?

Ruhuna

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しぃんと静まり返ったホールに私だけの声が響く
その静寂をそのままにさらに私は声をつなげる

「罪人マリー・マルブレよ。コシェ伯爵令息への慰謝料を支払い後、極刑に処す」

異論は認めぬぞ。と話す私の声に常識のある貴族たちは静かに見守る

「きょ、極刑?!!まって、なんで私が罪人なの?!」

「…マルブレ公爵よ。政権での権力争いに必死なるあまり娘の教育を疎かにするなど人としてどうかと思うぞ」

「申し訳、ありません…」.

「お父様?!どうして黙っているのですか!!私が、この私が罪人などおかしいではありませんか!」

拘束されながら暴れ回るせいか髪が乱れたマリーは必死に公爵へと言葉を投げる
悔しそうに、下を向きながら公爵はマリーから目を逸らしていた

「陛下!ヴィラ?!ねえ、どうしてなのよ!」

「…そもそも、破棄だろうが解消だろうが不貞の証拠がある以上は貴様が慰謝料を払うことは確定しているだろう」

はぁ、と大きなため息をつく
苦手ではあったが幼少期を一緒に過ごして来た幼馴染のあまりにも救いようのない無知加減に頭を痛めた

「陛下、元婚約者としてのよしみです。ここからは私が罪人マリーへ説明します」

こめかみを抑えていた私の横にそっとやって来たジュストを見上げる
私よりも頭1.5個分を高い彼に一瞬驚く

「え、あぁ。それじゃあ頼もうか」

「かしこまりました」

ジュストは押さえつけられているマリーと顔面蒼白のカミーユに近づいた


「なによ」

「まず一つ目。貴方が私に着せた不貞の内容は貴方自身が行なっていたと言う証拠があります。…カミーユ侯爵令息とあちこちでかけては破廉恥なことをしていたようですね。」

そう言いながら懐から一枚の写真を取り出した

「これは…!!」

「よく撮れているでしょう?さすが帝国のカメラは綺麗に撮れている」

静かに、しかし絶対に相手を仕留めてやると言う気持ちを孕んだジュストの言葉に私は感心した


(「確かコシェ伯爵家の商会は帝国とも取引があったな」)

我が国よりも発展を遂げている隣国の帝国の技術は一線を超えている
そのうちの中の一つにカメラと呼ばれるものがあることは把握していた

それを上手く使いこなしているジュストの腕はなかなかに大した物だ


「これで貴方が私に慰謝料を払わないといけない理由が分かりましたか?不貞をしていたのは貴方です。もちろん、コクトー侯爵令息。貴方からもです」


「なぜ私が!!」

今までマリーの横で黙り込んでいたカミーユは矛先が自分を向いた瞬間に目を開きジュストへと声を荒げ唾を飛ばした


「……コクトー侯爵令息はマリーと婚約を約束する仲だったのだろう?破棄の原因にもなったと言うことだな。よし、極刑」

「陛下?!」

ネレアが持って来た椅子に座りながらことの成り行きをみていた私だったが、カミーユに対する処罰を忘れていたと思い先程の言葉を投げかけた
視界の端でコクトー侯爵夫人が倒れたが問題はないだろう


「話を続けろ」

「はい」

私に一礼してジュストは2人に再度向き直る

「2つ目です。あなた方が罪人となったのは私にをしたからです」

「あ、あなただってしたじゃない!」

「私のはあくまでです。」

「……??それの何が違うのよ?」

マリーの言葉にその場にいた貴族たちが息を呑む
罪人とはいえ、公女ともあろう人物が1年前のあの事件を覚えていないとは思わなかっただろう


「罪人マリーよ。シュクルト兄上がどうなったか忘れたのか?」

「クルト兄様…?クルト兄様は帝国に行ったじゃない」

幼少期から私と過ごして来たマリーは私の実兄を兄様と呼んでいた
兄に懐いていた彼女は彼が帝国に行った理由を忘れてしまったのだろうか

「マルブレ公爵。親としての最後の仕事だ。1年前のあの事件を教えてやるが良い」

「……かしこまりました」



爪が食い込むほど手を握りしめている公爵は罪人となった娘に視線を向けた
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