父が再婚しました

Ruhuna

文字の大きさ
上 下
5 / 13

5.

しおりを挟む



「(あと1限で今日は終わりね)」



メルージュは教室内の時計に目を向けた
本日最後の授業は男女に別れて行われる


男子は剣術、女子はテーブルマナー


テーブルマナー、ときけばお茶を飲むだけの簡単な授業だと思うが実際はそうではない

学園に在籍する令嬢の中から1人が主催者として選ばれる
その時主催者に選ばれた者は授業が行われる1ヶ月前からテーマを決め、お茶会の内容から飾り付けまでを担当し、当日は同じグループのクラスメイトをおもてなしするという意外と大変な授業である



この授業で将来、嫁いだ先での夫人として行うと仕事の基礎を学ぶ
貴族の夫人たちは如何に評判の良いお茶会を開けるのかがステータスになってくるからだ


それらの基礎を学ぶこの授業は令嬢達にとっては他の授業よりも力を入れるべき授業であった
クラスメイトだけならまだしもこの授業は学年問わず学園に在籍している令嬢全てが出席する大掛かりなお茶会となるからだ



 


そして今回の主催者は今や学園の問題児であるエマだった



メルージュは正直今回の授業を欠席しようか悩んでいた
しかし姉妹がいる場合には助け合うこと!と教師陣から言われていたメルージュは1ヶ月前に主催者がエマと決まったその瞬間から頭を抱えていた



「お姉さまは手出ししたいでね!私1人でできるから!」
「え、紫色を使っちゃダメなの?どうして?」
「もう!口出ししないで!!」


エマはそうやってメルージュからの助言を全て無視していた
だからどういった内容なのかもわからないし、会場がどれだけになっているかもわからなかった



「メルージュ様。ご一緒に会場まで参りませんか?」
「マリア様。私、行きたくないですわ」
「メルージュ様…大丈夫ですわ。みなさんお茶会は仕方のないことだと存じておりますもの」


メルージュを気遣うのはマリアだ
マリアは伯爵令嬢でありメルージュとは特に仲の良い友達である
そんなマリアも今回のお茶会は仕方のないことだと割り切って出席するのだろう
友であるマリアが出席するのだ、一応姉である自分が逃げ出してはどうする!と気を引き締めてエマが主催するお茶会の会場に向かった






ーーーー






「め、メルージュ様…流石にこれは…」
「言わないでマリア様。私ちゃんと辞めるように伝えましたのよ?」


会場についたメルージュとマリアは自分たちの目を疑った
そこには会場中に散りばめられた紫の薔薇と紫のテーブルクロス
全てが紫色で統一されていた


メルージュは自分の顔が笑っていないのを自覚した


「(あれだけ紫だけは辞めなさいと伝えたのに…!!!)」



本来、紫の色味は王族しか使えない色味だ
王族が降嫁した際や臣籍降下した際には特例としてで紫を使った衣装を着ることは許されている


おそらく最近婚約者になった10歳の第一王子がよく紫を基調とした服を着ていたり、母であるイライザがから身につけているその色を特別だと彼女は思わなかったのだろう


メルージュの教えることなどエマの頭に入らないのは当たり前のことをメルージュは失念していた




お茶会に招待された者は必ず主催者に挨拶をしなければならないのだがメルージュはあえて挨拶に行かなかった
招待者が主催者に挨拶に行かないというのは「このお茶会はつまらない」と態度で示している合図である


もっともエマがその意味を理解しているかは不明だが、自分の話を一切聞こうとしなかったエマに対するメルージュなりの仕返しだった




椅子に座ったメルージュの横にはオロオロとしたマリアがいたが、しっかりと椅子に座っていることから彼女もきっとエマに敬意を表すつもりはないのだろう


メルージュは椅子に座り周りに目を向けた
入り口からにまっすぐ歩いてくる1人の女学生の姿がみえた



「お隣よろしくて?」
「これは…!!!第一王女様に拝謁いたします。」
「まあ、そんなにかしこまらないで?ここは学園よ」
「ありがとうございます」


メルージュの向かいに座ったのは国王の長子、第一王女であるリリーだった
リリーはメルージュより一学年上の3年生であった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...