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メルージュは教室内の時計に目を向けた
本日最後の授業は男女に別れて行われる
男子は剣術、女子はテーブルマナー
テーブルマナー、ときけばお茶を飲むだけの簡単な授業だと思うが実際はそうではない
学園に在籍する令嬢の中から1人が主催者として選ばれる
その時主催者に選ばれた者は授業が行われる1ヶ月前からテーマを決め、お茶会の内容から飾り付けまでを担当し、当日は同じグループのクラスメイトをおもてなしするという意外と大変な授業である
この授業で将来、嫁いだ先での夫人として行うと仕事の基礎を学ぶ
貴族の夫人たちは如何に評判の良いお茶会を開けるのかがステータスになってくるからだ
それらの基礎を学ぶこの授業は令嬢達にとっては他の授業よりも力を入れるべき授業であった
クラスメイトだけならまだしもこの授業は学年問わず学園に在籍している令嬢全てが出席する大掛かりなお茶会となるからだ
そして今回の主催者は今や学園の問題児であるエマだった
メルージュは正直今回の授業を欠席しようか悩んでいた
しかし姉妹がいる場合には助け合うこと!と教師陣から言われていたメルージュは1ヶ月前に主催者がエマと決まったその瞬間から頭を抱えていた
「お姉さまは手出ししたいでね!私1人でできるから!」
「え、紫色を使っちゃダメなの?どうして?」
「もう!口出ししないで!!」
エマはそうやってメルージュからの助言を全て無視していた
だからどういった内容なのかもわからないし、会場がどれだけ酷いことになっているかもわからなかった
「メルージュ様。ご一緒に会場まで参りませんか?」
「マリア様。私、行きたくないですわ」
「メルージュ様…大丈夫ですわ。みなさん今回のお茶会は仕方のないことだと存じておりますもの」
メルージュを気遣うのはマリアだ
マリアは伯爵令嬢でありメルージュとは特に仲の良い友達である
そんなマリアも今回のお茶会は仕方のないことだと割り切って出席するのだろう
友であるマリアが出席するのだ、一応姉である自分が逃げ出してはどうする!と気を引き締めてエマが主催するお茶会の会場に向かった
ーーーー
「め、メルージュ様…流石にこれは…」
「言わないでマリア様。私ちゃんと辞めるように伝えましたのよ?」
会場についたメルージュとマリアは自分たちの目を疑った
そこには会場中に散りばめられた紫の薔薇と紫のテーブルクロス
全てが紫色で統一されていた
メルージュは自分の顔が笑っていないのを自覚した
「(あれだけ紫だけは辞めなさいと伝えたのに…!!!)」
本来、紫の色味は王族しか使えない色味だ
王族が降嫁した際や臣籍降下した際には特例としてその人物が公式の場で紫を使った衣装を着ることは許されている
おそらく最近婚約者になった10歳の第一王子がよく紫を基調とした服を着ていたり、母であるイライザが普段から身につけているその色を特別だと彼女は思わなかったのだろう
メルージュの教えることなどエマの頭に入らないのは当たり前のことをメルージュは失念していた
お茶会に招待された者は必ず主催者に挨拶をしなければならないのだがメルージュはあえて挨拶に行かなかった
招待者が主催者に挨拶に行かないというのは「このお茶会はつまらない」と態度で示している合図である
もっともエマがその意味を理解しているかは不明だが、自分の話を一切聞こうとしなかったエマに対するメルージュなりの仕返しだった
椅子に座ったメルージュの横にはオロオロとしたマリアがいたが、しっかりと椅子に座っていることから彼女もきっとエマに敬意を表すつもりはないのだろう
メルージュは椅子に座り周りに目を向けた
入り口からこちらにまっすぐ歩いてくる1人の女学生の姿がみえた
「お隣よろしくて?」
「これは…!!!第一王女様に拝謁いたします。」
「まあ、そんなにかしこまらないで?ここは学園よ」
「ありがとうございます」
メルージュの向かいに座ったのは国王の長子、第一王女であるリリーだった
リリーはメルージュより一学年上の3年生であった
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