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「ーーーー、ブルック公爵は爵位剥奪のもと北の炭鉱で従事、令嬢とアイシラは同じく北の修道院へ入ることを命ずる」



ぼんやりとしていたらいつのまにか3人の判決が決まっていたようだ
目をパチクリとしている私の反応を見て隣のフィル様がふっと笑った


「何を考えてた?」

「…フィル様が罪作りな男だな、と考えておりました」


「なんだそれは」

「フィル様に恋をしなければあの2人が罪を犯すことはなかったのではないかと…仮定の話ですが、そう思ってしまったんです」


「シャリーらしいな」

私の方に腕を回しそっと抱き寄せるフィル様の体温を感じながら目を逸らさずに3人を見つめた


「陛下!!最後に、最後に…!!」


罪状を聞いたアイシラ様が突如として大声を上げた
勝手に言葉を発したことから騎士たちが押さえつけようと動き出したが、陛下がそれを制してアイシラ様の声を聞いた


「お父さんのバッジを陛下にお返ししたいのです!」


王弟殿下のものだったバッジをとりだしたアイシラ様は瞳に涙を浮かべてそのバッジと陛下を交互に見つめた


「……よかろう。バッジを此処に」


陛下がそう伝えアイシラ様の近くにいた騎士がバッジを受け取ろうと動いた



「いや!せ、せめて最後のお願いです…私の手から…」


バッジを握りしめ涙をぽろりとこぼした彼女の姿に騎士がたじろいだ
中身はアレだが外見は国内でも指折りの美しい顔に騎士たちは絆されてしまったようだ


「最後の温情だ」


小さくため息をついた陛下の声を聞いてアイシラ様がふらりと陛下に近づいた


(「どうして右手をポケットに入れてるのかしら…」)


ふらふらとおぼつかない足取りで陛下に近づくアイシラ様は左手でバッジを握り、右手をドレスのポケットに入れていた
そしてどこか虚な目をしている彼女に得体の知れない違和感を感じた



「………アイシラ様!!だめです!!」




嫌な予感を感じた私は先を立ち上がりアイシラ様に向かって声を上げた


「アイシラを捕らえよ!!」

「きゃぁ!!!!」


私の声を聞いたアイシラ様が一瞬私の方を見た瞬間に陛下の隣にいた王太子殿下が声を上げ、アイシラ様は事を起こす前に騎士たちに押さえつけられた



「シャリー、どうした」


「フィル様、アイシラ様のポケットを!」


「あぁ…」


私の声に驚いているフィル様にそう声をかけて2人で急いで押さえつけられているアイシラ様の元へと向かった





は…!!」


「…東洋で問題視されていたアヘンと呼ばれるものだ」


騎士の1人がアイシラ様のポケットから取り出したものは東洋で国一つを潰しかけたと言われている麻薬の一瞬と呼ばれる薬だった



「なぜ貴様がこれを持っている!!」


「なぜ…?簡単よ、裏町ですぐ買えるもの…これを持ってたら誰でも私のいう事を聞いてくれたわ」


先程までの涙を浮かべた可憐な姿ではなくなり、目は虚で、口から涎を垂らしているアイシラ様の姿に言葉を失った


「コレは常用すると廃人になるものです。少し摂取しただけでも体調を崩しやすく…判断力が低下します」


私が口元を手で押さえながらもそう話すと王太子殿下が、ハッと何かに気づいたのち、ニヤリと悪魔のような笑顔をアイシラに向けた


「麻薬の所持は違法だ。…しかもそれを陛下に使っていたのだからこれはもう死刑だな」


「死刑?!なんで私が?!」

「おかしいと思ったんだ。賢王と名高い陛下がお前にだけは甘かった理由が、お前、陛下に近づくときにこれを忍ばせていたな?」


「それの何が悪いの?男は私のいう事を聞くのが普通でしょ?」


王太子殿下の言葉を聞いても反省の色がないアイシラ様に絶句した
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