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しおりを挟む「それで、あのお二人は…」
「今は貴族牢に入れている。…2人とも誘拐未遂に殺人未遂、温情は与えられない、と兄上は言ってた」
「そう、ですか…」
私とデルフィーナ様を刺したアイシラ様は言わずもがな、私の誘拐計画を企てていたデルフィーナ様の証拠もみつかった為にその罪は重いと判断されたようだ
「時を同じくして、ブルック公爵の国庫横領と領地内での奴隷売買の証拠も揃った。兄上が告発して公爵も貴族牢に入っている。未成年のデルフィーナ嬢の責任も追求されて遅かれ早かれ公爵は取りつぶしだろう」
「まあ…お気の毒ですが、横領に奴隷売買は重罪ですから仕方ないですね」
フィル様の話す内容に少しも同情を感じなかった
(「ホッとしてる自分がいるわ」)
声には出さなかったがそう思った
ブルック公爵からのセクハラも、アイシラ様の不可解な言葉も、デルフィーナ様からの嫉妬も受けなくていいと思うと安堵している自分がいた
安堵している私をよそに気まずそうな表情をしたフィル様が私の手をぎゅっと握った
「有罪は確定だが、仮にも公爵家と王弟の娘という理由で裁判が行われる…被告側としてシャリーに裁判への出席をするように、と兄上から言われている」
「はい。わかりました」
「……嫌じゃないか?」
「大丈夫です。…たしかに顔は見たくありませんが、しっかりと御三方には罪を償って欲しいですから」
力なく笑いながらそういうと、目を見開いたフィル様もすぐにふっと笑った
ーーー
裁判の日は残念ながら大雨だった
まるで誰かの心の中を表しているような土砂降りの雨空を眺めながら私はフィル様のエスコートで裁判所の被告席へと腰を下ろした
あたりを見渡すと上位貴族の当主たちと裁判官が並んでいる
公爵を裁く、ということでこの裁判の裁判長は国王だ
私たちが入場してから10分後
ざわざわとしている裁判所に国王が入場したことで当たりはシンッと鎮まった
「これより、ブルック公爵家の横領、奴隷売買。お呼びにブルック公爵令嬢主犯の誘拐未遂、そして、アイシラの殺人未遂について裁判を行なう」
広い裁判所に響き渡る国王の声で裁判が開始となった
「まずは罪人を連れてこい」
その言葉を皮切りに、ブルック公爵、デルフィーナ様、アイシラ様が後ろ手に拘束されながら騎士たちに連れられて裁判所へと入場した
事件から1週間
牢に入れられた3人の髪の毛はみだれ、どこか肌も薄汚れていた
悔しそうな表情をしたブルック公爵
呆然としたデルフィーナ様
あたりを睨みつけているアイシラ様
「さすが、神経が図太いな」
三者三様の態度をみてフィル様が小声で呟いた
陛下の隣に立つ王太子殿下がつらつらと3人の罪状を述べている中私は3人をじっと見つめていた
(「恋、は恐ろしいわね」)
ブルック公爵に関してはノーコメントだが、デルフィーナ様とアイシラ様に関してはフィル様という男性が居なければ、こんなら結末を迎えなかったのでは?と思ってしまう私は10代のあの2人ほど燃え上がる恋に溺れることはできなかった
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