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しおりを挟む「…とても15歳の女性が考えるような内容ではないわね」
ジェイコブが話した内容を聞いてラウラがポツリとつぶやいた
隣にいた私もその言葉に大きく頷いた
ジェイコブに近づいてきたブルック公爵令嬢のデルフィーナ様は先程の偽装された招待状を渡してこう囁いたそうだ
『貴方の元婚約者のシャーロット嬢が参加する。婚約者もまだいない行き遅れだから貴方が名乗り出たらきっと喜んで婚約をするはずよ。彼女と婚約した暁には…そうね、お父様に伝えて貴方を王宮官吏にしてあげる。それに、彼女って清廉なイメージあるけど案外遊んでいたみたいよ?貴方がしっかりと躾けてあげなきゃね』と、
まともな仕事にもつかず親の脛を齧って生きていたジェイコブにとってこの提案は棚からぼたもち状態ですぐにその提案を了承してこうやって屋敷に入ったという訳だった
「我が家の警備体制を見直さなければな」
「そうね。それにデルフィーナ嬢の行動は度が過ぎてるわ。シャーロットを陥れるような嘘をつくなんて…」
許せないわ!!と声を荒げたラウラの声にジェイコブの体がびくりと揺れた
「でもさすがと言うべきかデルフィーナ様がそう言ったという証拠を残してないわ」
私がぽつりと呟いた
正直、今回の行いはデルフィーナ様が所属する貴族派の勢いを削ぐための絶好のチャンスでもある
それに私としてはフィル様の周りをうろちょろしているデルフィーナ様は目の上のたんこぶだった
「な、なぁ…なんでデルフィーナ様は俺にこんなことをさせたんだ…?」
先程までの勢いはなく、項垂れながらそう問いかけてくるジェイコブにみんなの視線が集まった
「まだ公式に発表されていないけど、私はフィルナンド殿下と婚約するのよ。だから…殿下と結婚したいデルフィーナ様からしたら私は邪魔なのでしょうね」
「嘘だろ…じゃあ俺は利用されただけなのか…?」
「そういうことね」
お気の毒様、と告げれば彼はがくりと頭を垂れた
そんなジェイコブに特に同情するわけもなく私はラウラに声をかけた
「デルフィーナ様がマリーツ卿に指示した証拠はないけれど、この招待状とマリーツ卿の証言はきっと使えるはずよ」
「シャーロット、あなた、抜かりがないわね」
「ええ。私もう逃げないって決めたから」
自分の手を汚さず他人の手を汚させるデルフィーナ様のやり方に私は憤りを感じていた
ーー
ジェイコブが消されたらせっかくの証言が無くなると判断したルフェリ侯爵はジェイコブを連れてそのまま王宮へと向かった
王太子殿下とフィル様にこのことを伝えて偽装された招待状の裏も取るという流れになった
「きっとマリーツ卿が失敗したことはデルフィーナ様に伝わってるはずだわ。来週の春の祝賀会できっと何か仕掛けてくるはずよ」
「そうね。念のためにドレスは当日まで保管庫に入れておいて、当日は夫と王宮騎士に護衛を頼みましょう」
ラウラがそう話し、私も首を縦に振る
流石のデルフィーナ様も王宮騎士に指示を出すことはできない
私はそっと夜空を眺めた
(「戦いの火蓋が落とされたわね」)
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