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しおりを挟む「できたわ!!」
「まあ!すごく素敵!」
ラウラが目の前にパッと広げたのは深紅で作られた隣国のマーメイドドレス
胸元はハートカットで、そこから腕に広がるチュール生地がふわりと幾重にも重ねられ肘部分までを覆うように膨らみがあった
胸から膝のラインまではピッタリと体に寄り添って膝下からは人魚のヒレのようにヒラヒラと揺れていた
「こんなにドレスを早く作ったのは初めてだけど…うん、いい出来だわ」
「ありがとうラウラ。疲れたでしょ…?」
「楽しかったから大丈夫よ」
化粧をした上でもうっすらと目の下にクマが見えるラウラに心が苦しくなった
そんな私に気にしないで!といつもの笑顔を向け、ラウラはメイド達にドレスを私に着付けるように指示を出した
ーー
「さて、これは春の祝賀会のお楽しみとして、今日の夜会ではこのドレスにしましょう!」
「借りてばっかりで本当にごめんなさい…」
深紅のマーメイドドレスはメイド達が丁寧にクローゼットに片付けてくれた
そしてラウラがそれと入れ替わるようにネイビーのベルラインの一般的なドレスを持ってきた
ネイビーだがふわりと腰からつけられたチュールが重たさを中和してくれるラウラお気に入りのドレスらしい
「いいのよ!ロックフェラー伯爵家も今は復興中だから色々と大変でしょ?友達なんだからたまには頼ってよ!」
それにシャーロットは歩く広告塔になってもらうわ!と宣言するラウラに苦笑しつつ私は渡されたドレスに袖を通した
今日はルフェリ侯爵邸で毎月開かれる夜会に出席する予定だった
ロックフェラー伯爵令嬢としての復活戦としてラウラから正式に招待状も貰っている
あと数時間後にはお父様もルフェリ侯爵邸にやってきて私をエスコートしてくれる予定だ
つまり今日の夜会は私とお父様の復活戦でもある
お父様に手紙で事の詳細を送った
返ってきた手紙でわかったのはフィル様に見染められたという事実に困惑していることだった
『会った時に詳しく!!』と最後に殴り書きされていたのには笑ってしまったのはここだけの話だ
「さーて、今日の夜まで磨くわよー!!」
ラウラのその合図で私とラウラはメイド達からもみくちゃにされながら夜会のために準備を始めた
ーー
(「ラウラったら私が傷つかないように配慮してくれたのね」)
メイド達にもみくちゃにされてから半日後
日が落ちると同時に始まった夜会は貴族達の鮮やかなドレスとルフェリ侯爵家の準備で華やかな場所と化していた
お父様にエスコートされながら夜会会場に入った私たちにも貴族達の視線が突き刺さる
だがその視線は好意的なもので居心地は不思議と悪くなかった
ラウラが本日招待してくれている貴族達は王家派の貴族達ばかりだったからだ
これで、貴族派の人達がいたらきっと不躾な視線に晒されていたかもしれない
ラウラの配慮にジーン、と感動しながらお父様と主催者であるルフェリ夫妻の元へと静かに歩く
「ひ、久しぶりの夜会だ…」
「お父様、お父様。手と脚が一緒に出てますわ」
「仕方ないだろう…緊張しているんだから…」
カチカチになって手足が同時に出ている父に苦笑しながらルフェリ夫妻に挨拶を行う
ラウラがニヤリと一瞬だけ笑ったのをみて私も無意識に入っていた体の力がスッと抜けた
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