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しおりを挟む驚きつつも、嬉しさが込み上げてきた私を目を細めながらフィル様がぎゅっと抱きしめてくれたところで、また王太子殿下の制止が入った
そして、アイシラ様のことや、私たちの婚約のことを話した後、名残惜しそうにフィル様はルフェリ邸を去っていった
ーー
「さーて、採寸、改めてさせてちょうだい!!」
「前のデータじゃ駄目なの?」
「前のドレスと違って今回のドレスは形が全然違うの!」
より細かいデータが必要だわ!と意気込むラウラに苦笑しつつ、私は大人しく採寸を受けた
「それにしても…前のやつより斬新すぎない?」
「そうね、たしかにこのデザインは初めてよ」
フィル様が帰り際にラウラに渡したドレスのデザイン画は我が国では見たことがないデザインのドレスだった
「人魚のようね」
「人魚のようなデザインだから、マーメイドドレスっていうんだって」
「そのまんまね」
くすくすと2人で笑い合う
なんでも、このデザインはフィル様のお兄様でいるバルハロ公爵様が海を隔てた隣国に留学した際に持って帰ってきたデザイン画の一つだったらしい
海を隔てた隣国とは交流が図られるようになってまだ日が浅いため、彼の国の文化はまだ我が国には浸透していなかった
「素敵なドレスだけど、体のラインが出るのはちょっと恥ずかしいわ」
「シャーロットはスタイル抜群じゃない!!このドレスよく見たけど、出るところは出て、引っ込むとこは引っ込んでないと着れないドレスよ。まさにシャーロットのためのドレスと言っても過言じゃないわ!」
「過言だと思うけど」
「いーえ!この私が作るんだから最高のドレスよ!!腕がなるわ!」
るんるん、とご機嫌な様子でラウラは自身のアトリエからあらゆる生地を引っ張り出してきて床に並べた
その全ての色が赤色だった
「待ってラウラ。赤はダメよ」
「なんで?だって婚約発表でしょ?殿下からも赤でって言われてるわよ」
「でも、正式に婚約したわけじゃないし」
あからさますぎない?とラウラに問い掛ければ問題ないわよ、とあっけらかんと返された
赤色
王族の直系は黒髪赤目で生まれてくる
そのため、赤は王族の色、とされており社交界で赤色のドレスやアクセサリーをつけることはタブーとされている
赤を身につけられるのは王族と、それに準ずる貴人しか許されていない
つまり、赤色のドレスを着る=婚約者
と、捉えられるわけだ
「お父様にもまだ言ってないわ」
「あら、それなら多分殿下たちがどうにかするわよ!手紙が止められていたことを解決したわけだし」
手紙が届いていなかったと言う事実はすぐに公になった
フィル様は毎日手紙を書いていたようだが、私からの返事がなかった為に捨てられた?!と焦っていたらしい
だが、蓋を開けてみたら、ブルック公爵の腰巾着で有名なマリーツ伯爵が私宛の手紙を全て途中で握りつぶしていたことが判明したらしい
この事は正式にフィル様からマリーツ伯爵に抗議し、マリーツ伯爵は3ヶ月間の謹慎処分が言い渡さたそうだ
(「なんだか、まだまだ嫌なことが起きそうだわ…」)
どうか、穏やかにフィル様と結婚ができることを願った私を嘲笑うかのように問題が次々と起こる羽目になるとは私はこの時はつゆほども思ってなかった
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