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「はぁ…素敵だわ…とっっっても素敵」


「まだ言ってるの?もうあれから1週間経つのよ?」


ラウラの屋敷に泊まらせてもらうこと1週間
私とフィル様の話を聞いたラウラは会うたびに恍惚とした表情で素敵、素敵と連呼している


「私ずっとヤキモキしてたのよ!フィルナンド殿下が可哀想だわ~って思ってたの!」

「え、そうなの?」

「誰が見たって殿下はシャーロットのことが好きだったもの!どこに行くにも連れてたし、だなんて愛称で呼ぶし!」

小説が書けそうだわ、と思案しているラウラに苦笑しつつ、ルフェリ侯爵邸の中でも最も豪華に作られている応接間に2人で向かう




遡ること1週間前


ラウラの屋敷に来た私は早速、ラウラの勧めもあってフィル様に手紙を書いた
夕刻に帰ってきたルフェリ侯爵に明日の朝一で届けてもらうように託した手紙の返事はその日のうちに帰ってきた


『会いたい』


そう書かれていた手紙をぎゅっと握りしめてルフェリ侯爵夫妻の力も借りて1週間後の今日、フィル様がお忍びでルフェリ邸までやってくることが決まった



(「はぁ……緊張する」)


ドグドクと心臓が早鐘のように身体中に鳴り響く
応接間の扉の前に来た私たちは深呼吸をしながらコンコンとノックをした



「失礼しま「シャリー!!」きゃっぁ!」


ノックをして扉をガチャリと開けた瞬間に目の前に飛び込んできたのはずっと見慣れてきた黒い軍服


「フィル様…!!」


「シャリー…会いたかった…」


「私もです…」


ぎゅっと離れていた時間を埋めるように抱き合う私たち


「コホン。えーと、いいかな?2人とも」


「これは…!王太子殿下!」

「久しぶり、ロックフェラー嬢」


元気そうでよかったよ、と人の良さそうな笑みを浮かべた王太子殿下までもがやって来ていた


「フィルナンド、時間がないから彼女を離してこっちにきなさい」


「フィル様、あちら、きゃ!」

王太子殿下の声を聞いて私をじっと見た後フィル様は私をガバッとお姫様抱っこにしてソファにそのまま座った


フィル様の膝の上で??状態の私をよそに王太子殿下が本題を話し始めた




ーーー





「アイシラ様が陛下に薬物を使用している…?!」


「可能性があるかもしれない、と言う段階だ。確かな証拠はまだない」


女狐が…と悪態をつくフィル様の顔をそっと覗き見ると私の視線に気づいたフィル様は自身の頬を私の頭にすりすりと擦り付けてきた


普段なら何をしているんですか!!と怒る私も、会えなかった時間のせいか、大人しくそれを受け入れていた
斜め横にルフェリ侯爵の横に座るラウラが「恋で人は変わるわね~」と言っているのは聞かなかったことにする



話が逸れたが、アイシラ様が陛下に対して、王族が耐性をつけていない東洋の薬物を使っているのではないかという話に私は驚きを隠せなかった


「気づいたのはフィルナンドだ。やたら陛下と距離が近いアイシラに疑問を抱いたんだろ?」


「あぁ。賢王と呼ばれる陛下があの女の無茶なお願いを聞き入れているのもおかしいと思ったんだ」


例えば、ブルック公爵令嬢などが良い例だ。と話す
そのことを聞いた私はドキッとした
ラウラの話を聞いて噂だと思っていたが本当のことはまだわからない


つい、不安になってフィル様の顔を仰ぎ見る


は全て嘘だ。私は女狐たちとは会ってないよ」

だから心配しないで、と言うフィル様の言葉を聞いてホッとする



「ドレスは…また違うデザインのものをルフェリ侯爵夫人にお願いするつもりだから心配するな」


「ですが、」


「駄目だ。春の祝賀会で、私とシャリーの婚約を発表するんだから、一番着飾らないと」



「え?」


さらっと言うフィル様の言葉を理解するのに時間がかかったのは許して欲しい

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