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「あいたたた、、」


「大丈夫ですかお嬢様」


「ええ。サリーは大丈夫?」

「はい!王都って賑やかなんですね!」



生まれて初めて王都に来たというサリーは所狭しと建てられた建物をキョロキョロと興味深そうにみながら、興奮が隠しきれていなかった


我が家は現在復興途中であるために座り心地の良い馬車は一つだけしかない
その馬車は主にお父様が使っているため、私が乗っていたのは臨時で購入した乗り心地がとても微妙な馬車だった


(「でもおかげで安全な旅路だったわ」)


臨時ではあるものの、それなりの作りがされた馬車のおかげで盗賊に襲われることなく王都まで来れたのは上々だ


「わぁ…ルフェリ侯爵邸ってすごいんですねえ」



「そうね、今をときめくルフェリ侯爵家ですもの」


私たち2人はラウラが住まうルフェリ侯爵までやってきた
手紙は出発する前に出していたのできっと大丈夫だろう



「すみません。シャーロット・ロックフェラーです。」


「ロックフェラー様?どうされたのですか?」


「え、今日伺うと手紙を出していたのですが…」


「はぁ…そういったことは奥様から言われたませんが…とりあえず奥様に取り次いでみます。」


門番に立っていた使用人に声をかけると、私が来たことに驚いた様子をみせた
この使用人は私のことを知っていたので、なんとかスムーズに屋敷に入ることができた




ーー



「シャーロット!!」


「ラウラ!ごめんなさい、手紙が届いてなかったのね」


応接室に通された私たちはソファに座りラウラの訪れを全く
しばらくしてドタバタと淑女らしかぬ足音でラウラが勢いよく部屋に入ってきた


「私、あなたが伯爵令嬢に戻ったことも領地に戻ったことも最近知ったのよ!!」


「ごめんなさい。私も突然だったから…でも、私、ラウラに手紙書いてたのよ?届いてない?」


「え…いや、一枚も届いてないけど」


「えっ」


2人で首を傾げる
10年前ならまだしも現在では郵便技術も向上し、上に貴族宛ともなればほぼ100%の確率で手紙は届くようになっている

それが一枚も届いてないということに2人で怪しい、と感じた


「ロックフェラー領と王都の間にあるのは、マリーツ伯爵家…ブルック公爵家の腰巾着じゃない!!」


絶対そこで手紙がとめられていたのよ!!と激昂するラウラを宥めた

「それがもし、本当だとしてももうどうしようもないわ…こうして会えたからよかったわ」


「そう、ね…でもなんかむしゃくしゃする!!夫に伝えておくわ!」


鼻息荒く話すラウラに苦笑しつつ、立ちっぱなしだったためにソファに腰掛けるように促した


「3週間前に、ドレスが仮縫いまで出来上がったから王妃様にとどけにいったの。その時、シャーロットにも会えるからと思って手紙は出してなかったの」

「3週間前…もう王宮にはいなかったわね」


そうなのよ、それに…と、先ほどまでの威勢をどこにやら急にしおらしくなって、落ち込み出したラウラにどうしたの?と問いかけた


「ごめんなさいシャーロット!!あなたのドレス…アイシラ様に取られちゃったのぉぉぉぉぉ」


うわーん!!と涙をポロポロと流しながらラウラが抱きついてきた


ラウラが泣いたことも、ドレスが取られたことも、いきなりのことに私は驚くことしかできなかった
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