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しおりを挟む「そんな理由で我が家は没落させられたのですか…」
私は自分の中で沸々と怒りが込み上げてくるのを感じた
フィルナンド殿下が話した内容を要約するとこうだ
・デビュタントで15歳の私を見染めたブルック公爵はどうにかして私を愛人にしたかった
・未婚の乙女をいきなり愛人にするには世間体が悪いので愛人になっても問題がない階級にして仕舞えばいい
・そうだ、借金を作らせて没落させれば平民落ちだから愛人にしても問題はない!!
以上のことからブルック公爵は公爵というビッグネームを使ってロックフェラー伯爵と取引のある全ての場所に圧力をかけた
そしてドタバタとしている伯爵家に借金を返せ!と詰め寄り、国王が隣国に行ってる間に裁判を起こし、まともな判決も下さずに伯爵家をお取り潰しにもって言った
ということだった
「ブルジョワ階級になったシャリーを愛人として迎えようと思ったがシャリーたちが上手く隠れていたおかげでブルック公爵はシャリーを探せなかったみたいだ」
ざまぁねえな、と悪い笑みを浮かべるフィルナンド殿下に苦笑する
上手く隠れていた私だったが5年前に第3王子の教育係としてたまたま王宮に上がるようになってブルック公爵に見つかってしまい、度重なるセクハラをされていた、ということらしい
9年の時を経て、フィルナンド殿下を主体とする何名かの貴族たちで再調査を行ったら矛盾する点が多く、証拠を集めることができた為に、晴れてロックフェラー伯爵家は冤罪をかけられたことが判明した
「つまり、私は…貴族に戻るってことですか」
「そうなるな。シャリーの父親、ロックフェラー伯爵にも昨日の時点で話は通して、夫人と共にロックフェラー領の屋敷に向かっている頃だろう」
その言葉を聞いて私はグッと感極まる感情が溢れた
「シャ、シャリー?!」
「すみません……両親の苦労を見てきてので……よかった、本当によかった…」
ポロポロと頬を涙が伝う
貴族として生きてきた両親が没落してブルジョワ階級とはいえ、慣れない仕事をしていた事が脳裏に走馬灯のように流れた
きっと二人とも喜んでいるだろう
私も早く二人に会わなきゃ
「……教育係はどうなるのですか」
私は涙を拭い、フィルナンド殿下に視線を向けた
「……」
「退職、ですね」
言いにくそうに口籠もるフィルナンド殿下の代わりに私が答える
退職、という言葉を聞いてフィルナンド殿下がぎゅっと私の手を掴んだ
「やめて欲しくない…」
「……でんか…」
私からは何も言えず床に視線が落ちた
フィルナンド殿下に辞めて欲しくないと言われて、嬉しい反面、そうもいかないという事が分かっていたからだ
ーー
「シャリーこっちにきてくれ」
「はい」
仕事をしましょう。と項垂れる彼に声をかけてどんよりとした雰囲気でフィルナンド殿下は政務を行った
いつものように整理をして、いつものようにコーヒーを入れる
あと何回これができるのだろうか、と考えて目元がうるっと霞む回数が多かった
日が落ちて月がゆっくりと上がり出した時間帯に仕事がひと段落したフィルナンド殿下から呼ばれてテラスに出てきた
朝よりも疲れ切った顔をしているはずなのにどこか色気が漂うフィルナンド殿下にどきりと胸が動いた
「殿下、なんですか」
「………」
テラスにやってきてから一言も話さなくなった彼に首を傾げる
私にグッと近づき逃げないで、というように手をギュッと掴まれた
「話してくれないとわかりませんよ」
普段であれば、許可なく女性に触ってはいけません!と声を荒げるが、なんだか今はそんな事は気にならなかった
いつもは自身に溢れた瞳がゆらゆらと不安そうに揺れている
ん?と私が視線を合わせれば、不安は捨てきれていないが、ぐっと覚悟を決めたように口を開いた
「俺は、シャリーが好きだ。女性として愛している。
……結婚してほしい」
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