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しおりを挟む「失礼。あなた、ロックフェラー嬢かしら?」
「……えぇ、私がロックフェラーではございます。」
「そう。私、デルフィーナ・ブルックよ」
「存じ上げております。」
ビュッフェを取りに歩き出した私の前に一人の少女が立ちはだかった
少女というにはあまりにも大人びたドレスを着る彼女はチグハグな感じが違和感を助長させた
デルフィーナ・ブルック公爵令嬢
ブルック公爵家の一人娘で、公爵が溺愛していると言われているデルフィーナ様は社交会でも色々と有名な人だった
(「あぁ、運が悪いわ」)
華美に作られた扇子をパシンパシンと手のひらに叩きながらデルフィーナ様が私に近づく
避けることもできずに笑顔を引き攣らせながら私は彼女と対峙した
「…フィルナンド殿下はどちらに?」
「殿下は公務のため、本日はいらっしゃいません」
私はさらっと嘘をついた
フィルナンド殿下ガチ勢に彼を合わせたくなかったからだ
デルフィーナ様は15歳とまだあどけない年頃だ
しかし、甘やかされて育ったのかかなり高飛車な性格で有名だ
現に今も私より低い背丈ではあるが上から目線で物申す感じはさすがと言ったところだ
「なんですって?…アイシラ様!どういうことですの?」
「アイシラ様…?」
なぜ、その名前が今出てくるのか、そう問いかけようとした瞬間にデルフィーナ様の後ろからにょきっとアイシラ様が出てきた
「アイシラ様!なぜここに…!?」
「デルフィーナ様が連れてきてくれたの!私はまだ社交会に出てはダメだと言われたけど同伴者なら構わないでしょ?」
悪びれもなく話す彼女を見て私は頭を抱えた
デビュタントも済ませていないのに夜会に出るなんて…
私が項垂れていると、扇子を一際大きくパシッと手のひらに打ちつけたデルフィーナ様が厳しい声をあげた
「私、前々から申したかったのだけど、ロックフェラー嬢はいつになったらフィルナンド殿下から離れますの?」
「…仰る意味がわかりかねます」
「25歳にもなって、殿下にまとわりつくな、と申しているのです!!いい加減どこぞの老貴族にでも嫁げば良いものの…」
貴方のお父様からもそういうこと言われて、なんならお誘いされましたが?とは流石に言えなかった
黙り込む私にデルフィーナ様はさらに言葉を続ける
「後1年もすれば私が結婚適齢期にはいりますわ。そうしたらすぐにでもフィルナンド殿下との婚約が決まりますの。…年増の貴方が近くにいてはフィルナンド殿下がお可哀想ですわ」
ぐうの音が出ないとはこのことだ
最近私が悩んでいたことを10歳も年下の彼女に指摘されて私は図星だった
「私の一存では決められませんので」
なんとか振り絞って出した声はとても弱々しく自ら負けを認めているようで惨めな気持ちになった
「私が退けといったら退けなさいよ!!」
ーーバシンッ
「シャーロット!!」
私の答えが気に入らなかったのか突然怒り出したデルフィーナ様が扇子で私の頬を叩いた
倒れはしなかったが少しよろけて自分の頬を触ったら熱を持っていた
口の中に広がる鉄の味は美味しくなかった
「デルフィーナ嬢!私の招待客に何をしますの!それに…貴方は招待してなかったはずです。何故ここにいるのですかっ」
頬を叩かれた私はあまりの衝撃に固まってしまった
ラウラが走り寄ってきてデルフィーナ様に問い詰めているのもどこか他人ごのように感じていた
「ふんっ ルフェリ侯爵夫人もお付き合いされる方は選ばれた方がよろしくてよ?招待状は私の友人が突然出席できなくなったと言ったので譲ってもらっただけですわ」
鼻をふんっとならし反省の色など見えないデルフィーナ様の行動にそこにいた貴族達はヒソヒソとデルフィーナ様の起こした行動について非難しはじめた
「……!!気分が悪いですわ!」
まさか非難されるとは思っていなかったデルフィーナ様とオロオロするアイシラ様は出口に向かって歩き出した
騒然とした夜会はそのままお開きとなってしまった
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