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しおりを挟む馬車に揺られながら私はつい先日からのことを考えていた
王妃様から頼まれたアイシラ様の教育係は呆気なく終わりを迎え、アイシラ様とは廊下でたまにすれ違う関係となった
すれ違い様にぎろりと睨まれるものの、直接絡んでくることはないので放っておいている
風の噂で聞いたが、どうやら彼女はブルック公爵令嬢であるデルフィーナ様と親交を着実に深めているとかなんとか
「私には関係のないことだわ」
自分自身に言い聞かせるように呟いた
「ロックフェラー様、着きました」
「ありがとうございます」
ガタガタと揺れていた馬車がぴたりと止まる
着いたのはルフェリ侯爵邸
今日はラウラが主催する夜会にやってきたのだ
「シャーロット!待ってたわ!」
「ラウラ!招待してくれてありがとう」
招待状を入り口でみせ、ホールに入ると煌びやかに夜会のドレスを纏ったラウラが階段から降りてきた
「殿下は?」
「王太子殿下との用事を済ませてから来るそうよ」
そう答えるとふーん、そうなのね。私の夫も王太子殿下の護衛で不在なのよ、とラウラが教えてくれた
今回の招待状はフィルナンド殿下宛に送ってもらったものだった
貴族ではない私が貴族の主催する夜会に出るためには、同伴者としてしか出席できないのが現実だった
「…それにしても私ったら人気者になってしまったのね」
「仕方ないわよ、ブルック公爵との事がゴシップ記事になるとは思わなかったもの」
私が入ってきた事で先にホールに屯っていた貴族達はヒソヒソと私をみて話し出していた
最近巷で人気の出ている新聞社という存在は貴族達も情報収集のために積極的に使っている機関だった
その中でも大手である新聞社がつい先日、とある記事を発表したのだ
"ブルック公爵 淑女への暴行未遂"
私も初めてこの記事を見た時はびっくりした
なにせ、記事の内容が一切の間違いがなくあの時の状況を記載していたからだ
この記事が出た事で世論は一気にブルック公爵へと非難が殺到した
ブルック公爵は正式に私へと謝罪文を送ってきたが、言葉の端々に苛立っている部分が見受けられた為、反省はしていないのだな、と呆れたのを覚えている
貴族とは噂話が好きな生き物だ
瞬く間にブルック公爵に暴行未遂をされたのが私だという事は知れ渡ってしまった
そのため王宮内でも歩いてると不躾な視線がチクチクと感じていた
「部屋を用意してるからそっちに行く?」
少し落ち込んでいる私を心配してからラウラがそう提案する
「大丈夫よ。殿下が来るまではここにいるわ」
「そう…私挨拶に行かないといけないから気をつけてよ!」
うろちょろしたらダメだからね!と念押しをしてラウラは主催者として挨拶回りに去っていった
(「さて、壁の花にでもなりますか」)
ラウラが去った後にメイドからシャンパンを受け取り、壁にそっともたれ掛かる
ホールの真ん中では2.3組のカップルがワルツを踊っていた
軽やかにステップを踏むあたりまだ10代の若いカップルかもしれない
音楽隊が奏でる音楽に紛れて私のお腹がぎゅうと鳴る
あら。恥ずかしい、と思いながらも昼から何も食べてない事に気づいて、ビュッフェを取りにその場を離れた
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