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しおりを挟む「殿下。ドレスの件ですがありがとうございます。」
ラウラと別れた後にいつものようにフィルナンド殿下の仕事部屋へと帰ってきた私は机に向かって頭を悩ませている彼に声をかけた
「あぁ、いいデザインがあったか?」
「はい。おかげさまで…それよりもまさか私のドレスが殿下のポケットマネーからだとは思いませんでした」
一体どういうことですか、彼に詰め寄った
「…株や投資の話をしたらシャリーは絶対反対するだろう?」
「当たり前です。アレは失敗した時のリスクが高いのですよ」
「リスクは分かっている。現に失敗していないから別にいいだろう?」
「……今後は私のためにお金は使わなくて結構です」
フィルナンド殿下は意外と頑固な性格で自分で決めたことは他者からどれだけ言われようと決して変えることのないタイプの人間だったと思い出した
「(私が何を言っても無駄ね。)お茶を淹れましょうか」
「コーヒーを頼む」
「かしこまりました」
最近では背伸びをしているのかコーヒーを飲み出し始めたことに私は心の中でクスリと微笑ましく感じていた
年齢の割に大人びている彼だがブラックコーヒーには角砂糖を3つも入れることを知っているのは私だけだった
湯気がゆらりと上がるカップをソーサーに乗せて静かに机の上に置く
チラリと書類に視線を配ればフィルナンド殿下が責任者となっている元ロックフェラー領の治水事業に関する資料だった
(「18歳になって成人の仲間入りしたとはいえ、立派になられたわ…」)
うんうん、と誇らしい気持ちに溢れながら机の上に無造作に置かれた資料を片付け出した
一般教養もとっくの昔に終えている為、最近はもっぱらこうやって彼が仕事をしやすいように資料をまとめたりするのが私の仕事になっていた
「殿下。この書類は確か、王太子殿下から今週中と頼まれていたものでは?」
「あーそうだったな。…なんだ、サインをするだけか。すまないシャリー、これを兄上のところに持っていってくれるか?」
「かしこまりました。」
フィルナンド殿下にそう言われ、私は封書の中に書類を入れて静かに部屋を退室するためにドアに向かって歩き出した
「中央宮を通るときは寄り道せずに早く帰ってくるんだぞ」
「心得ております。それでは行ってまいります」
ペコリと頭を下げて私は王太子殿下が住まう王太子宮に向かって歩き出した
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