上 下
3 / 48

3

しおりを挟む


「相変わらずおっきいわね…」


ルフェリ侯爵邸を訪れてから3日後

私は今手元にある中で一番上品かつ高級なドレスを身につけて王城の城門にやってきた
高級なドレスとはいうものの、首元まで襟が詰められた学園の教師が着用するような貞淑な藍色のドレスだった


門の前に立っている騎士に手紙を見せて10分ほど待機していると門の中から執事らしき男性がやってきた
白髪の混じった初老を迎えるであろう男性はシャーロットをみてペコリと頭を下げた
私もつられて頭を下げた


「お待ちしておりました。ロックフェラー嬢。私は、第3王子付きのエドガーでございます。」


「シャーロット・ロックフェラーです。本日はよろしくお願いいたします」

伯爵令嬢時代に培ってきたカーテーシで挨拶をすると
ほぉ、とエドガー様がその姿に感心した様子を見せて私はほっとした


にこりと笑顔を浮かべてエドガー様が王城の中を案内し始めた




ーー






「まあまあ!あなた、あの!」

「……お、王妃様におかれましてはご機嫌麗しく存じます…」


油断していた


おそらく第3王子の侍従であるエドガー様が面接をするのだろうとたかを括っていたからだ

案内された部屋に足を踏み入れた瞬間、ふわりと香るジャスミンの香りを嗅ぎ、まさか。と緊張が走った


「女性初の主席卒業をしたシャーロット嬢なら問題ないわ!決定!」

ジャスミンの香りはこの国では王妃様しか使うことを許されていない
王妃様自身がジャスミンの香りが好きで、その王妃様を寵愛する国王がその法令を出したからだった

なのでジャスミン=王妃様という図式は平民でも知っている内容だった


突然の王妃の出現に私は固まった
なんとか挨拶はしたものの王妃様の勢いに押されていた

「お、王妃様…その、私は20歳を超えた行き遅れで…」

「それがどうしたの?今はそんなの関係ないわ!シャーロット嬢、貴女の有能さは有名だったのよ?自信を持って」


ね?と微笑を浮かべる王妃様は子を3人産んだとは思えないほど瑞々しくお若い

存在自体が煌びやかな王妃様はコテっと首を傾げながら固まる私の手を握りしめた


「ね、お願い?貴女ならきっとフィルナンドも気に入ってくれるわ!」


花が綻ぶように笑う王妃様のご尊顔を前に私はグッと表情を抑えてなんとか絞り切りながら声を出した


「よ、よろしくお願い申し上げます…」




ーーー




それからさらに1週間後


私は怒涛の日々を過ごしていた


まず第3王子の教育係として王城住まいになるため、引っ越しから始まった
幸いなことに荷物自体はそんなに多くはなかったので引っ越し自体はすぐに終わった

就職場を提供してくれたラウラに挨拶をしに行った
彼女は朗報だわ!と興奮しており、また王宮で会えるのを楽しみにしてるわね、と笑顔を向けてくれた


そして一番大変だったのは父と母を説得することだった


両親はそもそも私が働くことに関してあまり歓迎はしていなかった
女性が働く、というのはやはり世間体を気にしていたのだろう


しかし、今回ばかりは王妃様からのご命令とあって表向きは喜んでいたが、夜になるとまた「なんであの子が…」とシクシクと泣いていたのはこの際知らないふりをした




「それでは。いってきます」


「体には気をつけてね…手紙も頂戴」


「ええ。毎日書くわ!いってきます」


そうして私は4年間住んでいたタウンハウスから王城へとその場を移していった


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

お姉様の婚約者を好きになってしまいました……どうしたら、彼を奪えますか?

奏音 美都
恋愛
 それは、ソフィアお姉様のご婚約を交わす席でのことでした。 「エミリー、こちらが私のご婚約者となるバロン侯爵卿のご令息、オリバー様ですわ」 「よろしく、エミリー」  オリバー様が私に向かって微笑まれました。  美しい金色の巻髪、オリーブのような美しい碧色の瞳、高い鼻に少し散らしたそばかす、大きくて魅力的なお口、人懐っこい笑顔……彼に見つめられた途端に私の世界が一気に彩られ、パーッと花が咲いたように思えました。 「オリバー様、私……オリバー様を好きになってしまいました。私を恋人にしてくださいませ!!」  私、お姉様からご婚約者を奪うために、頑張りますわ!

旦那さまに恋をしてしまいました。

しらす
恋愛
こんなことになるならば、わたしはあなたに出会いたくなかった。でもわたしは、あなたを愛している。あなたがたとえ愛してなくても、疎んでいても、わたしはずっと愛している。 これはわたしが選択を間違えた話。 小説家になろう様にて先行更新しています。 これを読んだ方、言っておきます。あんまり上の内容信じない方がいいです。(自分で書いておいて何を言って((() 2021/4.11完結しました。

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

【完結】棚からぼたもち?婚約破棄されたので諦めていた恋を叶えることにしました。

紫楼
恋愛
 年齢的にも釣り合う公爵令嬢だからって2歳上の王太子と8歳の時に婚約者になったけれど、第一印象が最悪な上成長しても好みには合わないからどうしたものかと悩んでいたら婚約破棄を宣言されましたわ。  いけない、顔がニヤケそうです。 小説家になろうさまにも掲載しています。    

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...