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しおりを挟む「相変わらずおっきいわね…」
ルフェリ侯爵邸を訪れてから3日後
私は今手元にある中で一番上品かつ高級なドレスを身につけて王城の城門にやってきた
高級なドレスとはいうものの、首元まで襟が詰められた学園の教師が着用するような貞淑な藍色のドレスだった
門の前に立っている騎士に手紙を見せて10分ほど待機していると門の中から執事らしき男性がやってきた
白髪の混じった初老を迎えるであろう男性はシャーロットをみてペコリと頭を下げた
私もつられて頭を下げた
「お待ちしておりました。ロックフェラー嬢。私は、第3王子付きのエドガーでございます。」
「シャーロット・ロックフェラーです。本日はよろしくお願いいたします」
伯爵令嬢時代に培ってきたカーテーシで挨拶をすると
ほぉ、とエドガー様がその姿に感心した様子を見せて私はほっとした
にこりと笑顔を浮かべてエドガー様が王城の中を案内し始めた
ーー
「まあまあ!あなた、あのシャーロット嬢じゃない!」
「……お、王妃様におかれましてはご機嫌麗しく存じます…」
油断していた
おそらく第3王子の侍従であるエドガー様が面接をするのだろうとたかを括っていたからだ
案内された部屋に足を踏み入れた瞬間、ふわりと香るジャスミンの香りを嗅ぎ、まさか。と緊張が走った
「女性初の主席卒業をしたシャーロット嬢なら問題ないわ!決定!」
ジャスミンの香りはこの国では王妃様しか使うことを許されていない
王妃様自身がジャスミンの香りが好きで、その王妃様を寵愛する国王がその法令を出したからだった
なのでジャスミン=王妃様という図式は平民でも知っている内容だった
突然の王妃の出現に私は固まった
なんとか挨拶はしたものの王妃様の勢いに押されていた
「お、王妃様…その、私は20歳を超えた行き遅れで…」
「それがどうしたの?今はそんなの関係ないわ!シャーロット嬢、貴女の有能さは有名だったのよ?自信を持って」
ね?と微笑を浮かべる王妃様は子を3人産んだとは思えないほど瑞々しくお若い
存在自体が煌びやかな王妃様はコテっと首を傾げながら固まる私の手を握りしめた
「ね、お願い?貴女ならきっとフィルナンドも気に入ってくれるわ!」
花が綻ぶように笑う王妃様のご尊顔を前に私はグッと表情を抑えてなんとか絞り切りながら声を出した
「よ、よろしくお願い申し上げます…」
ーーー
それからさらに1週間後
私は怒涛の日々を過ごしていた
まず第3王子の教育係として王城住まいになるため、引っ越しから始まった
幸いなことに荷物自体はそんなに多くはなかったので引っ越し自体はすぐに終わった
一応就職場を提供してくれたラウラに挨拶をしに行った
彼女は朗報だわ!と興奮しており、また王宮で会えるのを楽しみにしてるわね、と笑顔を向けてくれた
そして一番大変だったのは父と母を説得することだった
両親はそもそも私が働くことに関してあまり歓迎はしていなかった
女性が働く、というのはやはり世間体を気にしていたのだろう
しかし、今回ばかりは王妃様からのご命令とあって表向きは喜んでいたが、夜になるとまた「なんであの子が…」とシクシクと泣いていたのはこの際知らないふりをした
「それでは。いってきます」
「体には気をつけてね…手紙も頂戴」
「ええ。毎日書くわ!いってきます」
そうして私は4年間住んでいたタウンハウスから王城へとその場を移していった
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