2 / 48
2
しおりを挟む「第3王子の教育係?」
転機が訪れたのは誕生日から2週間を過ぎた頃だった
伯爵令嬢だった時代から懇意にしていた、ラウラ・アナビス伯爵令嬢
今は結婚してルフェリ侯爵夫人として社交会のファッショニスタでその名は馳せている
そんな彼女は情に熱く、没落して平民となった私と、今でもこうして定期的にお茶会をしてくれる貴重な友人だった
「第3王子ってフィルナンド殿下よね?たしか…13歳だったかしら」
「正解。王妃様が一般的な教育係を探しているのよ」
ルフェリ侯爵邸の四阿でメイドが淹れてくれたコーヒーをこくりと嚥下する
一気に口の中に広がった苦味が癖になる味だ、と感じた
最近貴族で流行しているコーヒーは未だにブルジョワ階級でもそんなに出回ってはいない
そんな希少なコーヒーを惜しみなく客人に出すルフェリ侯爵家はどうやら経済的な面では安定しているようで安心した
「ラウラはすごいわ。王妃様のお話相手になるなんて学生の時は全く思っていなかったから」
「ふふふ。勉強は嫌いだけどドレスとアクセサリー、それにコスメに関しては誰にも負けないわよ!」
傷一つない白磁のようにきめ細やかな指でカップとソーサーをもつラウラを見つめた
彼女は学生の時は勉学は今一つだったが卒業してファッションという部類でメキメキと頭角を表した
今では女性でありながらドレスショップを経営する彼女がシャーロットは眩しかった
「そのおかげで王妃様のコーディネーターだなんて光栄な役目も拝命できたのよね。王妃様も美容には興味もあるから話が弾むのよ…その時に第3王子のフィルナンド殿下の一般教養教育係を探してるって言われたの」
「一般教養…」
私は首を傾げた
第3王子ともなれば帝王学は必要最低限しか学ばないかもしれないが、貴族全員が履修する教育は幼い頃から受けているはずだ
それなのに今更一般教養を身につけるとはどういうことなのだろうか、と
「第3王子ってよっぽどのことがない限りは婿入りしちゃうでしょう?第二王子が公爵家の御令嬢と婚約したから必然的に第3王子は侯爵までに婿入りになるのよ」
「あぁ…王族から一貴族ですものね。ギャップに耐えられるように今から教育するってことね」
「さすがシャーロット!そういうことよ!それで、私思ったの。元伯爵令嬢で、ブルジョワ階級のことも知り尽くしているシャーロットならうってつけだって!」
「無理よ!」
興奮して話すラウラにピシャリと言い放つ
いくらラウラが私を買ってくれてるとは言え王族に教育するほどの身分も度胸も持ち合わせていない
「え…でももう王妃様に言っちゃった…」
「嘘でしょ?!」
「シャーロット・ロックフェラーって紹介しちゃった」
ごめんね。と謝るラウラは先程までの興奮は何処えやらしょんぼりと落ち込みながら手元を見ていた
私は大きなため息をついた
そのため息にびくりと動くラウラに苦笑スルー
「……面接、あるのよね?」
「え、ええ!もちろんよ!あくまでも候補だから…!!」
「今をときめくルフェリ侯爵夫人の頼みですもの。合格するかしないかは別として面接ぐらいは行ってもいいかも」
落ち込んでいたラウラは私の言葉を聞いて先程の勢いが戻ってきたのかメイドに頼み一つの手紙を持ってきた
「紹介状。面接は3日後、王城に来てこれを見せれば案内するって言ってたわ」
「用意周到ね、まあ、王妃様からのお願いだから断れないわよね…」
ラウラから手紙を受け取りぱらりと捲る
そこには3日後の日時と詳細が記入されていた
その手紙を懐に仕舞い込んで、ラウラに挨拶をしてルフェリ侯爵邸を後にした
10
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

【完結】フェリシアの誤算
伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。
正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
アラフォーだから君とはムリ
天野アンジェラ
恋愛
38歳、既に恋愛に対して冷静になってしまっている優子。
18の出会いから優子を諦めきれないままの26歳、亮弥。
熱量の差を埋められない二人がたどり着く結末とは…?
***
優子と亮弥の交互視点で話が進みます。視点の切り替わりは読めばわかるようになっています。
1~3巻を1本にまとめて掲載、全部で34万字くらいあります。
2018年の小説なので、序盤の「8年前」は2010年くらいの時代感でお読みいただければ幸いです。
3巻の表紙に変えました。
2月22日完結しました。最後までおつき合いありがとうございました。

婚約者は妹の御下がりでした?~妹に婚約破棄された田舎貴族の奇跡~
tartan321
恋愛
私よりも美しく、そして、貴族社会の華ともいえる妹のローズが、私に紹介してくれた婚約者は、田舎貴族の伯爵、ロンメルだった。
正直言って、公爵家の令嬢である私マリアが田舎貴族と婚約するのは、問題があると思ったが、ロンメルは素朴でいい人間だった。
ところが、このロンメル、単なる田舎貴族ではなくて……。
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

交際0日婚ですが、毎日ほのぼの幸せです。
翠晶 瓈李
恋愛
♢♢♢
少しずつ、ゆっくりと。
ほのぼのと。
のんびりと。
優しい心を通わせながら……。
歳の差夫婦の愛おしい日々。
♢♢♢
ナウラ、十六歳。
アクバルト、二十八歳。
面識のないまま婚姻した二人の生活は……⁉
♢♢♢
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる