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しおりを挟む「第3王子の教育係?」
転機が訪れたのは誕生日から2週間を過ぎた頃だった
伯爵令嬢だった時代から懇意にしていた、ラウラ・アナビス伯爵令嬢
今は結婚してルフェリ侯爵夫人として社交会のファッショニスタでその名は馳せている
そんな彼女は情に熱く、没落して平民となった私と、今でもこうして定期的にお茶会をしてくれる貴重な友人だった
「第3王子ってフィルナンド殿下よね?たしか…13歳だったかしら」
「正解。王妃様が一般的な教育係を探しているのよ」
ルフェリ侯爵邸の四阿でメイドが淹れてくれたコーヒーをこくりと嚥下する
一気に口の中に広がった苦味が癖になる味だ、と感じた
最近貴族で流行しているコーヒーは未だにブルジョワ階級でもそんなに出回ってはいない
そんな希少なコーヒーを惜しみなく客人に出すルフェリ侯爵家はどうやら経済的な面では安定しているようで安心した
「ラウラはすごいわ。王妃様のお話相手になるなんて学生の時は全く思っていなかったから」
「ふふふ。勉強は嫌いだけどドレスとアクセサリー、それにコスメに関しては誰にも負けないわよ!」
傷一つない白磁のようにきめ細やかな指でカップとソーサーをもつラウラを見つめた
彼女は学生の時は勉学は今一つだったが卒業してファッションという部類でメキメキと頭角を表した
今では女性でありながらドレスショップを経営する彼女がシャーロットは眩しかった
「そのおかげで王妃様のコーディネーターだなんて光栄な役目も拝命できたのよね。王妃様も美容には興味もあるから話が弾むのよ…その時に第3王子のフィルナンド殿下の一般教養教育係を探してるって言われたの」
「一般教養…」
私は首を傾げた
第3王子ともなれば帝王学は必要最低限しか学ばないかもしれないが、貴族全員が履修する教育は幼い頃から受けているはずだ
それなのに今更一般教養を身につけるとはどういうことなのだろうか、と
「第3王子ってよっぽどのことがない限りは婿入りしちゃうでしょう?第二王子が公爵家の御令嬢と婚約したから必然的に第3王子は侯爵までに婿入りになるのよ」
「あぁ…王族から一貴族ですものね。ギャップに耐えられるように今から教育するってことね」
「さすがシャーロット!そういうことよ!それで、私思ったの。元伯爵令嬢で、ブルジョワ階級のことも知り尽くしているシャーロットならうってつけだって!」
「無理よ!」
興奮して話すラウラにピシャリと言い放つ
いくらラウラが私を買ってくれてるとは言え王族に教育するほどの身分も度胸も持ち合わせていない
「え…でももう王妃様に言っちゃった…」
「嘘でしょ?!」
「シャーロット・ロックフェラーって紹介しちゃった」
ごめんね。と謝るラウラは先程までの興奮は何処えやらしょんぼりと落ち込みながら手元を見ていた
私は大きなため息をついた
そのため息にびくりと動くラウラに苦笑スルー
「……面接、あるのよね?」
「え、ええ!もちろんよ!あくまでも候補だから…!!」
「今をときめくルフェリ侯爵夫人の頼みですもの。合格するかしないかは別として面接ぐらいは行ってもいいかも」
落ち込んでいたラウラは私の言葉を聞いて先程の勢いが戻ってきたのかメイドに頼み一つの手紙を持ってきた
「紹介状。面接は3日後、王城に来てこれを見せれば案内するって言ってたわ」
「用意周到ね、まあ、王妃様からのお願いだから断れないわよね…」
ラウラから手紙を受け取りぱらりと捲る
そこには3日後の日時と詳細が記入されていた
その手紙を懐に仕舞い込んで、ラウラに挨拶をしてルフェリ侯爵邸を後にした
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