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しおりを挟む私、シャーロット・ロックフェラーは今年20歳を迎える
この国では20歳を迎えるのに結婚しないことは、行き遅れの部類に分類されるのは致し方ないことだと理解していた
貴族から平民
全ての女性が17~20歳ごろに結婚をすることが多い
近代化してきた昨今ではその猶予が2.3年は伸びているもののほとんどの女性が20歳を前にして結婚しているのは事実だった
私は元々は伯爵令嬢だった
私が16歳の時にお人好しの父が騙されてロックフェラー伯爵家は呆気なく没落
私が10歳の頃に婚約していた同格の婿入り予定だった三男は没落した私を馬鹿にして去っていった
あんな奴と結婚しなくてよかったと当時は逆にホッとしたのを覚えている
借金返済の目処も立たず、爵位を返上し今は王都のブルジョワ階級の人々が多く住むタウンハウスに父と母の3人で居を構えている
結婚適齢期に差し掛かった私だったが貴族から一気に平民へと転がり落ち、働くことを余儀なくされた
借金返済の為だと両親と共にがむしゃらに働いていたが働くことの楽しさを覚えた私には仕事は苦ではなかった
そうして、気づいたら私は20歳になっていた
「ごめんなさいシャーロット…私たちのせいで結婚もできないまま20歳を迎えるなんて…」
「気にしないでお母様。私、働くの好きよ。結婚して家で何もせず呆けている方が性に合わないわ」
20歳の誕生日をささやかに祝ってくれた両親はポロポロと涙を流しながら謝り続けていた
そんな2人をなんとか宥めつつ、私はは自分には結婚は無理だろうな、と心の中で呟いた
ーー
私は伯爵令嬢だった時から平凡だった
自慢ができたのは腰まで流れる豊かな絹糸のように滑らかな亜麻色の髪のみ
瞳は切長で、鼻も平均的よりは少し高い
可愛いの部類ではなく、美人の部類にはギリギリ入る程度の容姿だと評価している
チャームポイントは右眼の下にある涙黒子だ
10人中10人が普通、と答えるほど私はありふれた令嬢だった
私自身も着飾ることもせず、黙々と勉学に励んでいたため、華やかな学園生活は特に大きなイベントもなく無事に首席で卒業したのは懐かしい記憶だ
(「20歳…どこが雇ってくれるかしら…」)
先述したとおりこの国では20歳ごろに家庭に入る女性が多いため、20歳を迎えると必ずと言っていいほど職場を退社させられる
それは家族からだったり、職場からの配慮だったりと様々な理由があるが最終的に行き着くのは退職という現実だった
女性進出を、と謳われている昨今ではあるがやはりまだ昔の名残は根強い
男性は女性を卑下することはないが、庇護しなければならない存在だと思われているのはまだまだ仕方がないことなのかもしれないと私はため息をついた
というのも、例に漏れずシ私もつい昨日、16歳から勤めてきた商会を退職させられた
『シャーロットも結婚相手がいるのでしょう?結婚生活楽しんでね!』
と、上司であった40歳が手前の商会会長の夫人から笑顔でそう言われた時は口が裂けても「婚約者がいません」とは言えなかった
そんな経緯から私は今無職であった
20歳を迎えて雇ってくれる職場は限られている
息遅れの女性が行き着く先は大体、想像ができるだろう
私は幸いにも貴族の学園に通っていたため、算数に筆記、商会で働くための知識は持ち合わせていた
(「他の女性よりは働き口はあるとしても…」)
はぁー…と自室で大きなため息をついた
たった4畳しかない部屋には机とベッドが所狭しと並べられている
決して広くはないベッドに背中から倒れ込むと木造の天井を見つめた
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