あなたより年上ですが、愛してくれますか?

Ruhuna

文字の大きさ
上 下
1 / 48

1

しおりを挟む



私、シャーロット・ロックフェラーは今年20歳を迎える
この国では20歳を迎えるのに結婚しないことは、行き遅れの部類に分類されるのは致し方ないことだと理解していた


貴族から平民
全ての女性が17~20歳ごろに結婚をすることが多い
近代化してきた昨今ではその猶予が2.3年は伸びているもののほとんどの女性が20歳を前にして結婚しているのは事実だった



私は元々は伯爵令嬢だった
私が16歳の時にお人好しの父が騙されてロックフェラー伯爵家は呆気なく没落
私が10歳の頃に婚約していた同格の婿入り予定だった三男は没落した私を馬鹿にして去っていった

あんな奴と結婚しなくてよかったと当時は逆にホッとしたのを覚えている



借金返済の目処も立たず、爵位を返上し今は王都のブルジョワ階級の人々が多く住むタウンハウスに父と母の3人で居を構えている



結婚適齢期に差し掛かった私だったが貴族から一気に平民へと転がり落ち、働くことを余儀なくされた


借金返済の為だと両親と共にがむしゃらに働いていたが働くことの楽しさを覚えた私には仕事は苦ではなかった


そうして、気づいたら私は20歳になっていた


「ごめんなさいシャーロット…私たちのせいで結婚もできないまま20歳を迎えるなんて…」

「気にしないでお母様。私、働くの好きよ。結婚して家で何もせず呆けている方が性に合わないわ」


20歳の誕生日をささやかに祝ってくれた両親はポロポロと涙を流しながら謝り続けていた

そんな2人をなんとか宥めつつ、私はは自分には結婚は無理だろうな、と心の中で呟いた






ーー





私は伯爵令嬢だった時から平凡だった


自慢ができたのは腰まで流れる豊かな絹糸のように滑らかな亜麻色の髪のみ
瞳は切長で、鼻も平均的よりは少し高い
可愛いの部類ではなく、美人の部類にはギリギリ入る程度の容姿だと評価している

チャームポイントは右眼の下にある涙黒子だ

10人中10人が普通、と答えるほど私はありふれた令嬢だった


私自身も着飾ることもせず、黙々と勉学に励んでいたため、華やかな学園生活は特に大きなイベントもなく無事に首席で卒業したのは懐かしい記憶だ


(「20歳…どこが雇ってくれるかしら…」)


先述したとおりこの国では20歳ごろに家庭に入る女性が多いため、20歳を迎えると必ずと言っていいほど職場を退社させられる
それは家族からだったり、職場からの配慮だったりと様々な理由があるが最終的に行き着くのは退職という現実だった


女性進出を、と謳われている昨今ではあるがやはりまだ昔の名残は根強い
男性は女性を卑下することはないが、庇護しなければならない存在だと思われているのはまだまだ仕方がないことなのかもしれないと私はため息をついた


というのも、例に漏れずシ私もつい昨日、16歳から勤めてきた商会を退職させられた


『シャーロットも結婚相手がいるのでしょう?結婚生活楽しんでね!』


と、上司であった40歳が手前の商会会長の夫人から笑顔でそう言われた時は口が裂けても「婚約者がいません」とは言えなかった



そんな経緯から私は今無職であった


20歳を迎えて雇ってくれる職場は限られている
息遅れの女性が行き着く先は大体、想像ができるだろう


私は幸いにも貴族の学園に通っていたため、算数に筆記、商会で働くための知識は持ち合わせていた


(「他の女性よりは働き口はあるとしても…」)


はぁー…と自室で大きなため息をついた
たった4畳しかない部屋には机とベッドが所狭しと並べられている
決して広くはないベッドに背中から倒れ込むと木造の天井を見つめた



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?

恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ! ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。 エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。 ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。 しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。 「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」 するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】巻き戻したのだから何がなんでも幸せになる! 姉弟、母のために頑張ります!

金峯蓮華
恋愛
 愛する人と引き離され、政略結婚で好きでもない人と結婚した。  夫になった男に人としての尊厳を踏みじにられても愛する子供達の為に頑張った。  なのに私は夫に殺された。  神様、こんど生まれ変わったら愛するあの人と結婚させて下さい。  子供達もあの人との子供として生まれてきてほしい。  あの人と結婚できず、幸せになれないのならもう生まれ変わらなくていいわ。  またこんな人生なら生きる意味がないものね。  時間が巻き戻ったブランシュのやり直しの物語。 ブランシュが幸せになるように導くのは娘と息子。  この物語は息子の視点とブランシュの視点が交差します。  おかしなところがあるかもしれませんが、独自の世界の物語なのでおおらかに見守っていただけるとうれしいです。  ご都合主義の緩いお話です。  よろしくお願いします。

《完結》恋に落ちる瞬間〜私が婚約を解消するまで〜

本見りん
恋愛
───恋に落ちる瞬間を、見てしまった。 アルペンハイム公爵令嬢ツツェーリアは、目の前で婚約者であるアルベルト王子が恋に落ちた事に気付いてしまった。 ツツェーリアがそれに気付いたのは、彼女自身も人に言えない恋をしていたから─── 「殿下。婚約解消いたしましょう!」 アルベルトにそう告げ動き出した2人だったが、王太子とその婚約者という立場ではそれは容易な事ではなくて……。 『平凡令嬢の婚活事情』の、公爵令嬢ツツェーリアのお話です。 途中、前作ヒロインのミランダも登場します。 『完結保証』『ハッピーエンド』です!

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん
恋愛
 魔法大国と呼ばれるレーベン王国。  家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。  ……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。  自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。  ……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。   『小説家になろう』様にも投稿しています。 『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』 でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...