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しおりを挟む『あの紙になんと書いてあったんだ?』
一悶着はあったものの、夜会自体は滞りなく行われました。
婚約を解消されたお嬢様の元にまだ婚約者のいないご子息たちが群がって参りましたが、私とアドルフで鉄壁のディフェンスを行いましたから無問題でございます。
夜もかなり更けた時間に帰ってきた私たちにアドルフが話しかけてきました。
『あぁ、あれ?あれには今までの殿下のやってきたことと、婚約解消しないなら慰謝料請求します。って書いた内容よ』
この作戦を立てたのはお嬢様
未来の王太子妃として教育を受けてきたお嬢様はあらゆる方面での知識が潤沢にあります。
婚約解消にしたのはアーベル皇太子殿下に何の憂いもなく嫁ぐために考えたこと。
クソ王太子殿下に非があるとはいえ、御令嬢が婚約破棄とは外見が悪いのが現在の風潮ですから致し方ないことです。
『なるほど。…流石俺らが使えるべき主人だな』
『当たり前でしょう。お嬢様ほど完璧なお方はいらっしゃらないわ』
『2人ともご苦労だった』
私たちは月明かりのみが入る部屋へとやってきました。
その部屋で佇むのは我らが主人のアーベル皇太子殿下
もちろん私の1番はお嬢様ですが、そのお嬢様の夫となる方ですので仕える価値はあります。
『私たちは何もしておりません。シェリルお嬢様が全て行いましたから』
『シェリルのあの堂々とした姿は本当に美しかった…。2人がしっかりと後ろについていてくれたおかげだ』
感謝するよ。と人の良い笑顔を浮かべるアーベル皇太子殿下に頭を下げます。
こう言ったところがお嬢様のお好きな一部なのでしょうね。
『さて、無事に婚約解消もできたし、こちらも手続きをするか』
パラパラと机の上に並べられた書類に目を通すアーベル皇太子殿下の口元は綺麗に弧を描いております。
『……アーベル皇太子殿下、あの2人は』
『メアリー!』
『構わないよアドルフ。君たちも当事者だから知る必要がある』
書類からゆっくりと顔を上げるアーベル皇太子殿下は私に視線を向けます。
熱のない冷え切った視線に少したじろいでしまいます。
『あの出来損ないの2人は廃嫡と貴族籍の除籍。それから、キュリティ辺境伯から人手不足の手紙が届いてる』
突然の話の代わりように私は首を傾げてしまいます。
なぜこのタイミングで辺境伯からの手紙のことを?
アルストローム帝国のキュリティ辺境伯といえば蛮族との交戦が絶えない激戦の土地だと言われておりますが……
『ゴミでも資源は有効に活用しなきゃね』
きっと他の人が見れば私たちの顔は悪役でしょう。
ですが、それが何だというのでしょう。
我らが使えるべきお嬢様が幸せであればそれで良いのですから。
ーーー
恐ろしいほどに晴れたその日
私が心の底からお仕えするお嬢様はアーベル皇太子殿下と婚姻を結びました。
お嬢様がアルストローム帝国の皇太子妃となったタイミングで旦那様と奥様はアルストローム帝国に移住してまいりました。
ブリジット侯爵家は旦那様の弟君が後を継がれました。
奥様の生家に戻り、公爵家の持つ一つの伯爵位を継がれる予定です。
『メアリー。私とても幸せよ』
純白なウェディングドレスを見に纏ったお嬢様が私にそう言います。
『私も、お嬢様にお仕えできて幸せの限りでございます』
あぁ、今日もお嬢様が愛らしいです。
fin.
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