上 下
12 / 12

12

しおりを挟む



「それじゃあ行こうか」


「ええ、アスター」


今日は私の成婚式だ



ロベリアと和解したあの日から私は人生で一番楽しい時間を過ごすことができた
もちろん裸足で草の上を走り回ったり、大きな声で笑ったりなど、母からは苦言を呈されたが珍しく私には関わってこなかった父が仲介に入って成婚式まで残り期限付きではあるがロベリアとショッピングをしたりなど初めてだらけの経験ができた


エルムに関しては1日に何度も私とロベリアのところにやってきたがその都度面会を断り完全にシャットアウトさせてもらった


いくら私とロベリアの和解の立役者とはいえ、ロベリアからの願いを婚前交渉を縦にしたのは私の中では厳重に抗議させてもらった


苦笑いをするロベリアとバツが悪そうな顔をするエルムをみてクスリと笑ってしまったのは私だけの秘密だ



「ロベリア嬢と仲直りができてよかったね」


「ええ。おかげさまで楽しい時間が過ごせたわ」


王太子妃に相応しい伝統的なウェディングドレスと長い長いベールを被り大聖堂の回廊を王太子であるアスターとゆっくり歩く


ニコニコとしている私を優しい笑顔で見つめるアスターは私とロベリアの確執を昔から心配してくれていた1人だ


「今までの君も素敵だったけど…今はもっと素敵になったね。」


「ふふっありがとう。私も昔の私より今の私の方が好きだわ」


あの2人には感謝だわ。と呟き真っ直ぐと前を見つめる


アスターが先に入場して私は後から父と入場する手筈になっている
母とロベリア、エルムは先に親族席に座っている頃だろう


「「それじゃあ、また後で」」


アスターの腕から目の前にいる父の手に自分の手を添える


にこりとと笑ったエスターが豪奢な扉の前にたちファンファーレと共に大聖堂の中に入っていく



(「ドキドキするわ」)


隣にいる父は緊張しているのか口を真一文字に結び前をずっと見つめている


私自身も緊張しているからか、父に習い前を見据えた



「………ありがとう。アマリリス」


「お父様…」



視線は前に向けたまま父がぽつりと呟く

ハッと父の方を見るとその目元はうるうるしていた


入婿で、母の影に隠れてひっそりと暮らしていた父
ロベリアを連れてきた時は少し軽蔑してしまった過去もあったが、それも今や懐かしい思い出だ


「幸せに、なりますわ」


聞こえるか聞こえないかほどの声で呟く


添えていた父の手がぎゅっと私の手を握りかえしてくる



心がほかほかと暖かく入場する前から涙が出てしまいそうになるが、化粧が崩れてはいけないと顔を引き締める



先程アスターが通った扉の前に立ち再度鳴り出したファンファーレを合図に私と父は一歩を歩き出した




ーーー





「ご成婚おめでとうございます。」


「妃殿下!ありがとうございます」


成婚式が終わり今は王城内にあるホールで披露宴の最中だ

主役としてアスターと一段高く積まれた椅子の上に座り、祝辞の言葉を述べる貴族達に礼を伝える


披露宴の中頃でエクルストン大公夫妻が挨拶にやってきた


「ロベリア様との和解できてよかったですわ」

「その節は大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません…こちらが私の妹のロベリアです」

「アイリス妃殿下にお目にかかります。ロベリア・フロックスでございます。姉がいつもお世話になっております」


「はじめましてロベリア様。アイリス・エクルストンですわ。これから仲良くしていただければ嬉しいですわ」


社交会で1番の人気を誇る妃殿下に仲良くして欲しい、といわれロベリアは顔を紅潮させ喜びの笑みを浮かべる


妃殿下と仲良くなったことでロベリアを私生児だと侮る人はいなくなるだろう


その事実にホッとして私は握手をしている2人を微笑ましく見つめた





ーーー





私の成婚式が終わったその3ヶ月後にエルムとロベリアの結婚式が行われた



ロータス侯爵家で華やかに行われた結婚式に私はロベリアのブライズメイド として出席した

王太子妃にブライズメイド をさせるなんて!とロベリアは焦っていたが私がしたいの!と押し切り今日を迎えている


幸せそうに笑うとロベリアと満更でもなさそうなエルムの姿を見て自然と笑みが浮かぶ



「色々とあったけれど終わりよければ全てよし、ね」










fin.







ご愛読ありがとうございます。
なんだかまとまりも悪く、最後も無理くり終わらせてしまった感があり、私にとっても少し不完全燃焼な作品になってしまった気がします。
次回は納得がいく作品を書けるように頑張っていきたいと思います。



              Ruhuna


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢のざまぁはもう古い

蘧饗礪
ファンタジー
 「悪役令嬢に転生したけどこのゲームなんて何十回もやってるからよゆーよゆー。ヒロインをざまぁして、私が幸せになってやる」 なんて、思っている悪役令嬢さん。まさか転生したのがあなただけだなんて思っていませんよね? ヒロインだって現実をしっかり見ています!

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

【完結】 元魔王な兄と勇者な妹 (多視点オムニバス短編)

津籠睦月
ファンタジー
<あらすじ> 世界を救った元勇者を父、元賢者を母として育った少年は、魔法のコントロールがド下手な「ちょっと残念な子」と見なされながらも、最愛の妹とともに平穏な日々を送っていた。 しかしある日、魔王の片腕を名乗るコウモリが現れ、真実を告げる。 勇者たちは魔王を倒してはおらず、禁断の魔法で赤ん坊に戻しただけなのだと。そして彼こそが、その魔王なのだと…。 <小説の仕様> ひとつのファンタジー世界を、1話ごとに、別々のキャラの視点で語る一人称オムニバスです(プロローグ(0.)のみ三人称)。 短編のため、大がかりな結末はありません。あるのは伏線回収のみ。 R15は、(直接表現や詳細な描写はありませんが)そういうシーンがあるため(←父母世代の話のみ)。 全体的に「ほのぼの(?)」ですが(ハードな展開はありません)、「誰の視点か」によりシリアス色が濃かったりコメディ色が濃かったり、雰囲気がだいぶ違います(父母世代は基本シリアス、子ども世代&猫はコメディ色強め)。 プロローグ含め全6話で完結です。 各話タイトルで誰の視点なのかを表しています。ラインナップは以下の通りです。 0.そして勇者は父になる(シリアス) 1.元魔王な兄(コメディ寄り) 2.元勇者な父(シリアス寄り) 3.元賢者な母(シリアス…?) 4.元魔王の片腕な飼い猫(コメディ寄り) 5.勇者な妹(兄への愛のみ)

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

処理中です...