ハプスブルク家の姉妹

Ruhuna

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最期

4.

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「女王陛下。準備が整いました」
「ええ。今行くわ」



今日は私の戴冠式だ






私は今日この日をもってこの国
初の女王となる

侍女長に連れられ長い王城の回廊を進む


「ルフィーナ」
「おば様」
「今日の良き日に立ち会えたこと心よりお喜び申し上げます」
「まあ…そんな堅苦しい挨拶なんて」
「いいえ。この国を背負って立つお方に無礼はできませんわ」


回廊の途中でスッとでてきたおば様もとい元王妃は私の前で恭しく傅いた


ここまで話していて不思議に思うだろうが私が女王になるまでの話を振り返りたいと思う






ーーーー







「あははははははは!!本当にきたわ!なんて馬鹿な妹なの!!」


私はあの日、本来であれば処刑されるはずだった
はずだったというのは私の代わりに処刑されたのが妹になったからだ


というのも直前までは私が斬首台の上に乗っていたし斧を振り上げた時には死を覚悟していた


そして斧が振り下げられる瞬間に私の真上に飛び込んできたのは妹だった


振り下ろされた斧は止まらずそのまま妹の首を胴体とすっぱり切り分けてしまった


ごとん、と落ちた妹の首を持ち私はこみ上げる笑いを抑えられなかった


一拍遅れて我に戻ったエルナンドが走ってきたときには私は血塗れで妹はピクリとも動いていない状況だった


「ソルティナ…!!!なぜ?!……ルフィーナどういうことだ?!」
「まあまあまあまあ!!私は何もしておりませんわ!勝手に飛び出してきたのはソルティナですもの!」


笑い続ける私に少し怖気ついたのかエルナンドは1.2歩下がった
私はソルティナの首を胸元に抱えて立ち上がりエルナンドに近づいた


「ち、ちかづくなぁ!」
「なぜ?貴方の大好きなソルティナの顔じゃありませんか」

私は首を傾げながら1歩、1歩とエルナンドに近づいた
それに合わせてエルナンドも後方に1歩、1歩と下がっていった


「殿下。良いことを教えましょう。ソルティナは【ミュンヒハウゼン症候群】だったのです」
「ミュンヒハウゼン症候群…?」


私は懇切丁寧にミュンヒハウゼン症候群について殿下に教えた

「それがソルティナとなんの関係があるんだ…?」
「ソルティナは世界の中心にいないと気が済まなかったんです。私はそれを利用したの。
ソルティナに話したのです、私は今日国内で一番人々の視線を浴びる。とね」
「そんなのことでソルティナは動いたというのか?!」
「これが何よりの証拠ですわ」


ソルティナの首をエルナンドに差し出す
ヒィと小さい声で悲鳴を上げたエルナンドをみてにこりと笑う


「よかったわね。ソルティナ。みーんなが貴女を見てるわよ」



ソルティナの顔が心なしかにこりと笑った気がした






ーーーー






あれから1か月後
目の前で愛する女性の生首を見たのがトラウマになったのかエルナンドは廃人となってしまった

とてもじゃないが王を継ぐ力がないと判断され離宮で療養という名の廃嫡となった
そして再度浮上した後継問題
もっともハプスブルク家の血が濃い存在は私を除いていなかったために王妃は私を王女としてこの国初の女王となることを提案した


もちろん反対も多かった
一度でも罪人となったものを王の後継に据えるのはどうかという反対はもっともだと私でも思った
だからこそ私はソルティナを暴行していなかったことを証明するために貴族たちの前でソルティナの遺体解剖を行った
遺体解剖を行った医師の見解は右足全てに付いている切り傷は刃の角度などから自傷行為であったことが判明
そして私は王妃教育でほぼ王城に滞在していたことを王妃様が証明してくれたことから私は冤罪であったこと証明された


とんとん拍子に私は王女となり帝王学を学び、今日晴れやかな天気のもと私は戴冠式を迎える


あぁ、実の父と母はソルティナを供養する名目で田舎に引き下がらせたので私の足枷になるものがいないのは清々しかった




ファンファーレが流れる王城のバルコニーに出て眼下に集まる観衆たちへ手を振る








「私の勝ちね、ソルティナ」





貴女の負けよ








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