ハプスブルク家の姉妹

Ruhuna

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病弱な妹

2.

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(次はあれが欲しい)



屋敷の応接室にいたのはお姉さまとお姉さまの婚約者で私たちの従兄弟にあたるエルナンド様だ
エルナンド様はいつだってわたしのお願いを聞いてくれた
いつもいつも、「仕方がないなあ」と言ってわたしの頭を撫でるエルナンド様は優しい


お姉さまの婚約者だから「欲しい」ってお願いすればもらえるのかな?
わたしは積極的にエルナンド様に話しかけるようになった


「今日も可愛いねソルティナ」
「ふふ。ありがとうございます」


エルナンドはきっとわたしのことが好きなのかもしれない
婚約者であるお姉さまとは挨拶をするのみであとはずっとわたしと話している


一度、お母様からエルナンド様と話してはいけないと言われたことがある


なんでも、エルナンド様は汚れた血が流れてるらしくて、お姉さまはその汚れた血を浄化するために婚約者となったらしい



お母様の話は難しくてわたしはよく内容を理解できなかった


昔からのわたしは覚えることが苦手でずっと同じコトをしているのが苦痛だった
優しい両親はそれを知ってか、わたしに勉強をしなくてもいいといってくれた


だから話すことはできるけどわたしは字を読むことができない


でもわたしは字が読めなくても生きていける


字が読めなくても人と話せれば大丈夫なのだから



お母様との話は難しかったけど一つだけ分かったことがある


エルナンド様には絶対にハプスブルク家の血が流れている人と結婚をしないといけないってこと


それならわたしでもいいんじゃないの?そう思ったわたしはお姉さまとエルナンド様に聞いた



「どうして私がエルナンド様の婚約者じゃないの?」
「どうしてって、それは私の父と義母が決めたことだから…」
「ハプスブルク家の血が必要なら私でも構わないのでしょ?なら、私でもいいじゃない」
「……ソルティナそれ以上は言ってはなりません。私と殿下の婚約は王家と我が家の取り決めなのだから」


あれ、おかしいな?
いつもならこのぐらいで、仕方ないわね。って言いながらくれるのに
どうして今日はそんなに意地悪をするの?
わたしはお姉さまのいつもと違う言葉に首を傾げた


ここ最近は体の調子もよくて長時間座ってられるから今日は長く話をしてみよう


「お母さまがいってたわ。エルナンド様は汚れた血が流れてるって。それを消すためにお姉さまと結婚するんでしょ?それなら私でもいいじゃない」
「ダメよソルティナ。貴女、体が弱いからとてもじゃないけど妊娠に耐えられないって言われてるのに」
「お姉さまばかりずるいわ。私は好きでこんな体に生まれたわけじゃないのに…」
「泣かないでソルティナ。そうだね、ハプスブルク家の血ならルフィーナでもソルティナでも変わりはないはずだ」
「で、殿下…?」


あまり物に執着しないお姉さまがエルナンド様に対しては渋っているのを感じてわたしは気づいた


(お姉さまの本当に大事なものはエルナンド様なのね!欲しい!絶対に欲しい!)


お姉さまが本当に大事にしているものを貰えたら絶対にそれはわたしにとっても大事なものになるはずだと確信した

それにお姉さまと違ってエルナンド様はどうやらお姉さまとの婚約には乗り気ではないみたいだ


「そうよね!お姉さまじゃなくても子供を産むなら私でもできるわ!それに私はエルナンド様を愛してるもの」
「本当かソルティナ!私も実は君のことが好きだったんだ」
「私たち相思相愛ね!」


エルナンド様のことは別に好きでもなんでもないけど優しいし、なによりお姉さまが大事にしている人だからきっとわたしも大事にしてくれるかもしれない


好き、とか愛してる、とか言えば男はイチコロだって使用人たちが話していたのを思い出して使ってみたけど効果はどうやらあったみたいだ
エルナンド様は蕩けるような瞳でわたしを見つめ、ギュッと抱きしめてきた



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