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健康な姉
3.
しおりを挟む私は妹のソルティナは体だけではなく心にも障害があると思っている
実の妹に対してそんなことを思うなんて、と思われては仕方ないが、私は妹の行う行為を性格のせいだけで片付けられるものではないと思っていたからだ
「お姉さま。それ頂戴」
「貰ってもいい?」
「なんでくれないの?私が欲しいのよ!」
「それ、お姉さまには似合わないわ。貰ってあげる」
そう言ってソルティナな私のものを欲しがった
髪飾り、ドレス、宝石、本…数えればキリがないほどにソルティナは私から奪っていった
そうして咎めたり、怒ったりすると
「私はお姉さまより体が弱いから…」
と言い訳して逃げるのが常だった
何度いっても改善されない妹の行為をそのうち私は心の病だと思うことにした
心身共に病弱な可哀想な妹
そう思って接してしまえば幾分か心は軽くなった
あぁ、可哀想な妹。私みたいに外に出ることも難しくて、私のものだけを欲しがる貴女はとても滑稽だわ
取られるたびにそう心の中で唱えれば目の前にいる妹の行いなど可愛いものにみえてくる
ーーーー
ソルティナがエルナンドと頻繁に会っていることは知っていた
体の弱いソルティナが屋敷を出ることは滅多にない
じゃあどう会っていたかって?
婚約者の私に会いにくる、その大義名分さえ掲げれば彼はいつだって我が家に出入りができるのだ
エルナンドは3日おきに我が家にやってきて、私と挨拶程度の会話をした後はすぐにソルティナを呼び長い時間をソルティナと過ごす
もちろん母にバレると面倒なので応接室に私が待機して二人は応接室から続くテラスで話をしている
婚約者が妹と戯れているのを横目に読書を始めるのがいつもの流れだ
だがいつも行われるルーティンが今日だけは違った
ここ最近ソルティナは体調も崩さず比較的健康である日が続いていたのだ
それがおそらく彼女の自信に繋がったのだろうと私は思う
「どうして私がエルナンド様の婚約者じゃないの?」
「どうしてって、それは私の父と義母が決めたことだから…」
「ハプスブルク家の血が必要なら私でも構わないのでしょ?なら、私でもいいじゃない」
「……ソルティナそれ以上は言ってはなりません。私と殿下の婚約は王家と我が家の取り決めなのだから」
また始まった
ソルティナのどうして?なんで?攻撃だ
ソルティナは病弱体質から令嬢が受けるべき教育は行われていない
いや、行えなかったが正しい
体調が悪くなるのはもちろんだが、堪え性のないソルティナはすぐに教育を嫌がった
妹を猫かわいがりしてる両親はすぐに妹の教育を諦めた
それの影響かソルティナは理解力にかなり乏しい
私と殿下の婚約が行われた理由でさえ理解していないのだ
「お母さまがいってたわ。エルナンド様は汚れた血が流れてるって。それを消すためにお姉さまと結婚するんでしょ?それなら私でもいいじゃない」
「ダメよソルティナ。貴女体が弱いからとてもじゃないけど妊娠に耐えられないって言われてるのに」
「お姉さまばかりずるいわ。私は好きでこんな体に生まれたわけじゃないのに…」
「泣かないでソルティナ。そうだね、ハプスブルク家の血ならルフィーナでもソルティナでも変わりはないはずだ」
「で、殿下…?」
私は殿下の言葉を疑った
私が殿下と婚約させられた理由は殿下も知ってるはずだ
それなのに今の言葉はなんなのだろうか
まるで私とソルティナを入れ替えようと聞こえたのは私の間違い?
「そうよね!お姉さまじゃなくても子供を産むなら私でもできるわ!それに私はエルナンド様を愛してるもの」
「本当かソルティナ!私も実は君のことが好きだったんだ」
「私たち相思相愛ね!」
ひしっと抱き合う二人を私はどこか冷めた目で見つめていた
なんだこの茶番は
私は冷静になって考えた
いくらソルティナが王太子の婚約者になりたいと我儘をいってもきっと母が許さないだろう
そして仮にも7年間、王太子妃、ゆくゆくは王妃になるために学んできた私を王家がそう簡単に見捨てるはずがないだろうと、私はそう思った
その期待が簡単に破られるとはこの時の私は知る由もなかった
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