ハプスブルク家の姉妹

Ruhuna

文字の大きさ
上 下
2 / 13
健康な姉

2.

しおりを挟む




私が生まれたハプスブルク家の歴史は長い
王朝を興してからはそれほどたってはいないが家名自体は昔から存在している


【ハプスブルク家は神に選ばれし尊き血筋、下賤の者とはあい交えてはならない】



王朝が出来てから繰り返されていた近親婚はその理念のもとに行われていた
青き血を絶やしてはならない、そう私も幼き頃から習ってきた


父と母もその理念のもとに従兄弟同士で結婚している
母は国王の妹であり、父は王妃の兄である
つまり兄妹2人して従兄弟と結婚していた
その弊害なのか、国王と王妃の間に生まれた子は大抵が1歳未満で亡くなっている
唯一1歳を超えた子ですら4歳で亡くなっている
度重なる我が子の死に傷ついた王は国内のある貴族の娘をそばに置くようになった
その娘が懐妊するのにはそう時間はかからなかった



そうして生まれたのがエルナンド・フィリペ・デ・ハプスブルク
私の婚約者だ


王妃との間に子がいない王はエルナンドを王太子とした
半分でもハプスブルクの血が流れているのが救いだ、と父が言っていたのを覚えている
そしてこの時は母と王妃の仲はよかったと思う
王妃は頻繁に我が家に遊びに来ていたし、私もよく遊んでもらっていた



仲が悪くなったのはエルナンドの婚約者を私かソルティナのどちらかにすると話題が上がったときだ


ハプスブルクの血が半分しか流れていないエルナンドを母は大層嫌っていた
ソルティナはもちろんのこと、さすがの私でもエルナンドの婚約者にするのは渋っていたらしい
だがそこで王妃が圧力をかけてきたのだ



王妃は母と仲が良いと思っていたが心根は母のことを嫌っていたそうだ
女ではあるが子を2人も無事に生んでいる母のことを王妃が嫌うのも致し方のない事だろう
母も母でプライドが高い故に子を無事に産めていない王妃をどこか見下していたのかもしれない


そうして王と王妃からの命によってエルナンドの婚約者は私に決まった
ソルティナを溺愛している母がソルティナを差し出すわけがないのはわかり切っていたことだったので私は特に反抗もせず頷いた


初めてエルナンドに会ったときはその元気さに驚いた
健康を自負している私ではあるがそれはハプスブルク家内に限ってのことだ
外に出てしまえば私も虚弱体質であることは理解していた
だからこそ庭を走り回るエルナンドの姿はとても新鮮だった
ハプスブルク家の集まりはいつだって室内で静やかに行われていたから




「貴女の青い血でエルナンドの汚れた血を浄化してあげるのよ」


王妃が私に言い続けた言葉だった
幾度となく続いた死産で王妃の体は子が望めない体になっていた
そのために王妃はエルナンドを養子として育て上げていたがそれは純粋な気持ちではなかったのかもしれない
私の体に流れるハプスブルクの血で次代に生まれる子をあるべき姿に戻して欲しいと何度も懇願された





この話をしたことでハプスブルク家の異常さは理解してもらえただろうか
繰り返された近親婚で出生率は下がり、乳幼児死亡率は上がっている
それでも近親婚を辞めないのは青い血を守るためなのか、何なのか
私自身も健康ではあるが何かしらの異常は持っているのかもしれない


「寒い」



日が沈みかけ気温が下がってきた
風邪をひいてはいけないと、自室に戻った



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ええ。私もあなたの事が嫌いです。 それではさようなら。

月華
ファンタジー
皆さんはじめまして。月華です。はじめてなので至らない点もありますが良い点も悪い点も教えてくだされば光栄です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「エレンベール・オーラリー!貴様との婚約を破棄する!」…皆さんこんにちは。オーラリー公爵令嬢のエレンベールです。今日は王立学園の卒業パーティーなのですが、ここロンド王国の第二王子のラスク王子殿下が見たこともない女の人をエスコートしてパーティー会場に来られたらこんな事になりました。

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

完)まあ!これが噂の婚約破棄ですのね!

オリハルコン陸
ファンタジー
王子が公衆の面前で婚約破棄をしました。しかし、その場に居合わせた他国の皇女に主導権を奪われてしまいました。 さあ、どうなる?

【短編】国王陛下は王子のフリを見て我がフリを反省した

宇水涼麻
ファンタジー
国王は、悪い噂のある息子たちを謁見の間に呼び出した。そして、目の前で繰り広げられているバカップルぶりに、自分の過去を思い出していた。 国王は自分の過去を反省しながら、息子たちへ対応していく。 N番煎じの婚約破棄希望話です。

思わず呆れる婚約破棄

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。 だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。 余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。 ……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。 よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。

婚約破棄していただきます

章槻雅希
ファンタジー
貴族たちの通う王立学院の模擬夜会(授業の一環)で第二王子ザームエルは婚約破棄を宣言する。それを婚約者であるトルデリーゼは嬉々として受け入れた。10年に及ぶ一族の計画が実を結んだのだ。 『小説家になろう』・『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

愛想の無い姉と婚約破棄して可憐な妹と婚約したいとのことですがあなたみたいなアンポンタン姉妹揃ってお断りです

ハツカ
ファンタジー
姉との婚約を破棄して、妹と婚約したいですって? 私達は姉妹揃って、あなたのこと嫌いなんだけど?

処理中です...