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健康な姉
2.
しおりを挟む私が生まれたハプスブルク家の歴史は長い
王朝を興してからはそれほどたってはいないが家名自体は昔から存在している
【ハプスブルク家は神に選ばれし尊き血筋、下賤の者とはあい交えてはならない】
王朝が出来てから繰り返されていた近親婚はその理念のもとに行われていた
青き血を絶やしてはならない、そう私も幼き頃から習ってきた
父と母もその理念のもとに従兄弟同士で結婚している
母は国王の妹であり、父は王妃の兄である
つまり兄妹2人して従兄弟と結婚していた
その弊害なのか、国王と王妃の間に生まれた子は大抵が1歳未満で亡くなっている
唯一1歳を超えた子ですら4歳で亡くなっている
度重なる我が子の死に傷ついた王は国内のある貴族の娘をそばに置くようになった
その娘が懐妊するのにはそう時間はかからなかった
そうして生まれたのがエルナンド・フィリペ・デ・ハプスブルク
私の婚約者だ
王妃との間に子がいない王はエルナンドを王太子とした
半分でもハプスブルクの血が流れているのが救いだ、と父が言っていたのを覚えている
そしてこの時は母と王妃の仲はよかったと思う
王妃は頻繁に我が家に遊びに来ていたし、私もよく遊んでもらっていた
仲が悪くなったのはエルナンドの婚約者を私かソルティナのどちらかにすると話題が上がったときだ
ハプスブルクの血が半分しか流れていないエルナンドを母は大層嫌っていた
ソルティナはもちろんのこと、さすがの私でもエルナンドの婚約者にするのは渋っていたらしい
だがそこで王妃が圧力をかけてきたのだ
王妃は母と仲が良いと思っていたが心根は母のことを嫌っていたそうだ
女ではあるが子を2人も無事に生んでいる母のことを王妃が嫌うのも致し方のない事だろう
母も母でプライドが高い故に子を無事に産めていない王妃をどこか見下していたのかもしれない
そうして王と王妃からの命によってエルナンドの婚約者は私に決まった
ソルティナを溺愛している母がソルティナを差し出すわけがないのはわかり切っていたことだったので私は特に反抗もせず頷いた
初めてエルナンドに会ったときはその元気さに驚いた
健康を自負している私ではあるがそれはハプスブルク家内に限ってのことだ
外に出てしまえば私も虚弱体質であることは理解していた
だからこそ庭を走り回るエルナンドの姿はとても新鮮だった
ハプスブルク家の集まりはいつだって室内で静やかに行われていたから
「貴女の青い血でエルナンドの汚れた血を浄化してあげるのよ」
王妃が私に言い続けた言葉だった
幾度となく続いた死産で王妃の体は子が望めない体になっていた
そのために王妃はエルナンドを養子として育て上げていたがそれは純粋な気持ちではなかったのかもしれない
私の体に流れるハプスブルクの血で次代に生まれる子をあるべき姿に戻して欲しいと何度も懇願された
この話をしたことでハプスブルク家の異常さは理解してもらえただろうか
繰り返された近親婚で出生率は下がり、乳幼児死亡率は上がっている
それでも近親婚を辞めないのは青い血を守るためなのか、何なのか
私自身も健康ではあるが何かしらの異常は持っているのかもしれない
「寒い」
日が沈みかけ気温が下がってきた
風邪をひいてはいけないと、自室に戻った
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