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「……アイラごめんね」

「大丈夫ですよ」


に押し倒されてから3時間後
時計は午後8時半を指している

準備されていた食事は冷めてしまって今は厨房で再度温めてもらっているところだ


せっかくたっぷりと寝て回復した私の体力はまた0に戻っている
私のライフポイントを0にしたアレクをキッと睨みつける


が悪いんだよ。昨日の夜あんなに「アレク」って呼ぶように言ったのに「アレックスさん」なんて呼ぶから」

「だ、だって!覚えてなかったんです…」

「覚えてないなら教えてあげよう。フィーにアレクと呼んで。って伝えたら泣きながらうん。って言って、私がフィーって呼んだら中がきゅんっ「やめてください!!」…すごく可愛かったよ」


恍惚とした表情で話す彼と顔を真っ赤にしている私
温め直されたディナーが並べられた
私はアレクからの視線に気づかないフリをして黙々とディナーを胃に収めていった




ーー




「え、うそっ。するんですか?!」

「するよ?」

「だってさっきしたじゃないですか…!」

「あの程度じゃ足りない」


ホテルのディナーを食べた私たちは遅い時間になっていたがホテルから車で20分ほど離れたアレクのデナム国用の邸宅へと向かった


私の部屋だと案内された部屋は貴族の邸宅に置かれている物よりも一級品の家具たちと最先端のドレスが並べられていた


その光景に驚きつつも、私はそそくさと寝室へと足を向けた


私の自室よりやや広めの部屋の真ん中にはキングサイズのベッドがどーんと置かれていた


嫌な予感がする、そう思った私は踵を返して自分の部屋の扉に急いで向かおうとしたがタイミング悪く反対のドアからガチャリとアレクが入室してきた


「フィー。おいで」


「……はい」


そして冒頭のやりとりへと繋がった
体格だけではなく、年齢的にも何枚も上手な彼に私が勝てるはずが無く、あっという間に生まれた姿に剥かれてしまった









「またお昼」



最初の夜と同じく、いやそれ以上に濃密な夜を過ごした私が起きたのはまたもやお昼だった



チリリンとベルを鳴らせば変わらずアイラが部屋へとやってくる



昨日よりは幾分かマシな体力を振り絞り、室内ドレスへと着替える
今日はこの邸宅で働く使用人たちに挨拶をしたかったのだ







「この邸宅広いのね」


邸宅にいる使用人のみんなに挨拶をし、アイラが案内人となって邸宅の中をゆっくりと見学していた


貴族の屋敷といっても差し支えないほど広い邸宅に私は驚きっぱなしだった


(「もの見事に私が好きな色なのよね…」)


私が好きな色は落ち着いたクリーム色
クリーム色のレースがひらりと風に揺れている

廊下に敷き詰められたラグもクリーム色で統一されていた


「支社なのにこんなに広い邸宅だから帝国の方の本社はもっと広いのかな?」

「そうですね…ですが同じぐらいだとは思います。帝国の方の邸宅には大奥様が住んでらっしゃいます」


「同じ…?」

「はい。詳しいことは今日の夜旦那様に聞いてみたら良いと思います」


折角の夫婦時間ですからね。とニコリとアイラが笑った

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