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しおりを挟む「アレはどこにあるの?」
「ピアスはこれよね?」
「ちょっとそれどかしておいて」
「ドレスの準備よし!」
「…………」
夢でも見ているのだろうか
アレックスさん(本人からはアレクと呼んで欲しいと言われたが無理)からの熱烈?な愛の告白をされた私は遠のいた意識の中結婚について熱く語るアレックスさんに言いくるめられ、気づいたら婚姻届にサインをしていた
アレックスさんの推しに負けてしまった
乗ってきた自動車で実家まで送ってもらった私の意識がはっきりしたのは自室の椅子に座った時だった
時すでに遅し。
まさにこの言葉の通り、私が声を上げる前に全てのことが終わっていた
「お嬢様?」
そんな回想に浸りながらぼんやりと動き回るメイド達(アレックスさんが手配)はあの日から我が家で私付きのメイドとして働いてくれている
そして2週間経った今日
結婚式を挙げるため朝4時に起こされてドレスアップの準備をされている
ぼんやりとする私をよそにメイド達は慌ただしく動き回っている
そのうちの1人、アイラが私に声をかけてきた
彼女は私の2つ年上でこの2週間で1番仲良くなったメイドだった
「ドレスがすごいなって思ってたの」
「そうですよね!こんな素敵なドレスを準備できるなんてさすが旦那様ですね!」
部屋の中央に準備されているプリンセスラインの真っ白なウェディングドレス
スカート部分にはチュールやレースを幾重に重ねてふんわりと品よくボリュームを持たせている
デコルテはハートカットになっておりそこから腰にかけては繊細な刺繍が施されている
一目で一級品だとわかるそのドレスはアレックスさんが準備して持ってきたものだ
そのこと自体に異論はない
ただ、このドレスのデザインが、1年前に兄嫁である義姉と「こんなドレス作りたいよね~」という妄想話で私がパーツを選んで書いたあのドレスと全く同じのドレスなのだ
なぜ、なぜ?!
その一言に尽きる
アイラはドレスを見てうっとりとしている
私はなんだか背中がゾワゾワしてしまう
「さて、着替えましょう!」
4人のメイドのうち1番年上の1人がパンパンと手を叩いた
メイド4人がかりで着付けられたドレスは見た目に反して思ったよりは軽く、動きやすかった
くるりと回るとふわりとチュールとレースが揺れるのをみて私は心の中でドキドキしていた
なぜ、このドレスが作られたかは不明だが着たかったドレスを着れるのは純粋に嬉しいからだ
「お嬢様。こちらに座ってまっすぐ鏡を見てくださいね」
メイドの1人に促されて鏡台の前に座る
そこから1時間みっちりとメイクをされて出来上がった頃には達成感に満ち溢れたメイド達とげっそりした私がいた
ーー
「入ってもいいかな?」
「はい!」
全ての準備が終わった私の元にやってきたアレックスさんは律儀に入室のお伺いを立てた
快く返事する私の声が聞こえたのかガチャリと開かれたドアから黒のタキシードに身を包んだアレックスさんが入ってきた
「「………可愛い/かっこいい」」
「よく似合ってるよフィオナ」
「ありがとうございます。アレックスさんも素敵です」
お互いがお互いを照れながら褒め合う
ゆっくりと近づいてきたアレックスさんを見上げればその顔は嬉しそうに微笑んでいた
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