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第1章_出会い
02:元アサシンは暗く笑う
しおりを挟むそれは確かに、黒く大きい'何か'だった。
見た目は熊や虎、獅子をごちゃ混ぜにしたような体躯で、色は漆黒…いや闇を纏っているかのようだ。
怨み、妬み、怒りなど、負の感情をひとかたまりにしたような、身体の芯から冷えていく気配を漂わせている。
何故だかゆっくりとした動きでこちらに近づいてくる。
まだ少し距離はあるがすぐここに来てしまうだろう。
ふと、声が聞こえる方を向けば、小さな女の子が、くろいのコワイと言いながら震えていた。
このままでは、この子が危ないな。どうやら飛べるようだし、早くあいつから遠ざけないと。
「キミ、飛べるなら早くここから逃げなさい。」
[で、でも、でも!]
「私は大丈夫だから、早く行きなさい。」
[っう、わ、わかった!]
女の子は不安そうな顔をしつつふよふよと大樹の方へ飛んでいった。
その時嫌な予感がして黒いやつの方を向くと、そいつの虚のように落ち窪んだ目と視線が絡む。
ニヤリと笑った様に見えた瞬間、そいつは女の子に視線をやり、これまでのゆっくりとした動きが嘘の様に走り出した。
これでは女の子は黒いやつに追いつかれるだろうと判断し、まだ側にいた女の子にごめんと一言いってから片手に掴むと、勢いをつけて大樹のある方向にぶん投げた。
女の子はきゃーと叫びつつも、大樹の近くで体制を立て直していた。
それを見届けてホッとして直ぐ、腹に激痛が走った。
投げる時に身体を捻った所為で傷口が大きく開いてしまったのだ。
せっかく血が止まりかけていたのに、新たな鮮血がシャツを一層赤黒く染めていく。
黒いやつはそれを嘲笑うかの様に顔をニヤつかせながら目の前まで迫ってきていた。
動物であれば構造上笑えないはずなのだが、黒いやつは動物では無いのだろうか。…
そんな事をどこか冷静な頭で考えつつ、何故か黒いやつに既視感を感じていた。
黒いやつとの距離があと数メートルに迫ったとき、そのニヤつきに愉悦と嘲笑を見た瞬間、既視感の正体に思い至った。…
それと同時に黒いやつの鉤爪が弧を描き、頭めがけて振り落とされた。
………
……
黒いやつは確かに女を切り裂いた感触に笑みを深めた。
だが、気がつくと目の前にいたはずの女がいない。
困惑しているといきなり背後から暗く重い圧を感じ振り返った。
その瞬間後ろ脚が動かず体制を崩し転倒した。
更に困惑が増し、立とうとしてからやっと気付いた。
後ろ脚が動かないのではなく、もう存在していないのだ。
黒いやつは憤怒にかられ、女の気配がする方を睨みつける。しかし、その表情は女を目にして直ぐ怯えに変わった。
女の黒い目は仄暗い炎の様な色に染まり、口元は嬉しそうに笑んでいた。
しかし、その身を包んでいる気配は、黒いやつよりもなお濃い闇を思わせる、重く冷たいものだった。
女は、黒いやつの怯えた目と視線が合うと、より笑みを深めるのだった。…
____
主人公、最後いきなり病んでるなー。
まあ、アサシンなんでね。
病んでる理由は後々に書くので。
※そして次ですが、も少し多めにグロ表現入るので、無理な方は読むのご遠慮下さい。
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