異世界探偵 柊朝嗣

いなお

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少女の依頼

出会い

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さて、これから書き綴るのは私と彼女の初めての依頼をここに記そうと思う。。
某探偵のように、主観的な語りより、第三者の目線で語った方がいいのだろうが、なかなか書き手になってみると第三者の立ち位置で物を書くというのはとても難しい。
なので初めのうちは私の語りやすいように語らせてもらうこととするのを先に謝罪させてほしい。
さて、私がこの異世界に来て早一年。
大変な時期もあったが今は安定の時期を迎えているといっても過言ではないだろう。
最初はそれはもう悲惨も悲惨だ。
朝、いつの模様に朝食を食べ、身支度をしてから日課である庭の花壇に水をやり終えた。
そして家の中にある手荷物を取りに戻ろうと玄関のドアを開けたら、そこには知らぬ洋風の建物がずらっと並んでいるではないか。
一旦外に出ようと、いや、元世界に戻ろうとと表現した方がいいだろうか。
とにかく、その場から離れようとした時、なんと扉が勢いよく閉じ、その勢いに私は洋風の建物が立ち並ぶほうへはじき出されてしまった。
すると玄関の扉はふっと消えた。
嘘ではない。
だんだんと扉が透明になっていき、ドアノブに触れようとしても空を切るのみだ。
持ち物はポケットに入っていた名刺入れと財布のみ。
扉が消え去ったあと呆然と立ち尽くしていたのは今でも覚えている。
そして元の世界に戻る努力をするわけでもなく、この世界に適応しようと今日まで過ごしてきた。無論生きていくためにはお金が必要だ。
だが私はこれまで探偵としてしか働いたことがないし、探偵としてしか働く気がない。
だから、この異世界でも私は探偵として働くことを選んだ。
そうして今日まで、様々な依頼を受けてきたが、これらの依頼については、また別の機会に紹介しよう。

さて、いつものように朝食にベーコンとパン、縁鳥の卵をスクランブルエッグにした物を紅茶とともに食べている。
ああ、縁鳥というのはこちらの世界で鶏のような鳥で、いつも縁側で生活している鳥だ。
なんでも縁のない場所にその鳥を放ってみるとストレスで死んでしまうという、なんとも繊細な生き物だ。

「さて、今日も一日頑張ろうか」

朝食を食べ終わり、身だしなみを整えて紅茶を啜りながら新聞を読む。
幸いなことに、この世界には新聞や本という概念があるのはとても助かる。
お陰でこの世界の情報が色々と耳に入ってくる。
これがロールプレイングゲームであるならば、自らの足で様々な地へ赴き、聞き込みで情報を集めていかなければならないだろう。
依頼の内容によってはそういう事をしなければならないのが探偵だが、毎日の情報にこのようなことをしていては、日々の依頼をこなす時間がなくなってしまう。
なのでインターネットがないこの世界では新聞こそ、情報が簡単に手に入るツールなのだ。

新聞を読み終える頃に、呼び鈴が鳴らされた。
新聞をぱさりと閉じて折りたたみ、玄関へ向かう。
扉を開けるとそこには齢15、6歳の少女がいた。
藍色の髪をツインテールにしていて、背は私の胸あたりだから160センチくらいだろう。

「ようこそ、お待ちしていましたよ。あなたがシェリアさん?」
「は、はい、シェリア・エンストスと申します」
「どうぞ中へ」

少女は少し緊張気味で事務所の中に入っていく。
はずかしいことに、あたりには乱雑に置かれた本や資料が積み重なっていて、物がごちゃごちゃとしている。
私もなんとか整頓をしたいと思ってはいるのだが、思うように片付けられないのがなんとももどかしい。
しかし、似たような経験をしている人は私以外にもいるだろう。
あれもこれも整頓するよりは、後で使うからと、床に置いたり山積みにしたりとする人が。
それはさておき、シェリアを応接室まで案内した後、私は紅茶を用意して彼女の前にそれを置いた。

「さて、ところで、君の依頼は私のような人間でも可能な依頼なのかい?」
「は、はい!もちろんです!アンジェリカさんからお話は伺っていますので!」

そもそもシェリアはこのアンジェリカという人物の紹介でここへ来た。
アンジェリカは以前私に依頼をして来た人物で街では商人をしている。
ああ、そういえば書き忘れていたのだがアンジェリカは獣人だ。
この異世界には人間以外の種族がわんさかいる。
獣人はそのうちに一つに過ぎない。

「では、依頼を聞かせて頂こうか?」

後になって私は気がつく。
この出会いが私の運命を大きく変えたターニングポイントであったと。

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