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最終章 我が祖国よ永遠に……
後日談 100年後
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ザザーッ
ザザーッ
波の音を聞きながら岩礁に座ったリーラが釣りをする。
リーラはニヤリと笑い竿を引くと大きな魚を釣り上げた。
「よし、釣れた!」
「先生ーッ!」
「なんだぁー」
「また、釣りしてるの?ヨハンさんの奥さんのお産が始まったよ!」
「はい、はい、行きますよ、
魚を診療所に持って帰っておくれ」
魚を子供に渡すと診療鞄を抱え、「よいしょ」と立ち上がる。
「先生っておばさんなのにきれいだよね」
「おばさんは余計だ!」
「知ってる?きれいなおばさんを美魔女って言うだって!」
「美…魔女…」
——歳を取らない私は魔女なんだろうな…
ビューン!
「あっ!飛行機だ!カッコイイ!」
空を見上げると飛行機がリーラと子供の頭上を通り過ぎて行く。
私が帝国を出てから100年の時が過ぎた。
この世界はアマーノ氏の貢献で格段と技術が発展し、運搬は馬から車、鉄道に変わり、今や空を飛ぶことができる飛行機まで開発された。
そして、帝国を守る人も騎士から兵士と名を変え、武器も剣からを銃へと変わったのだ。
帝国在住時は皇后、そして、夫クリストファー亡き後は女帝として帝国を治めていた。
子である皇太子が成長し、皇位を渡すと帝国を出ること決意する。
なぜ帝国を出たのか?
それはいつまでも歳を取らない私を周囲が訝しきがったのだ。
私は前魂の器達の記憶から歳を取ることが出来ない事実を知った。実際には人の姿をした精霊に過ぎず、人ならざる生き物なのだ。
全く歳を取らない私を見れば、周囲は私の姿を訝しき、帝国に身を置きずらくなった訳だ。
この身体についてわかったことがある。
精霊の力は自然界の力を吸収して自分の力へと変えていくのだ。
急速に進んだ、技術革新でこの世界にある自然は破壊され、最近になり力を吸収することが困難になり、我らの老化現象が進んだのだ。
——ようやく生を終えることができる…
100年以上生き続けた私はようやく訪れるであろう最期に安堵する。
我が子に関しては、人間の繁殖器官で産み落としたため、精霊ではなく人間として生まれている。私が持つ、僅かな精霊の加護力をを継承出来たかもしれないが、自然界から吸収出来ない今、加護力もないに等しいのだ。
我が子にこの真実を話し、帝国を出た後は精霊王の島に身を寄せ、100年の間、島でボソボソと診療所を営みながらこの世の情勢を見てきた。
孫の代になり、神託通り、帝国の名はノーザンランドからリヴァリオンへと改名される。元々この地はリヴァリオンのものだったという虚実を我が治世の間から刷り込み、長年有してきた私の功績だ。
この100年の間の変化と言えば、我が治世にローレンヌを離脱させた。
口煩いエステバンが執拗に離脱を懇願するので認めてやったのだ。
正直なところ、ローレンヌは技術革新の礎である地、ローレンヌを狙う隣国のアンデルク国といつも緊張関係にあるため、争いごとに巻き込まれたくなかったというのが本音だ。
その後、子や孫達がウィンターニア、リッチモンドを国として離脱させたようだ。
我が右腕だったレイチェル・コールディアに与えていたコールディア領は忠誠心からか孫の代に至るまで離脱を渋っていたが、ようやくコールディアも国として独立したのは最近の話だ。
私は先程釣った魚と酒を持って精霊王の元へ訪れる。長年連れ添われたヤディナ様は精霊王の力が衰えたためようやく人としての安らぎを得て永眠された。
あの美しい顔立ちの精霊王の姿も今はなく、人同様に老いた姿へと変わられた。
「おまえと共にできる日も今日で最後か…」
「そうですね…ヴェスタは洞穴ですか?」
「あぁ、もう歩く気力がないらしい」
「そうですか…」
私はぺぺにお願いして干し肉をヴェスタに持って行くように頼む。
「明日の朝にここを立ちます」
「わかった、元気でな」
「精霊王様も…」
先が長くないとわかると最後はこの地で迎えるのではなく、生まれ育ったリヴァリオンの地へ戻ることを決めた。
最後の戦い後、一度も戻ることが出来なかった故郷に帰りたくなったのだ。
故郷に戻る前に、愛する夫、友人達の墓参りをしながら変化した国々を周りながら……
◇◇◇
私は相棒のぺぺを肩に乗せ、島にある飛行場へと向かった。
「さぁ、行こう、ぺぺ!」
「最期まで付き合うピヨ…」
我々の最後の旅が始まる……
※※※
最後に作品を立ち上げるきっかけは飼っていた鳥を作品に登場させたい思いからでした。しかし、残念なことに行方不明になり未だ発見できない現状です。
この作品は完結しましたが、彼が作品だけではなく今も何処で生き、自由に羽ばたいていることを切に祈りたいです。
この作品に付き合い頂き誠にありがとうございました。
下記の文はぺぺへのメッセージとなります。
作品中に私情を挟み申し訳ありません。
大切な友よ、
この寒空の下、
君は何処にいるんだろう
君のことばかり考えている
君の温かさが忘れられないよ
辛すぎるから思うようにしたんだ
きっと君はこの作品に転生したんだ
だから君は必ず生きて、
今も自由に羽ばたいている
だから物語が終わったら帰ってこい
君の家はここにある
みんな待っているから……
ザザーッ
波の音を聞きながら岩礁に座ったリーラが釣りをする。
リーラはニヤリと笑い竿を引くと大きな魚を釣り上げた。
「よし、釣れた!」
「先生ーッ!」
「なんだぁー」
「また、釣りしてるの?ヨハンさんの奥さんのお産が始まったよ!」
「はい、はい、行きますよ、
魚を診療所に持って帰っておくれ」
魚を子供に渡すと診療鞄を抱え、「よいしょ」と立ち上がる。
「先生っておばさんなのにきれいだよね」
「おばさんは余計だ!」
「知ってる?きれいなおばさんを美魔女って言うだって!」
「美…魔女…」
——歳を取らない私は魔女なんだろうな…
ビューン!
「あっ!飛行機だ!カッコイイ!」
空を見上げると飛行機がリーラと子供の頭上を通り過ぎて行く。
私が帝国を出てから100年の時が過ぎた。
この世界はアマーノ氏の貢献で格段と技術が発展し、運搬は馬から車、鉄道に変わり、今や空を飛ぶことができる飛行機まで開発された。
そして、帝国を守る人も騎士から兵士と名を変え、武器も剣からを銃へと変わったのだ。
帝国在住時は皇后、そして、夫クリストファー亡き後は女帝として帝国を治めていた。
子である皇太子が成長し、皇位を渡すと帝国を出ること決意する。
なぜ帝国を出たのか?
それはいつまでも歳を取らない私を周囲が訝しきがったのだ。
私は前魂の器達の記憶から歳を取ることが出来ない事実を知った。実際には人の姿をした精霊に過ぎず、人ならざる生き物なのだ。
全く歳を取らない私を見れば、周囲は私の姿を訝しき、帝国に身を置きずらくなった訳だ。
この身体についてわかったことがある。
精霊の力は自然界の力を吸収して自分の力へと変えていくのだ。
急速に進んだ、技術革新でこの世界にある自然は破壊され、最近になり力を吸収することが困難になり、我らの老化現象が進んだのだ。
——ようやく生を終えることができる…
100年以上生き続けた私はようやく訪れるであろう最期に安堵する。
我が子に関しては、人間の繁殖器官で産み落としたため、精霊ではなく人間として生まれている。私が持つ、僅かな精霊の加護力をを継承出来たかもしれないが、自然界から吸収出来ない今、加護力もないに等しいのだ。
我が子にこの真実を話し、帝国を出た後は精霊王の島に身を寄せ、100年の間、島でボソボソと診療所を営みながらこの世の情勢を見てきた。
孫の代になり、神託通り、帝国の名はノーザンランドからリヴァリオンへと改名される。元々この地はリヴァリオンのものだったという虚実を我が治世の間から刷り込み、長年有してきた私の功績だ。
この100年の間の変化と言えば、我が治世にローレンヌを離脱させた。
口煩いエステバンが執拗に離脱を懇願するので認めてやったのだ。
正直なところ、ローレンヌは技術革新の礎である地、ローレンヌを狙う隣国のアンデルク国といつも緊張関係にあるため、争いごとに巻き込まれたくなかったというのが本音だ。
その後、子や孫達がウィンターニア、リッチモンドを国として離脱させたようだ。
我が右腕だったレイチェル・コールディアに与えていたコールディア領は忠誠心からか孫の代に至るまで離脱を渋っていたが、ようやくコールディアも国として独立したのは最近の話だ。
私は先程釣った魚と酒を持って精霊王の元へ訪れる。長年連れ添われたヤディナ様は精霊王の力が衰えたためようやく人としての安らぎを得て永眠された。
あの美しい顔立ちの精霊王の姿も今はなく、人同様に老いた姿へと変わられた。
「おまえと共にできる日も今日で最後か…」
「そうですね…ヴェスタは洞穴ですか?」
「あぁ、もう歩く気力がないらしい」
「そうですか…」
私はぺぺにお願いして干し肉をヴェスタに持って行くように頼む。
「明日の朝にここを立ちます」
「わかった、元気でな」
「精霊王様も…」
先が長くないとわかると最後はこの地で迎えるのではなく、生まれ育ったリヴァリオンの地へ戻ることを決めた。
最後の戦い後、一度も戻ることが出来なかった故郷に帰りたくなったのだ。
故郷に戻る前に、愛する夫、友人達の墓参りをしながら変化した国々を周りながら……
◇◇◇
私は相棒のぺぺを肩に乗せ、島にある飛行場へと向かった。
「さぁ、行こう、ぺぺ!」
「最期まで付き合うピヨ…」
我々の最後の旅が始まる……
※※※
最後に作品を立ち上げるきっかけは飼っていた鳥を作品に登場させたい思いからでした。しかし、残念なことに行方不明になり未だ発見できない現状です。
この作品は完結しましたが、彼が作品だけではなく今も何処で生き、自由に羽ばたいていることを切に祈りたいです。
この作品に付き合い頂き誠にありがとうございました。
下記の文はぺぺへのメッセージとなります。
作品中に私情を挟み申し訳ありません。
大切な友よ、
この寒空の下、
君は何処にいるんだろう
君のことばかり考えている
君の温かさが忘れられないよ
辛すぎるから思うようにしたんだ
きっと君はこの作品に転生したんだ
だから君は必ず生きて、
今も自由に羽ばたいている
だから物語が終わったら帰ってこい
君の家はここにある
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感想ありがとうございます。そうですね、恋愛要素にはやっと入ることが出来ました。リーラがどのように恋をしていくか……描いていけれたらと思います。