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最終章 我が祖国よ永遠に……
第17話 リヴァリオンに訪れる春
しおりを挟む帝国暦322年 春
ゾーンとの戦いが終わり、リヴァリオンは復興に向けてが動き出す。
勝利に貢献したノーザンランドはリヴァリオン国を領土獲得する。
皇帝はリヴァリオン国をリヴァリオン領として定め、第1番隊隊長ビル・リッチモンドにリヴァリオン伯爵の位を授け、リヴァリオン領主として治めるよう命ずる。
リヴァリオン領都は北の街ローフェスに移され、領都を見渡せるように領主の屋敷が建設中だ。殺戮のあった城は取り壊され、その跡地には犠牲になった者達の碑が建てられている。領民は一丸となり領の復興に力を注いでいるのだ。
「ごきげんよう、ハントン卿、キングストン卿」
騎士の詰所に簡素なドレスを身に纏ったリヴァリオン伯爵夫人ローズが現れた。
「おぉ、これは伯爵夫人」
黒色の帝国騎士服を身に纏ったダリル・ハントンがローズ・リヴァリオンに深々と礼を取る。
「お忙しいとはわかっているのですが、何名かの騎士をお借りできるかしら?各国からの救援物資を頂き、各街に届けて欲しいの」
「わかりました、若い者を何名が送ります」
「ありがとうございます」
「今日も孤児院ですか?ローズ様もあまりご無理なさいますな」
「ふふふ、ありがとう、大丈夫よ。無理のないように手伝っていますから。そうそう、ハントン卿も夜のお酒はほどほどになさいませ。お2人の飲みっぷりの良さは噂になっていますよ」
「なんと!噂とは?!」
と横にいたハルクがガハハハと笑う。
「では、また」
リヴァリオン伯爵夫人は微笑みながら詰所を後にする。
彼女は夫ともに戦後、リヴァリオン領へ戻り復興が必要な街や村に出向き、民のために尽くしている。民達への配慮を欠かさず行い、今では逃げたした王女ではなく、救世主である幼い聖女を守り抜き、そして育て上げた聖女の姉として民から慕われている。
夫のビル・リヴァリオンも領主だけではなく、外交大臣の任も任され国のために活躍している。
第6番隊副隊長であったダリル・ハントンはリヴァリオン騎士団へ移籍し、団長として領内の復興に力を注いでいる。ハルク・キングストンもダリルを手伝う為に国を訪れ、一年後には若い世代へとバトンを渡すつもりだ。
「誰か、伯爵邸に出向いてくれ」
「団長、俺が行きますよ」
「リヨン、頼んだ、若い奴も何人か連れて行ってくれ」
「了解ッ!」
リヨン・グリットは若い騎士達に声を掛けると伯爵の仮屋敷へ向かう。
彼の息子ロンが化け物に取り込まれ、最後は国を守るために化け物を抑え、亡くなった報告を受けると息子を失った悲しみから立ち直る時間を要したが、泣いてばかりでは命をかけて国を守った息子に顔向けできないと復帰を申し出たのだ。
リヨンはノーザンランドに貢献した功績からダリルの跡を継ぐ次期騎士団長として任命を受けており、責務を果たそうと日々頑張っている。
「ダリル、そろそろ切り上げるか?」
「そうだな、ハルク」
「団長達、飲みすぎないで下さいね、朝、迎えに行くのが大変なんだから」
詰所にいたサムがダリルとハルクに釘を刺す。
サム・バーリーはローレンヌ騎士団を退団した後、故郷のリヴァリオンに戻り、リヴァリオン騎士団に入団する。将来は父のような騎士団長になるが夢だ。兄が果たせなかった夢を代わりに果たそうと日々頑張っている。
「今日の仕事は終わりだとルディに伝えてくれ」
「了解です、騎士団長!」
ルディ・ロッテンハイムは第6番隊派遣隊員としてリヴァリオン国へ来ていた。彼は精霊の友を偲ぶために休憩の合間に湖に行き、オリーに話しかけているのだ。
「オリー、君が国を救ったおかげでリヴァリオンの復旧は大分進んだよ」
ルディは青々とした山々を見つめる。
——君は空の上から見守っているのかな…
「ルディさーん!隊長達が夕食を食べに行くから戻ってこいとおっしゃってまーす」
サムが走りながら呼びに来てくれたようだ。
「サム、いつもごめんね」
「いいえ、ルディさんもあの戦いで大切な方を失ったと聞きました」
「うん、きっと空の上から僕を見守ってくれていると思うんだ…」
空を眺めるルディの横でサムも父と兄を思い出しながら空を見上げた。
ひゅうっとリヴァリオンに暖かな風が吹く。春の訪れを喜び、湖の周りの花々の蕾が開き始めた。
リヴァリオンに春が来た…
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