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第12章 残酷な定められた天命

第3話 皇宮の庭での逢瀬 ※

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(R15展開あります、苦手な方は飛ばして下さいね)



 リーラは急ぎ足で黒獅子棟を出るとクリストファーから逃れる場を探そうとしていた。

 フォールドから戻ってから気恥ずかしく、必死にクリストファーから逃げていたのだ。帝都に戻ってからお互いの多忙をいいことに顔を合わせることがなく安心していたが、隊長会議で久しぶりに顔を合わせ、終始クリストファーの視線を鋭く感じていたのだ。

ーーだって、顔を合わせても
  何を話せばいいかわからないし、
  恥ずかしいし…

 リーラは6番隊の執務室に戻ることは断念すると時間潰しのために物資確認に医療院へ向かおうとする。

「待て」
とガシッとリーラの腕は呆気なく掴まれる。

「どこへ行こうとしているんだ」
その声の先を見上げるとクリストファーは不服そうにリーラを見下ろしていた。

「あーー、へい」
かと言葉を発する前にぶちゅと唇を奪われる。

「クリスだ」
いきなりのキス攻撃を受け、もう逃げれないと観念するリーラ。

「ク、クリス…いつのまに現れたんですか?」

「あぁ、窓から飛び降りて先回りしたんだ」

ーーチッ、先手を打たれていたか
心の内で舌打ちをする。

 クリストファーは両手をリーラの腰に回すとぐいっと引き寄せてリーラを抱き締めた。
「公務が多忙すぎて、リーラに全然会えなかった。リーラが足りない、どうしてリーラは私に会いに来てくれなかったのだ?」

「そ、それは…」

ーー会えば、またキスしてくるからです!
と心の中で訴えるリーラ。

「夜に何度もリーラの寝室に行こうと思ったが流石にダリル卿の手前出来なかったのだ」

「それでいいです。来ないで下さい!」

「では、私の寝室に来てくれるか?」
とクリストファーはリーラの耳元で囁く。

「無理です!」
リーラはわかっていた、とある人の夢のせいで男女が寝室に行けば、絶対キスだけは終わらないだろうと。

「では、どうすれば良い?」

「どうすればって?何もしなければ良いのです!我慢してください」
リーラはバシッとクリストファーに言い聞かせようとする。
 
 しかし、クリストファーは駄目だと首を振ると、
「我慢などできない。今からしっかりと愛情表現を示さねば」
とヒョイっとリーラを抱きかかえ、皇宮の庭園へと連れ去った。

「クリス、お仕事あるんでしょう?私はあるから離して下さい」
とクリストファーに必死に懇願する。

「安心しろ。休憩するとビルに伝えているから大丈夫だ、リーラは……残業すればいい」
クリストファーは意地悪そうに笑う。
「もうーーー!」

 クリストファーは庭園の奥にある大きな木にリーラを下ろすとクリストファーも横に座った。クリストファーはリーラを愛おしそうに見つめると腕をリーラの背中に回し、抱き寄せた。見つめ合うのも束の間、二人の唇はすぐに合わさっていた。
「ん、んっ」
 自然にクリストファーの舌が入り込み、リーラはあの夜のように受け入れ絡ませていた。

唇を離したクリストファーはうっとりとした表情になっているリーラに
「リーラから口付けをしてほしい」
と甘く囁く。

ーー私も出来るかしら?

 唇を合わせ、恐る恐る舌をクリストファーの口に潜入させていく。クリストファーの歯を舐め、舌を探していくとリーラの舌は吸いこれてしまう。
「うん、んんっ」

ーー熱い…
  私の身体はどうなってるの?
  あれだけ恥ずかしいかったのに
  すんなり受け入れ求めているのは
  なぜ?

 逞しく腕で抱かれ、クリストファーの温かさがリーラをまるで守ってもらっているように感じる。

ーークリス…
  好き…
  あなたのことが好き…

  あなたの呪いを解いてから
  あなたはいつも傍にいて
  私の成長を見てくれていた

  危ないときは助けてくれ、
  私が望むものを
  叶えようとしてくれた


 リーラからの熱い眼差しから心の内を読んだクリストファーは懇願する。
「姫、哀れな騎士にそろそろ愛の言葉を頂けないのですか?」

 リーラはクリストファーに抱きつくと見えないように一瞬表情を曇らせたがすぐに気を取り直す。
「だめ、国を取り戻すまでは言わない」

「姫の愛を受けるためには国が必要か」

「無理なんですか?」

「私に不可能などない。姫の為にリヴァリオンは奪還するつもりだったからな」
意外な言葉をもらいキョトンとするリーラ。

「国を奪還してから姫に愛を乞うつもりだったが姫はあらゆるところで愛想を振り撒くからいらぬ虫がつきすぎたから待つのはやめたのだ」

ーー虫って、まさか
  ライアンやルマンドのことじゃ…

「私の為に国を奪還しようと思っていたのですか?」

「もちろん。愛する姫の望みは叶えなければ……私の愛をわかってくれたか」
美しい銀髪を一房掴むとリーラを見つめながらキスをするクリストファー。

 クリストファーの想いにさらに胸が熱くなり再び抱きついた。

ーー好き… 
  あなたが好き…

リーラはクリストファーの胸に手を当てると
火の力を感じる。
「火の力を感じる…」

「姫を守るために精霊王がくださったのだ。私は貴女のための最強の騎士だ」
クリストファーはリーラの額に口付けを落とす。

「ふふふ、剣も強いし、火の力は使えるから本当に最強ね」
クスッと笑いながらリーラは納得する。

「リーラ、大丈夫か?」

「不安です、ちゃんと隊長が務まるかどうか…」

「大丈夫。リーラは人を惹き寄せ力がある。きっと上手くいく」

ズキッ
と聞き、なぜかリーラの胸が少し痛む。


「クリス…私は怖い…。ごめんなさい。私、変ね」

クリストファーは首を振る、
「不安になるのは当たり前だ。私の前では弱音を吐けばいい」

リーラは「ありがとう」と微笑み、クリストファーを見上げる。

「こんな可愛い顔で見上げられたら食べたくなる」
クリストファーはリーラの首筋をガブリと齧り付くとチュッチュと吸い付いた。

「んーっ!クリス~」

首筋から口を離すとクリストファーはリーラを見つめる。
「狼は待てない性分だ、リヴァリオンを奪還したらすぐにリーラを食べるからな」

リーラは静かに頷くと不安な表情を悟られないようクリストファーの胸に顔を埋めた。

ーー私は……帝国に戻れるのかしら…?



 束の間の逢瀬を重ねた二人は手を繋ぎながら皇宮へと戻って行く。




◇◇◇



 私はその時、考えもしなかった。
 皇后のお茶会の招待を令嬢達が受け、皇宮に訪れていたことを……

「ご覧になって、陛下でいらっしゃるわ」
「まぁ、例の令嬢とご一緒だわ。うふふ、陛下との仲は本当かしら?」

その令嬢達の中にレイチェル・コールディア嬢が訪れていたことを…
「リーラ・ハントン卿」

 そして、その場に共にいたメレディス・オリアン嬢まで傷つけてしまったことを…
「リーラさん、貴女は自分さえよければいいのね…」

 私の浅はかな行動で令嬢達をさらに不幸へと陥れているなんて私は考えもしなかったのだ。

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