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第12章 残酷な定められた天命
第1話 記憶が残したメッセージ ※ (リーラ目線)
しおりを挟む心地よい眠りの中、私は誰かの腕に抱かれている。その人の肌の温もりが恋しくてさらに胸に顔を埋める。私は手を伸ばし手慣れた手つきで誰かの背中を撫でる。触れた先は何も身につけていない逞しく身体…
ーー………あれっ?
クリスといつの間にそんな関係に
なったの?
私の傍で休んでいる誰かは目を覚まし、「おはよう」と私に優しく口付けを落としていく。そして、私の身体を服越しに優しく撫でる。その手は撫でるだけでは満足せず背中から腰へ、そして太ももへ進み、撫でる手が揉みほぐすように大胆になっていく。すると寝間着を捲り上げるように太ももから手が服の中へと侵入していく。
ーークリス、待って!
私の心の準備が!
「だめ」
私の意識と違う女性の声がその誰かに甘く囁き、手を戒めるように止める。
「どうして?」
と相手も甘えるように囁いてくる。
ーーう~ん、耳元で囁かないで!
あれっ?
クリスの声と違う…
「もう朝なのよ、私、朝ご飯作らないと…」
私と違う女性が声を発している。
「じゃあ、朝ご飯はリーリラでいいや」
と私の前に現れたのはクリスとは違う金髪、茶色の瞳を持つ甘いマスクの男性だった。その男は私の唇をチュッと奪うと止めていた手はさらに上へと侵入させ、私の胸に到達させた。
「いやん!カイル!あん!」
ーーちょっと待ちなさいよ!
何、いやんとか言ってるのよ!
私にはクリスがいるだから
勝手に胸を触らないでよ!!
その男性は慣れた手つきで寝間着をスルッと脱がせにかかる。
ーーちょっと待ってぇー!!
ドタン!!!
窓から朝の眩しい陽射しが入り、可愛い鳥の声がチュン、チュン、チュンと聞こえる。
『リーラ、何してるんだ』
「痛っ~い」
私はエクストリアの念話で我に返り、周りを見渡すとどうやらベッドから落ちたようだ。
「夢…か…」
『派手にベッドから落ちたな。凄い音がしたがぺぺとヴェスタは…まだ寝てるな』
「ピヨピヨ~~」
「ガルルルゥ~」
鳥と狼は夢の中のようだ。
「変な夢…」
『夢?』
「なんでない、なんでもない」
剣に男女の営みの夢を見ましたなんて恥ずかしいことは絶対に言えない。
それにしても本当に夢なんだろうか…
魂の回復後からある男性と女性の記憶が自分の記憶のように頭に存在している。
そして……。バッチリ、男性が服を脱がせて女性に何をしたのか分かっている。
「勘弁してよ…」
うら若き乙女の私には衝撃的な内容だったので思わず顔を赤くしてしまう。
「リーリラ……カイル……」
夢の中の男女は確かにそう言っていた。
リーリラ姫はエステール家に降嫁されたお姫様でカイルは夫となった人だ。
つまり、この二人は私のご先祖様…
なぜ、この二人の夢を見るだろうと私はこの時、妙な胸騒ぎがして仕方がなかった。
◇◇◇
二ヶ月を切ったゾーン戦に備えて6番隊は戦時中の応急処置法をアマーノ先生から教授してもらう為に朝から医療院で学んでいる。今は朝から続く講義も終わり、昼食を久しぶりに仲間達と取っているのだ。
「はぁーーーー」
私は昼食のトマトパスタをフォークで突きながら溜息を吐く。
「さっきから百面相が凄いんだけどさぁ、恋の悩み?」
正面に座るルディはパスタとパンを一気に口にパクりと放り込んだ。
「違う、最近、夢見が悪くて」
私もパスタを口に放り込み、パンも千切ると押し込むように口に入れた。
「夢?確かに目の下にクマがあるね。大丈夫なの?恋愛中って女の子って綺麗になる筈なんだけど…」
「はい?誰か恋愛中?クマが酷くて綺麗じゃなくてすみませんね!」
そんなにクマが酷いかなと目の辺りをぷにぷにと触って見る。
「アマーノ先生にこの後診察してもらうから相談してみなよ」
「そうだね。お先に!」
と私は食べかけの昼食を持ち立ち上がるとアマーノ先生の部屋に向かった。
◇◇◇
コン、コン、コン
食事を手早く済ませると診察を受ける為にアマーノ先生の部屋をノックして入って行く。
「先生、失礼します」
「リーラ、さぁ、入りなさい。どうだい?体調は?」
「良好です」
「力の変化は?」
「うーん、そうですね……今までとは違うような力が溢れてでるというか…今まで治癒力が私の力だと思っていたんですが、色々な力が出せたりします。例えば、火、水、風とかでしょうか…」
「こりゃすごい。確か精霊王に会ったと言ってたね。万能な力を持つ精霊から力を授かったようだからあらゆる力が使えるのだろう。しかし、万能の力はあまり人前では見せないようにしな。また、狙われるよ」
「はい…あと、魂の回復後、故人の記憶が私の記憶と混ざりあっていて、夢で良く見るんです…」
「故人?例えば?」
「祖先であるリヴァリオンの初代王やリーリラ王女の夢です」
「うーむ、古来から輪廻転生と言う考え方があるんだが、魂は何度も生まれ変わると言う考え方だ。これが本当ならその魂が初代王、王女、そしておまえさんに引き継がれたから記憶が残ってるんじゃないだろか…」
「輪廻転生…」
「その初代王や王女もおまえさんと同じ力を持っていたんじゃないのかい?」
「?!」
ハッとなりアマーノ先生を見つめる。
「恐らく、魂の前世の記憶が見れるようになったんだろう…おまえさんの力については不可解な点も多い。今はその記憶が力を知る為のメッセージでもある」
メッセージ………
「何か不安なことがあるなら私に相談しなさい。出来る限り力になるよ」
アマーノ先生は優しく肩をポンポンとたたき、安心させようとしてくれた。
「はい」
この魂に残る記憶達が私に何を伝えたかったのか、私はすぐに知ることになるのだ。
この魂を受け継いだ者の運命を……
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