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第11章 リーラと精霊王 フォールド領編

第3話 古の火の精霊との出会い(クリストファー目線)

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 海に敷かれた光の道を進むと突然に目の前に島が現れる。島へと上陸すると、私達を迎えようと島民と思われる人々が既に待っていた。

 一人の老人がこちらですと案内をするので馬を預けて、老人に従った。

「陛下、この島、たくさんの人が住んでいますね」

「あぁ」
周りを見ると我々を見ようと島民達が次々に現れた。皆、フォールドの領民と同じ銀髪に瞳は青色の瞳をしている。

「我々はかつて陸で迫害を受けて、逃げてきた一族なのです」

…」
とリーラがじっと私を見て来た。

 あぁ、そうだろう、我が一族が恐らく追いやったのだ。祖先の悪行の数々を思うと頭が痛くなる。

 老人は美しく光り輝く透き通った川の側を歩くとリーラが
「うわぁっ!」 
と声を上げた。 

「お嬢さんには精霊が見えるのかね?」

「はい、みんな、ようこそって歓迎してくれてます」
とリーラはにこにこと喜んだ。

ーー精霊が周りにいるのか…
  私には見えない…

とがっかりしていることがリーラに悟られ、元気出してと背中を撫でられた。

「………」


川の側を歩くと霧が現れる。
「このまま先をお進みなされ、精霊王がお待ちじゃ」
と指で差し示すと去って行った。

 私の肩に止まっていたぺぺ様が翼を羽ばたかせ、風を吹かすと霧がすうっと消え、滝が見えて来た。滝を目指し進むと滝壺に白い白衣を身に付けた男女がいた。銀髪で紺碧色の瞳、まさにリーラと同じ容姿だった。ぺぺ様が男の方へと飛ぶと男は手を出し、ぺぺ様はその手に止まる。

「精霊王様、お待たせいたしましたピヨ」

「あぁ、ご苦労だった。あの子か…」

無表情な男はリーラと私をチラリと見た。

「呪われ狼の子孫を連れてきたのか…」

「ごめんなさいピヨ。でもいい奴ピヨ。紹介したかったピヨ」

「精霊王の領域に侵入したことをお詫び致します。我が名はクリストファーと申します」
片膝を突き頭を下げるとリーラは驚いたように声を上げた。

「皇帝なのに頭を下げちゃダメでしょうが!!」
と私の身体を揺さぶり始めた。

ーー馬鹿者めが…
  空気を読め
  この場を制しているのが
  誰なのかわからぬとは頭が痛くなる

「ふふふ、なんて面白い2人なのかしら」
銀髪の女性は上品に笑う。
「ようこそ我が島へ、歓迎するわ。私はヴァリオンの妻ヤディナです。貴方達のお友達は浜辺の村で休んでるわ。お嬢さんの力の痕跡があったからヴァリオンが助けてくださったのよ」
と女性はにこりと笑いかけた。友達と聞き、ルマンドだとリーラは安堵する。

「ヤディナよ、余計なことを話すでない。さぁ、近うよれ」

私達はゆっくりと2人に近づく。

「これはまた酷く魂に亀裂が入っているな。良くこれで生きていたものだ。神を酷いことをなされる」

「えっ…私、そんなに酷い状態だったのですか?」

「あぁ、かなりな。この裏切り者がおまえに力を与えていたのだろう。久方ぶりだ、エクストリア」

『お久しぶりです、精霊王様』

「おまえが私の前に現れることは許してはいないが、この子を連れてくるにはおまえの力も必要だったのだろう。仕方ないな」

『……』

「褒めてやろう」

『精霊王様、ありがとうございます』
「ようやく和解の兆しピヨ」
グスンとぺぺ様は翼で涙を拭いている。

「さぁ、こちらに来なさい、愛し子よ」
と精霊王が手招きすると力を使い、リーラの身体は引き寄せられている。精霊王はリーラの頭を優しく触れ、額に口付けをすると白銀色の光がパァーッと辺り一面放たれた。
 精霊王はリーラの首からネックレスについている石に触れた。

「亡き人間の想いが込められている…さぁ、愛し子よ、再び、魂に我が力を吹き込もう。力を蓄える間、母からの想いを受け止めよ」
とリーラを滝壺へと突き落とす。
キラキラと光り輝き、透き通った水の中にリーラは沈んで行く。

「リーラ!!」
私は滝壺へと飛び込もうとすると精霊王に止められる。

「大丈夫だ、今から魂の修復と母の夢を見せてやるのだ。しばらく時間がかかる。さて、おまえは何の為にここに来たのだ?」
と冷たい眼差しで精霊王はギロリと見下ろした。

「それは…」

「まぁ、まぁ、ヴァリオン様、2人は恋仲なのですわ、あの子を一人で行かせないように一緒に来たのでしょう。仲睦まじいではありませんか?」

「恋仲ではありません。しかし、彼女のことは愛おしいと感じています」
ここで嘘を言っても仕方ない、正直な気持ちを話した。

「まぁ!!」
精霊王の奥方は頬を押さえて喜んでいる。
「気づいてたピヨ~」
ぺぺ様までも冷やかし始めた。

 私は真っ直ぐに精霊王を見つめる。

「ふっ。おまえの身体にある光の力の痕跡を見れば、あの子と密なのはわかる。不思議なものだ。王女と賊の末裔が結ばれるとは…」

 精霊王は、かつてリヴァリオン国の王女を襲った我が祖先の話をしていると悟る。

「力が欲しいのだろう」
精霊王の問いにクリストファーは頷く。

「力を使えたのはあの子がおまえに力を使わせてやりたいと無意識に手助けしたのだろう。さぁ、狼の子よ、これからの戦いには火の力が不可欠だ」
精霊王はある精霊を呼んだ。
「ヴェスタこちらへ」

森の中から美しい銀色の狼がやって来た。 

ガルルル『おかえりなさい、ぺぺ』 
ぺぺは狼の頭に乗ると挨拶を交わす。
「ただいまピヨ」

ガルルル 『あらっ?エクストリアもいるのね』
『久しぶりだ』

ガルルル『精霊王様、お呼びですか?』 

「あぁ、この者に火の力を与えておくれ」

ガルルル『わかりました、この子ね、何度も私に話しかけてきたわ』

「ヴェスタ、加護を与えてくれるピヨ、頭をつけるピヨ」
膝を付くと、狼は私の頭に頭を付けると光りが放たれた。身体の中に火の力が入り込み燃えるようなに熱くなる。

ーー身体が熱い!!!

「グハッッ!ハァ、ハァ、ハァ」

『力が順応するまで暫く耐えなさい』
狼からの念話が伝たわり、私は必死に狼にわかったと頷いた。

『ヴァリオン様…この者と共に陸を渡りたいです』
キュルルと狼は精霊王に懇願する。

「わかった、すまないね。みな、アクアベルのこと心配してるんだな」
精霊王はそう言うとヴェスタを優しく撫でたのだ。


 










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