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第11章 リーラと精霊王 フォールド領編

第2話 精霊王の島へ

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ヒュゥー
ヒュゥー
海の方から冷たい北風が吹き始めた。


「隊長見えて来ましたよ!あれがフォールド城です」

 先頭を走っていたダンの声にリーラは馬を止めよ合図を送る。 

「馬を休ませろ!」
ダリルが隊員達に命令すると皆、それぞれ身体を伸ばしたり、馬に水を与え始めた。

 リーラは馬から降り、小高い丘の前方に広がる景色を見るとフォールド城とその背後に今にも雨が降りそうな重い雲と灰色の海を見えた。

 海から冷たい風がリーラの頬に当たる、そっと、冷たい唇に触れ、目を閉じた。
「ルマンド…」

 ーー必ず無事でいて
   

 再び目を開き、灰色の海を眺める。遠くから眺める海の様子は海難事故を起こした様にまるで見えない静かな海だった。


「リーラ様、大丈夫ですか?」
正式に第1所属部隊に配属になったアイリが心配そうにリーラの顔を覗いた。
(隊長職に着いた為、率いていた第2所属部隊は第1所属部隊へと変更。メンバーは変わっていない)

「アイリ…大丈夫。さぁ、救助を待っている人達の元へいこう」

「はい」

馬の元へ戻りながらリーラはウィリアムに目をやる、その姿は焦りや不安を感じているようで彼もじっと海の方角を見つめていた。

「アイリ、ウィリアムは大丈夫?」

「兄が行方不明と聞いて動揺しています」

「ウィリアムのこと支えてあげて」

「はい!」
アイリは任せてくださいと可愛くガッツポーズを決めた。




◇◇◇


 1,6番隊は馬を走らせ、フォールド城へと到着する。城は海難事故のため、多くの城仕え達が対応に追われ、安否を確認したい騎士達の家族が城の周りに集まっていた。

 皇帝を出迎える為にフォールド領都の官吏達が出迎えに来た。クリストファーを城内へと案内するとウィリアムは傍に立っていた側近のサザリーを見つけ駆け寄った。

「ルマンド兄さんは無事か?」

「申し訳ありません、まだ確認出来ていません」

「サザリー!おまえが傍にいたにもか変わらず何故止めなかった!!」
声を荒げるウィリアムの肩をリーラは掴む。

「ウィリアム、冷静になりなさい!我々は騎士達を救いに来たんだ。もしウィリアムが望むなら隊を外れ、城でルマンドの安否を待つことできる」
 
「ウッ……申し訳ありません、隊に残ります」
ウィリアムは自分の非を認め、すぐに冷静さを取り戻した。ダリルがウィリアムを慰めるように傍に立った。

「お前の不安な気持ちもわかる。しかし、我々は他の騎士とは違い、人を救う為に来ている。今まで学んできたことを生かせる場だ。自分の任務を果たせ」

「はっ!」
焦る気持ちを抑え、ウィリアム、いつでも出動出来るように準備を始めた。

 先に城内に入り説明を受けていたクリストファーと合流したリーラとダリルは官吏達に状況を問うと、
「私が説明します」
とサザリーが前に立った。

「二隻の軍隻は波に呑み込まれ大破。このホックス海岸一帯に船の破片が流れついている。生存者は数名発見。現在、溺水による騎士の亡骸が浜に打ち上げられています」

「リーラ、ダリル。捜索範囲は広域だ、我が部隊も何人かに分かれすぐに救助に向かわせろ」

「「御意」」
リーラとダリルは礼を取る。


「陛下がお疲れでいらっしゃるかと思います、どうぞこちらへ」
官吏の一人がクリストファーを部屋へと案内しようとする。

「必要ない。私も岸へと向かう」

「陛下が直々に…」
官吏達が響めきおける。

「リーラ、共に行くぞ、すぐに準備にかかれ」

「御意…」
なぜ私と一緒にいくんだろうと不思議そうにリーラは返事をした。



◇◇◇



 行方不明者の捜索が始まると隊は分散して救助にあたった。海岸には船の破片、溺死した騎士達が打ち上げられていた。

「また、船の破片に掴まっている騎士達が漂っているかもしれない」

「すでに小舟を出し、救助にあたっています」

「無残な…何が起こったのだ…」

 クリストファーとリーラは静かな海の方を見ると一筋の光がリーラに向かい、リーラを照らした。

パサッ
パサッ

いつの間にいなくなっていたぺぺが海の方角から飛んでやって来た。

「リーラー!精霊王様がお呼びだピヨ」

「精霊王?!精霊王って海に住んでるの??」

「違うピヨ、あの先の島ピヨ」

「呼ばれてるって私、任務中だし…」

「島にリーラの友達を預かっているらしいピヨ」

「友達…もしかしてルマンド…」

「そうピヨ、もう一人いたピヨ」

 リーラはクリストファーと目を合わせ頷き合った。

「光の道が出来るピヨ。馬で渡れるピヨ」

「えっーーー、海の上?!」
 リーラは半信半疑でぺぺを見る。クリストファーは疑うことなく馬に乗ると早々に海の上を走り始めていた。

「リーラ、行くぞ!!」

「はっ??」
陛下、順応早いですね…と心の中で突っこみながら恐る恐る馬を光の道に歩ませる。

 本気で海を行くですか?と何度もリーラを見る白馬に頑張ってと撫でると覚悟を決めた白馬は海へと脚を進めたのだ。







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