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第10章 恋の波乱を巻き起こすデビュタント

第9話 波乱のデビュタントー5ー

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宴が開かれていた広間から連れ去られたリーラはクリストファーに抱きかかえられながら必死に懇願する。
「陛下!降ろしてください!歩けます」

クリストファーは無表情のまま、
「デビュタントに参加しないと言ったのに、余を騙すとは…。首輪をつけてやろうか」
言い放つ。

「く、く、首輪って?!私は犬じゃないんだから!本当に参加するつもりはなかったですよ、でもアネット姫にドレスの宣伝をした方が良いと言われて…」

「言い訳はいらない」
とクリストファーは自室の扉を蹴り上げて開くとベッドにリーラを投げ捨てる。

「脱げ」

「はっ??」

「何度も言わせるな!脱げ!」


「えっ……16歳になったら強要されるんですか?!」
唖然とした表情で見上げるリーラを呆れ表情で見返すクリストファー。そんな二人を気にせず侍女達が急ぎ足で部屋に入ってくるとリーラのドレスを脱がしにかかる。

「アンデルクの痕跡は一切残すな!すぐに取り掛かれ!」
と侍女に命ずるとクリストファーはソファーに腰掛けた。

侍女達は素早くリーラのドレスを脱がすと、クリーム色に金色の刺繍が美しくなされたドレスを持ってきた。
「このドレスは…」

リーラ付きの侍女ミーラがこっそりと教えてくれた。
「リーラ様のデビュタントドレスを陛下がお作りなられていたんですよ、早くお伝えしていればこのようなことにならなかったのにね、ふふふ」
とこっそりと教えてくれた。まるで6番隊の騎士服を思わせるような美しいドレスにリーラは感動する。

素早い手つきで髪についていた紅色のリボンは投げ捨てられ、
「こちらのリボンはリーラ様の瞳と同じお色です。陛下とお揃いですわよ」
とミーラは下されていた髪を一気に纏め上げ、青色のリボンを付けらドレスに合った煌びやかな装飾品や首飾りがつけられていく。

「陛下、準備できました」
侍女の声でいつの間に黒の正装からリーラとお揃いの生地の礼服を見に纏ったクリストファーが近付いてきた。
 珍しく前髪も上げ、長い髪はリーラと同じ瞳のリボンで束ね、クリストファーの整った顔がよくわかる。黒い正装騎士服を着用することが多いクリストファーが珍しい白地に金色の獅子が施された正装着が来ている姿にリーラは美しさのあまりあっと声を漏らす。

「おまえには赤は似合わない」
とクリストファーはリーラの頬を優しく触れる。
「へ、へ、へいかっ、ドレスありがとうございます!騎士服に似ていて素敵です!」

「おまえには色々罰を与えたいが、今宵はおまえの美しさに免じてやろう」
と照れているリーラを愛おしく感じたクリストファーは腰に手を回すと会場へエスコートをした。




広間に再びトランペットの音が鳴り響く。

再び登場したクリストファーとリーラの姿に皆驚きの声を上げる。

「まぁ、なんて美しい…」

クリストファーがリーラをエスコートしながらフロアー中央に進む。
「デビュタントのファーストダンスは私がやろうとと思っていたのだか……仕切り直しだ」
とクリストファーが手を上げて演奏が始まる。
♪♫♪♬~

「リーラ嬢、私と踊っていただけますか?」
クリストファーはリーラの手を取り微笑んだ。
「は、はい!喜んで!ちなみに私下手ですよ…」

「おまえは何も心配せず、我にゆだねればよい」

「は、はい」
リーラは頬を赤らめるとクリストファーはリーラを引き寄せて密接して踊り始めた。

 ーー陛下、近いです…

 リーラはクリストファーを見つめるとシャンデリアの煌びやか光の下、クリストファーの錫色瞳が美しく感じる。

ーーどうして今日はドキドキするの…

 じっと見つめるリーラにクリストファーは優しく微笑みかける。

「綺麗だ、リーラ」

「陛下…」

甘い雰囲気を漂わせながら踊る二人に貴族達も察する。陛下はこの娘が意中なのだと…




~♪ ♪♫♪♬~

 ダンスが終わり礼をするとクリストファーはリーラの手を取り、玉座へと進む。


「何が発表があるのか?」
と人々は騒めいているとクリストファーは鎮まるように手を上げる。


「今宵、帝国の新たなつるぎとなる者が誕生する。リーラ・ハントンの数多く活躍を讃え、この場において第6番隊隊長に任命する」
 

「はい?!」
リーラは驚きのあまりクリストファーの顔を見ながら呆然とする。

この宣言を聞いた人々は一瞬驚いた様子だったがすぐに最強の騎士誕生の喜びの声を上げ、
パチ、パチ、パチと拍手を送り新たな六大騎士の誕生に歓喜する。


「えっ…隊長に昇進しちゃったよ」
盛大な拍手の中、リーラはスカートを摘み、皆に礼をすると拍手の感謝を表す。



突然の明かされた発表にダリルはショックを受け、
「ハルク…私はどうやら首になったようだ」
降格を聞かされ呆然となる。

「ダリル…元気だせ」
ハルクもどう言えば分からず、肩をポン、ポンとたたき、ひとまず慰めた。




「姫様、先手を打たれましたね」
突然起こった皇帝の発表に衝撃を受けていたアネットはデュークの一言に我に還る。恐らく、皇帝はライアンがリーラにプロポーズをすることを察したのだろう。リーラを隊長へと昇格させる場を作り、プロポーズの機会を与えなかったのだ。隊長クラスになればより国外への移住は難しくなる。つまり、リーラをアンデルクへには行かせないという皇帝からの宣戦布告だ。

「まさかノーザンランド皇帝もリーラを手放したくなかったのね…」
もう少し下調べをしてから策を練れば良かったとアネットは悔しがるとエリザベスが遠くから勝ち誇っかのようにアネットに笑いかけていた。

「エリザベス皇女ッ!ライアン、プロポーズどうするの?」
とアネットは心配そうにライアンを見るとリーラを想っているのは自分だけではなかったことに衝撃を受けているようだった。

「あぁ…」
ライアンはポケットにある箱を握りしめると
「リーラに気持ちを伝える…そして、プロポーズするよ」
ライアンはリーラを再び見つめるとリーラの元へ歩き出した。

 


◇◇◇


「クリス、いいのか?リーラがまた王子と踊ってるぞ」

「あぁ、問題ない」
先程の焦り様から打って変わり、落ち着き払っている友をみながら給仕からワイングラスを受け取り、クリストファーに渡した。

「部屋に連れ去った際にリーラに変なことをしてないだろうな」

「何を馬鹿なことを言っている」
クリストファーはビルを呆れた眼差しを送る。

リーラとライアン王子を見ると二人でテラスに向かうようだ。

「二人きりにして大丈夫なのか?あれ程焦っていた癖に」

「大丈夫だ、リーラには本来の目的を自覚させた。しっかりと王子の想いを斬り捨ててくるだろう」

「本来の目的……ゾーン戦のことか…」

「その為の隊長だ」

「おまえがわからなくなるよ、隊長なら先陣を切らないと行けないんだぞ?リーラを想っているなら普通は戦に出さないだろう…何かあればどうする…」

「待っていろと言っても待たないだろ。リーラにとって国奪還が1番大切なことだ。行かせない方がリーラを苦める」

「クリス…」
ビルはクリストファーは一度決めたことは変えることはないてわかっていたのでそれ以上は口をつぐんだ。

「リヴァリオン戦には秘密兵器も開発中だ。私はリーラなら奪還できると信じている。じゃあ、あとは頼んだ」
とクリストファーはワインを飲み干すと皇太后と共に宴を後にした。

 緊張が漂っていた広間は獅子が去ったことで貴族達はほっと胸を撫で、貴族達は話を始め、賑やかになっていく。

「リーラを守ってやらないといけないな」
とビルはこれから貴族社会に身を置かなくてはいけない義妹を心配しながらリーラの為に社交の場へと向かって行った。

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