146 / 240
第8章 孤立した皇太后の故郷 ウィターニア編
幕間 フレンチェスカ・レニーの回想ー1ー ※
しおりを挟む
(R15となっています。苦手な方は控えて下さい)
走りゆく6番隊を見送りながら、ふとフィールド領側を見ると一人の若き騎士がじっと去り行く6番隊を見ていることに気づいた。
「あれは、フィールド公爵の御子息様ね、もしかして6番隊に想い人がいらっしゃるのかしら」
フレンチェスカは6番隊達の二人の女性騎士に気づいていた。想い人はあの二人のうちのどちらかなのだろう。
「若いっていいわね、羨ましいわ」
フレンチェスカは自身の若かりし頃を思い出していた。
かつてウィターニア王国は数多く貴族達が仕えていた。私はウィターニアの国境付近を守る伯爵の一人娘だった。跡継ぎがいないために幼馴染の隣領の次男と婚姻を結び仲睦まじく過ごしていた。
時の情勢はノース山脈を越えたノーザンランド村の賊達が周りの村や国を合併し、あっという間ににノーザンランド国、そして帝国へと急成長していた。
東にあるコールディア王国は帝国の属領になることを表明し、帝国に目をつけられていた南にあるローレンヌ王国は自国の家臣に裏切りに遭い、帝国の属領へと統合された。ノーザンランド帝国の脅威がやって来ることをウィターニアはひしひしと感じながら、国境付近に守る防壁であったレニー家は砦の強化に努めていた。若かった私はノーザンランドの脅威もさほど感じてはいなかったが、砦を守っていた父親がノーザンランドに陥され事態は急変する。帝国の勢いは早く、第2の砦を守る為に夫も発つ。
「もしもの時はエルザと共に逃げるんだ」
夫の忠告も虚しく、帝国軍に夫は討たれウィターニア王国からの救援など来ることなくあっさりと占領されてしまったのだ。
侍女達からは逃げるように言われたが、私が逃げるまでに領内の騎士達は命をかけて戦う、彼らにだって家族がいるのに… 。愛する夫は殺され、私まで殺されてしまえばこの地は荒らされてしまう…
考えるのよ、フレンチェスカ!
生き残る道を…
私が上手く立ち回れば…
当主として先祖が代々守ってきた土地と民の命が私の肩に重くのし掛かった。
「降伏しましょう、当主として私が出るわ」
「姫様!!」
「エルザがいると人質を取られてしまう。娘を頼んだわ」
侍女にエルザを託すと、覚悟を決める。所詮殺される身だ、踠いてみるもありだろう。1番綺麗なドレスを身に纏い、敵の頭に目通りを願うとあっさり通る。
「私はこの地を治めていますフレンチェスカ・レニーございます。どうか、我が地に慈悲を、民もお救いくださいませ、ウィターニアを裏切り、貴方様にお仕え致します。お願いいたします」
「顔をあげろ、この地は女のおまえが治めているのか」
私は顔をあげると前には黒髪で真っ黒な瞳で睨みつける目つきが恐ろしい若い男がいた。イーサン・ルシュルツ・ノーザンランド、ノーザンランド帝国の皇子だった。
「い、いえ、父でございます。しかし、先日討たれ、私が一人娘でございますから私が当主でございます」
「女のおまえにどれだけの価値がある?」
「ありますわ、試されます?」
私は立ち上がり、わざと胸の谷間を見せつけイーサンを誘惑しようと試みる。
「この地はウィターニアを陥とす為には重要な地でございます。我らウィターニアの情報に精通しております故、お役に立てますわ、ふふふ」
震える身体を叱咤し、妖艶に振るまいながら上目遣いで懇願する。
「……所詮ウィターニアは滅びゆく国…私は民を救い、皆とともに生き残りたいのです」
真っ直ぐに男の目を見つめた。
「……ふっ、フレンチェスカ、我の荒ぶる身体を癒せるか」
「ふふふ、もちろんでございますわ、我が主人」
イーサンは私を担ぎあげると寝所へと手荒く運んだ。イーサンはすぐにドレスを破ると私を激しく抱き始めた。まるで獣のような交わりに必死に応えるように尽くすと朝まで相手をさせられた。情事が終わり横たわるイーサンを見ると苦しげな様子で眠りについていた。痛む身体を動かすことも出来ず、瞳を閉じ眠りにつこうと思うとなぜか母がいつも子供の時に歌っていた花の唄が脳裏に浮かび、口ずさんでいた。瞳から涙が流れていた。泣いている姿を見せてはいけないとイーサンを見るとの先程の苦しげな様子が和らいでいるようだった。私はこの時、なぜなのかこの歌を歌い続けた方が良いと感じ歌い続けた。
眠りから覚めたイーサンが、
「おまえ、歌っていたか…」
「えっ…はい」
「そうか…、久方ぶりによく寝れた。おまえのおかげだ。余はおまえが気に行ったぞ、フレンチェスカ」
「こ、光栄でございます」
イーサンは私を気に入り、皇子の愛人の座を得ることができた。私は帝国の騎士達に居心地の良い駐屯地としてレニー領を提供した。領民からはもちろん反発があり、私は非難されることもあったが他領に比べ、レニー領の民は不当な扱いは受けず、帝国の民として丁重に扱われ、いつしか民達は身を挺して民を守ってくれたと私に対して感謝を述べてくれるようになったのだ。
走りゆく6番隊を見送りながら、ふとフィールド領側を見ると一人の若き騎士がじっと去り行く6番隊を見ていることに気づいた。
「あれは、フィールド公爵の御子息様ね、もしかして6番隊に想い人がいらっしゃるのかしら」
フレンチェスカは6番隊達の二人の女性騎士に気づいていた。想い人はあの二人のうちのどちらかなのだろう。
「若いっていいわね、羨ましいわ」
フレンチェスカは自身の若かりし頃を思い出していた。
かつてウィターニア王国は数多く貴族達が仕えていた。私はウィターニアの国境付近を守る伯爵の一人娘だった。跡継ぎがいないために幼馴染の隣領の次男と婚姻を結び仲睦まじく過ごしていた。
時の情勢はノース山脈を越えたノーザンランド村の賊達が周りの村や国を合併し、あっという間ににノーザンランド国、そして帝国へと急成長していた。
東にあるコールディア王国は帝国の属領になることを表明し、帝国に目をつけられていた南にあるローレンヌ王国は自国の家臣に裏切りに遭い、帝国の属領へと統合された。ノーザンランド帝国の脅威がやって来ることをウィターニアはひしひしと感じながら、国境付近に守る防壁であったレニー家は砦の強化に努めていた。若かった私はノーザンランドの脅威もさほど感じてはいなかったが、砦を守っていた父親がノーザンランドに陥され事態は急変する。帝国の勢いは早く、第2の砦を守る為に夫も発つ。
「もしもの時はエルザと共に逃げるんだ」
夫の忠告も虚しく、帝国軍に夫は討たれウィターニア王国からの救援など来ることなくあっさりと占領されてしまったのだ。
侍女達からは逃げるように言われたが、私が逃げるまでに領内の騎士達は命をかけて戦う、彼らにだって家族がいるのに… 。愛する夫は殺され、私まで殺されてしまえばこの地は荒らされてしまう…
考えるのよ、フレンチェスカ!
生き残る道を…
私が上手く立ち回れば…
当主として先祖が代々守ってきた土地と民の命が私の肩に重くのし掛かった。
「降伏しましょう、当主として私が出るわ」
「姫様!!」
「エルザがいると人質を取られてしまう。娘を頼んだわ」
侍女にエルザを託すと、覚悟を決める。所詮殺される身だ、踠いてみるもありだろう。1番綺麗なドレスを身に纏い、敵の頭に目通りを願うとあっさり通る。
「私はこの地を治めていますフレンチェスカ・レニーございます。どうか、我が地に慈悲を、民もお救いくださいませ、ウィターニアを裏切り、貴方様にお仕え致します。お願いいたします」
「顔をあげろ、この地は女のおまえが治めているのか」
私は顔をあげると前には黒髪で真っ黒な瞳で睨みつける目つきが恐ろしい若い男がいた。イーサン・ルシュルツ・ノーザンランド、ノーザンランド帝国の皇子だった。
「い、いえ、父でございます。しかし、先日討たれ、私が一人娘でございますから私が当主でございます」
「女のおまえにどれだけの価値がある?」
「ありますわ、試されます?」
私は立ち上がり、わざと胸の谷間を見せつけイーサンを誘惑しようと試みる。
「この地はウィターニアを陥とす為には重要な地でございます。我らウィターニアの情報に精通しております故、お役に立てますわ、ふふふ」
震える身体を叱咤し、妖艶に振るまいながら上目遣いで懇願する。
「……所詮ウィターニアは滅びゆく国…私は民を救い、皆とともに生き残りたいのです」
真っ直ぐに男の目を見つめた。
「……ふっ、フレンチェスカ、我の荒ぶる身体を癒せるか」
「ふふふ、もちろんでございますわ、我が主人」
イーサンは私を担ぎあげると寝所へと手荒く運んだ。イーサンはすぐにドレスを破ると私を激しく抱き始めた。まるで獣のような交わりに必死に応えるように尽くすと朝まで相手をさせられた。情事が終わり横たわるイーサンを見ると苦しげな様子で眠りについていた。痛む身体を動かすことも出来ず、瞳を閉じ眠りにつこうと思うとなぜか母がいつも子供の時に歌っていた花の唄が脳裏に浮かび、口ずさんでいた。瞳から涙が流れていた。泣いている姿を見せてはいけないとイーサンを見るとの先程の苦しげな様子が和らいでいるようだった。私はこの時、なぜなのかこの歌を歌い続けた方が良いと感じ歌い続けた。
眠りから覚めたイーサンが、
「おまえ、歌っていたか…」
「えっ…はい」
「そうか…、久方ぶりによく寝れた。おまえのおかげだ。余はおまえが気に行ったぞ、フレンチェスカ」
「こ、光栄でございます」
イーサンは私を気に入り、皇子の愛人の座を得ることができた。私は帝国の騎士達に居心地の良い駐屯地としてレニー領を提供した。領民からはもちろん反発があり、私は非難されることもあったが他領に比べ、レニー領の民は不当な扱いは受けず、帝国の民として丁重に扱われ、いつしか民達は身を挺して民を守ってくれたと私に対して感謝を述べてくれるようになったのだ。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる