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第6章 亡国の王女の子達
第16話 二人の恋の行方は…
しおりを挟む黒獅子棟、騎士総本部にてキャサリンは隊長として最後の会議に出席し、退任の挨拶をする。
「第4番隊隊長の後任隊長はジョン・ロッテンハイムとなり引き継ぎは完了したしました。副隊長は引き継ぎネイルに任せております。では、長い間大変お世話になりました」
キャサリンは拳を胸に当てクリストファーの前まで進み騎士の礼を取る。
「長い間ご苦労だった。第4番隊長隊長の任を解く」
「はっ、ありがとうございます」
ハルクはキャサリンに近づきお疲れ様と労いの言葉をかけ、肩に手を置く。
「あと、忘れずに騎士服をすべて衣服班に渡してくれよ」
「了解しました。今まで皆さまにお世話になりました。ザイデリカにいらっしゃる際はどうぞお声掛けくださいね」
部屋に集まった各隊長が笑顔であぁ、元気でと頷く、ただ1人を除いて。
「まったく、一人だけ辛気臭い顔をしている奴がいるなぁ。さぁ、みんなここは気を使わせて同期同士の別れの場を作ってやるぞ。さぁ、陛下、宰相行きましょう」
ハルクはパンと手を叩くとみなにウインクしながら退出を促す。
「えっ、辛気臭いって俺か?!待ってくださいよ、皆さん、突然」
まさか、いきなり2人きりにされると思わず焦り出すオースティン。
静まった部屋に2人きりになるキャサリンとオースティン。
「あの…、えっと…」
オースティンが何を話そうか悩んでいるとキャサリンが近づいてきた。
「本当にずっとハルク隊長が言うように辛気臭い顔だったわよ」
そしてオースティンの瞳をじっと見つめる。
「オースティン、今までありがとう。実はね、ハルク隊長に聞いたのよ。13年前、あの時ずっと看病してくれたって……。ふふふ、寝ている時ね、あなたの声が聞こえた気がしてたのよ」
そして、キャサリンはクスッと笑う。
「あと……。私の為に無理したって聞いたわ。本当に馬鹿ね。オースティン……。私と仲間の仇をとってくれてありがとう」
キャサリンの瞳が涙が一筋流れる。
オースティンはキャサリンの涙を手で拭う。
「キャリー……ずっと伝えたいことがあったんだ。キャリー、俺はおまえが好きだ。いや、愛している。おまえのそばにいるのは俺じゃだめか?」
「オースティン……」
「おまえが…あのおっさんが好きなののはわかる。確かにおまえの親父さんに似てるからな」
「……、気づいてたの?」
「当たり前だろ、何年の付き合いだ」
「ダリル様は私のことなんて見向きもしてないわ。彼も心から愛している方がいるんだもの。オースティン、あなたの気持ち嬉しいわ。ありがとう。でも、あなたは私と違い貴族だし、傷物のおばさんの私ではなく若い良い子探しなさいよ」
「馬鹿やろう!!おまえは傷物なんかじゃない!!」
オースティンはキャサリンを引き寄せ強く抱きしめる。
「俺にとって今も昔も愛するのは太陽の姫であるキャリーだけだ」
「あなただけよ……、姫って言って女の子扱いしてくれるのは……。私は子供も産めないし、それに、多分長く生きれないわ…」
「じゃあ、残りの余生を共に生きよう。おまえが嫌と言っても俺はおまえと共にザイデリカに行くからな」
「えっ?何言ってるのよ、2番隊をどうするのよ?」
「おまえがいたから2番隊にいただけでおまえがいないならいる必要ないからな」
「馬鹿ね……、本当に馬鹿……オースティン、私もあなたのことが小さい頃からずっと好きよ」
「えっ……?本当か!」
思わぬ言葉に喜びの表情を隠せないオースティンの頬にキャサリンの手を置く。
「ずっと昔から私は知ってるわ…
私が話かけるとあなたは嬉しそうにするって…
今まで影ながら助けてくれていたのも…
オースティン……
あなたなんでしょう…」
「キャリー、すまない。
君を守る騎士になると小さい時に約束していたのに肝心な時に守れない愚かな俺を許してくれ、キャリー……」
キャサリンは首を振りながらオースティンに伝える。
「あなたはいつも守ってくれたわ、私こそ、あなたに……、あなたに……」
瞳から涙をポロポロと溢すキャサリンにオースティンは優しく額に口付ける。
「キャリー、泣かないで。今度こそ、最後まで君の傍にいるから…、必ず君を守るから……」
二人は見つめ合い、互いの唇を合わせた。そして、額を付け合い笑い合う。
「今まで涙なんて流さなかったのに、私ってだめね」
「もう、我慢するなよ。俺が君の支えになるから辛い時は泣けばいい。俺も泣くけど」
「何それ…」
ふふふ、あははと顔を合わせ笑い合う。
「さぁー、忙しくなる!隊長を辞職しなくては!!」
そして2人はしっかりと手を繋ぎ部屋から出る。しかし、その姿を見られるとは予想していなかった二人は驚く。
「「えっ??みんな…」」
クリストファー、宰相、各隊長が部屋の外で待っていたのだ。オースティンはこの機を逃していけないと弟のラッセルの許可なく勝手に辞を願い出る。
「陛下、第2番隊隊長を辞職させて頂きます。後任は我が弟ラッセルとなります」
「陛下、お願いいたします」
ハルクも懇願する。
「ハルクから2人の話は聞いている。2人でザイデリカに行くのだな」
「「はい」」
「キャサリン・ローレンヌ、そなたにローレンヌ侯爵の爵位を与える。ザイデリカはローレンヌ領とする。今までの功績の褒美だ。オースティン・コールディア、ローレンヌの名を名乗り妻を支えローレンヌ領を復興せよ」
2人はクリストファーに片ひざをつき敬礼を示す。
「有難き幸せ、必ずローレンヌを復興致します。帝国に忠誠を」
「必ずや、妻を支えて復興致します。帝国に忠誠を」
「キャリー、幸せになれ」
ハルクがリーラを呼ぶ。
「リーラ、出番だ!」
「呼ばれて出てきてジャジャジャーン!!リーラ参上」
リーラがダリルの後ろからニョッキと現れる。
「キャサリン隊長!!おめでとうございます!」
そして、リーラはキャサリンに抱きつきキャサリンを見上げながらにかっと笑う。
そして、目閉じ、光の力をキャサリンの身体の内部へ入れる。下半身へ気を流す。左右の卵巣に黒い物を感じとり修復をかける。そして子宮へと力を流す。
わかる…
身体の構造を勉強したからより光力が使いやすい。キャサリン隊長の傷を癒せますように…
辺り一面眩い光が放つ。
「何??」
「キャリー!?」
光が収まり、リーラがキャサリンから離れる。
「任務完了!」
「全く、力を出し過ぎただろ」
ダリルは呆れる。
「あらっ?身体が軽いわ…」
「キャリー、大丈夫か?」
「大丈夫よ」
光を見た騎士達がなんだ、なんだ、なんだと通路に集まって来た。
「おまえ達、花道を作れ!!キャリーとオースティンがめでたく上手いったぞ!」
ハルクの一言でオーッと歓声とともに騎士達の花道が出来た。
リーラは2人の側にきてオースティンの腕にキャサリンの手を添えさせる。
そして、花道に向かい大声であげる。
「キャサリン隊長!オースティン隊長!
おめでとうございます!」
その声が通路に響く。
「ようやく丸く収まったのか?」
「めでたい!」
「あの鬼隊長を落とすなんてオースティン隊長よくやった!」
と騎士達の歓声と拍手が起こる。
「さぁ、行け!!」
ハルク隊長2人を押し出す。
「「お幸せに」」
ビルとダリルが声をかける。
「「幸せにな」」
宰相とラモントが声をかけた。
2人は微笑み合い歩き出す、騎士達の花道の中へ。
◇◇◇
コールディア侯爵邸 帝都
寝室にキャサリンとオースティン向き合う。
「ねぇ、これはおかしくない?まだ婚儀も迎えてないのよ。やっぱり、私は家に帰るわ。」
「駄目だ!君は目を離すと1人でザイデリカへ行くだろう。俺のそばにいてくれ!」
「じゃあ、一緒の寝室にしなくてもいいんじゃない?」
「駄目だ!目を離したくないんだ。もしかしたらこれは夢かもしれないとかだったらどうするんだ!」
「昔から心配性なんだから。まぁ、いいわよ。浴室使うわよ。」
「侍女を呼ぼうか?」
「いらないわ。身体中の傷を見たらびっくりするでしょう。」
「………」
パタン
浴室の扉が閉まる。
「何これ!!」
浴室にキャサリンの声が響く。
「どうした!!」
浴室には衣服を纏わず、裸のキャサリンが立ち尽くしていた。
「うわぁー。」
オースティンは手で目を隠す。
「ねぇ、背中の切り傷みてよ、オースティン。」
「えっ…傷?全く傷なんてないぞ。綺麗な背中だ。」
赤面しながらオースティンは答える。
「傷が…傷が一つもないの、なくなっているの……。」
キャサリンと瞳から涙が溢れる。
「あの時、リーラが抱きついたとき身体が温かくて心地良くなっていったの…」
「そう言えば、薬はどうした?飲んだのか?」
「実は、あの時から痛みがなくて飲んでないわ。」
オースティンは上衣を脱ぎ、キャサリンにかける。
「ゾーンが狙う王女……この力が狙いか…」
「わ、私、長く生きれるのかしら…」
「あぁ、生きれるさ。リーラには大きな借りができたな…」
「リーラ、リーラ、ありがとう、うっ、うっ、ありがとう…。」
オースティンは泣き崩れるキャサリンの肩を抱き寄せ、抱き締めあった。
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