上 下
98 / 240
第6章 亡国の王女の子達

第10話 リーラと医療院への道

しおりを挟む
 皇宮横に並ぶ白色の建物、通称白獅子棟に足を踏み入れるリーラ。
 この建物は貴族院や各大臣達の執務室がある。
 入り口にて財務大臣室への用件を伝え案内されるリーラ。
 緊張しながら扉をたたくと部屋の中から入室許可の声がかかる。
 中には官史らしき人達が何人かいてその内の1人が奥の部屋まで案内してくれた。

「大臣、お待ちかねのハントン卿がいらっしゃいました」

難しい表情で書類を睨んでいたギルバート・フォールドは書類から顔を上げると嬉しいそうな表情になる。
 黒髪に沢山の白髪か混じり灰色の瞳を持つギルバート・フォールドは、リーラを部屋の中央にあるソファへと案内する。

「お茶とお菓子を用意を頼む」

「はじめまして。リーラ・ハントンでございます。お気遣い不用でございます。お呼びと聞き参上いたしました」

「今後の第6番隊のことで色々を話をしたくてね。どうぞ、楽に。リーラ王女様」

「………」
おまえも知っているのかと不機嫌な表情を出すリーラを見てなんてわかりやすい子なんだとギルバートは笑いだす。

「そんなに警戒しなくていいよ。まず、お礼を言おう。呪いを解いてくれてありがとう。まずは、自己紹介だな。私は前々皇帝の弟で名をギルバート・フォールドと言う。フォールド公爵とも呼ばれている」

リーラははっとした表情になる。
「そう、気づいたかな?ルマンドの父親で、君のことは息子から聞いてたよ」

「ルマンドのお父さんなんですか!あまり似てないから全然わからなかったです」

「あははは、直球でくるな。ルマンドは気にしてるからあまり言わないでやってくれよ」

「す、すみません…」

「ルマンドはねぇ、母親似だからよくきれいとか言われだよ。それが弱く見られると気にしているだ」

「わかります。結構つまらないことを気にするタイプですよね。あっ…、余計な事を言いました」

「あははは。全くその通りだよ。リーラ王女のおかげであの子もかなり変わったよ。ありがとう」

 扉がノックされ黒髪の官史が色とりどりのお菓子を並べてくれる。

「大臣にグランディナで1番のお菓子を用意しろと命じられまして、朝1番に並んでご用意しました。さぁ、しっかりお召し上がりくださいね」
官史の男性がにこりと笑いかける。 

「うわーっ、美味しそう~」
リーラはありがとうございますと頭を下げる。 

「あぁ。可愛い、癒されるなぁ」
と部屋を出て行った。

「ショーンめ、ベラベラと余計なことばかり話をしよって。さあ、食べながら話そう。さぁ、何から食べよう」

「じゃあ、これから頂きます。パク、モグ、モグ。美味しい~~」

「あははは。可愛いねぇ。りすが食べてるみたいだ。さて、本題に入ろうか?第6番隊が新たに発足されるが,必要経費など考えねばならない。まだ決まったばかりでわからないだろうが、何か要望はあるかい?」

「そうですねぇ、気になっていたのは戦場に怪我をした時、救護隊をどうやって見つけるんだろうとは思ってました。私達はみな黒の騎士服です。正直わかりにくいのではと考えてました。先日、医療院でお世話になった時、お医者様達は白い服を着ていたので思い切って白い騎士服なんてどうです?それなら戦場でもわかりやすいと思うんです」
ふむふむと話を聞いていた大臣はいい考えだと頷く。

「やはり、救護隊の位置が把握しやすい方が目印となり救える速さが変わる。採用しよう。他には騎士服と馬もいるな…。隊長殿と話し合って希望があればまた言ってくれ。しばらくは模索しながらになるだろう」

「はい」

トン、トンと扉がたたく音がする。
「入れ」

「ウィンターニア大臣がいらっしゃいました」
銀髪の髪を一つにまとめ上げ黒色ジャケットとロングスカート姿の女性か入ってきた。
「ギルバート、待たせたね。おや、ずらりに人気店のお菓子が並んでいるじゃないか?私のためかい?」 

「そんなことある訳ないだろう!」

「あははは、わかっているさ」
軽快な口調で話す女性はマリン・ウィンターニア医療大臣である。

「お初にお目にかかります」
リーラは拳を胸に置き礼を取る。

「楽にしてくれ、ハントン卿。いや、リーラちゃんでいいのかな?」
あはははと遠慮なしにソファに座る。

「息子が世話になったね。ベンジャミンからよくリーラちゃんの話は聞いてたよ。襲撃事件の話も下の双子が聞いてさぁ。リーラちゃんみたいになるって騎士学校に入ってしまったんだ」

「アイリは女だろう!!まぁ、おまえの娘だから剣ぐらい握れるか」
呆れ顔でお茶を飲むギルバート。

「レオンより腕がいいかもなぁ。多分,2人は第6番隊希望だと思うから来年よろしく頼むね」

「はい」
とリーラは頷く。

「救護隊、助かるねぇ。医療院の先生方にいつもいい加減にしろって文句を言われていてね。せっかく手塩にかけて育てたお医者さまが戦場に駆り出され死んじゃうだろう。そりゃ、訓練もしてないど素人が戦場に放り出さるたら奇襲の際逃げられないからね」

「本当によく喋る女だ」

「またまた、丁度皇太后様に頼まれていてね。なんでもエリザベス殿下が医療院で学びたいらしく、護衛をどうしようかなぁと思っていたんだよ。しかし、いいタイミングで騎士達が医療院で学ぶ!
 護衛が周りにたくさん!ほら解決!仕事がはかどるよ~」

「エリザベス殿下も医療院で学ぶんですか?」
「そうだよ。だから善は急げって言うから今から医療院に案内しよう」

「ありがとうございます!」

「ついでだからエリザベス殿下も一緒に連れて行こう!」

「はい!!」
と2人は立ち上がり部屋を出た。

「ふぅー。嵐のように話し去って行ったな…」
ギルバートはやれやれと一息ついたのだ。

 
 場は変わりエリザベスと合流して医療院に向かったリーラ達。医療院は皇宮からほど近い貴族住居街と商業街の間に位置している。

「先生~!いらっしゃるかい?」

「相変わらずやかましいねぇ。何のようだね、マリン」

白衣を来た小柄な白髪の老女が奥から現れた。

「アーマノ先生、弟子を二人連れて来ました」

「はっ??また勝手な事を言いおって!」

「紹介しますね、エリザベス殿下とリヴァリオン国からやってきて今、ノーザンランドで騎士をしているリーラ副隊長です」

「はっ??」

「はじめまして」

「はじめまして」

「ほらっ、先生、新しい新人欲しいって話してたじゃないですか~」

「馬鹿もん!またまた、高貴な方を連れてきて!なんてこった」

「こちら副隊長の発案で、騎士隊に救護隊を置くことになりました。たくさんの騎士が学びに来ますのでよろしいお願いします」

「騎士隊に救護隊だと!まぁ、ようやく、わたしの意見が通ったのかい?」

「せんせー、意見って、戦争に医者を行かせたくないしか言ってないじゃないですか!」

「うるさいよ!おまえが私の意見に何か上乗せして上に言えばいいんだろが!」

「ちなみに救護隊は半年後に発足です」

「半年後だと!」 

「ということで、ビシバシ騎士達を一人前に鍛えて立派な救護員にしてくださいね!」 

「はぁーー。仕方ないねぇ。お二人さん、明日から来な!うちは厳しいからね!覚悟するんだよ!」 


「「よろしくお願いします!」」
リーラとエリザベスが顔を見合わせ、手を合わせ飛び跳ねながら喜び合う。

「リーラ、私達同僚なるんだから、これから絶対ベスって呼んでよ」

「うーん…、わかりました。

「ふふふ♪」




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

処理中です...