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第6章 亡国の王女の子達

第3話 兄からの手紙ー2ー

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朝、ダリル達はパスカル伯爵家の近くに辿たどり着く。ダリルとジョンはどのように潜入するか話し合っていると…

パサッ、パサッ。
小さい影が横切る。
ダリルは殺気を感じ剣を触る。

「ここにいたピヨ~疲れたピヨ~」

ダリルの頭にちょこんと着陸する。
「ぺぺ様…。このタイミングで何用ですか…」
頭から手に飛び乗るぺぺ。

「ルディが腹痛になって、リーラが代わりにアンデルクに行くことになったピヨ」

「はぁ?!」

「ルディが腹痛?どういうことだ!」

「お前はだれピヨ」

「失礼した。私はルディの父親のジョンと言います」

「ルディのパパピヨか?昨晩、牡蠣を大量に食べ過ぎて医療院に運ばれたピヨ」

「ルディ~。全くあの子は…」

「ぺぺ様!リーラがアンデルクに行ったとはどういう事ですか?!」

「うわっ、怒るなピヨ。僕悪くないピヨ」

「また、私かいない時に勝手なことばかり…。しかも、今このタイミングで戻れないだろうが…」

 頭を思い切りくダリル。
ジョンは息子が申し訳ないとダリルに頭を下げる。

 ふと、ぺぺを見つめにやりと笑うダリル。殺気を感じたぺぺはダリルとの目線を外す。

「ぺぺ様、私を手伝ってほしいのです」

「嫌な予感的中ピヨ。何ピヨ~」

「今から秘密文書を奪いに行きたいので力を貸して頂けますか?一緒に戦って欲しいのです」

「戦うピヨ??面白そうだピヨ!」
手の上でジタバタと喜ぶぺぺ。

若い騎士は不思議そうに鳥についてダリルに尋ねる。

「なんですか?この鳥?」
「我が騎士隊の最終兵器だ。全員で真っ向から行くぞ」

にかっと笑うダリル。
「「「えっ?!」」」

 リヨンとダリル達は伯爵の門に入ると警備の騎士に声をかけられる。
「リヨン様、この者は?」
ダリルはぺぺにお願いする。

「この屋敷の者達全てを遠くに飛ばしてください」

「わかったピヨ!風よ吹けピヨ~」
ヒュー
ヒュー
「あっ!あー!!」
と遥遠くへ飛んで行った。 

「ぺぺ様って言ったっけ?凄いなぁ」
ジョンは感心する。

「凄すぎる。最終兵器…」
若い騎士2人は改めて帝国には逆らってはいけないと確信した。

 伯爵家の騎士や使用人達は1人1人飛ばされていく。倉庫に着くとほこりのかぶった文書が沢山あった。

「我が家の馬車があります。それに積み込みましょう」
リヨンが話すと、
「坊ちゃん、お戻りですか?」
侍女が声をかけてきた。

リヨンが顔を引きつる。
「お嬢さん、リヨン坊ちゃんがこの書物を売りに出したいから手伝ってほしいんだ」
ダリルはにこりと笑い侍女の手を握る。

周りのジョン達も抜群の笑顔を見せる。
「はっ、はい」
 侍女は赤面する。
 さすがおじさんといえども男前は絶大な効果を発揮した。

運んでいると他の侍女も騎士達の色香に負け運ぶのを手伝う。

「坊ちゃん、旦那様の書斎の後ろにも沢山の書物がございましたよ、それはよろしいのですか?」 

「えっ??」 

「坊ちゃん!旦那様に頼まれていたじゃありませんか?」
ダリルはぺぺに目線を送るとリヨンに飛び乗る。

 ぺぺとリヨンは書斎に行くと書物の入っている扉には鍵がかかっていた。

「任せろピヨ~」
目をつむり風を鍵穴に送る。
ガチャ。 

「開いた!帝国の最終兵器恐るべし!」

「おい!おまえ、何してる!」

「兄さん!」
次男は家に居たようだ。

ぺぺが風を起こし思い切り壁に次男をぶつける。
「うわーっ!うっ…」
パタリ。

「帝国の最終兵器、怖い」

「うるさいピヨ。帝国とか言うなピヨ。
 ぺぺ様とあがめピヨ」

「はい、ぺぺ様」

「うむ」

無事、書類、書物を馬車に積む。

「あの、お昼でもご一緒しませんか?」
侍女がもじもじしながらダリルを見上げる。

「嬉しいよ。街に書物を預けたらすぐに戻るよ」
ダリルはウインクをしながら侍女の髪をさらりと触る。

「待ってます…」
侍女は赤面しながら馬車を見送ったのだ。

「おまえ、リンダが泣いてるピヨ」

「申し訳ありません…この書物を今から帝都に送ります。ガーリング男爵領からゾーンの密偵が海路から入りこんでいるらしいのです。集められた騎士でガーリングを陥したいと陛下に許可を貰ってきてほしいのです」

「えっ!また帝都ピヨ?陛下??誰それ?知らないピヨ~金髪のおっさんなら気配を辿たどれるピヨ」

「ハルクか……。はい。それでお願いします」

「人使い荒いピヨ~」
青色の鳥は再び空を舞う。

 

 夜、サイフォン男爵家に戻るとオレンジ色の短髪で黒い騎士服に袖には2本の金色の線が入ったノーザンランドの騎士がいた。

「はじめまして、コールディア騎士団長ネイサン・ロゼッタです。お見知りおきを」
 
どこかでみたことのある顔だった。

「ロゼッタ…」

「あははは。みな同じ反応されます。
帝都第4番隊隊長キャサリン・ロゼッタの兄です」

「あぁ。失礼しました。私、ダリル・ハントンでございますます。大変似ていらっしゃるのでビックリしました。 しかし、なぜ騎士団長がわざわざ?」

「コールディア領主命令でして… まぁ、一応我が故郷の危機を救ってこいと言われました。状況を伺い援軍を用意します」

「ありがとうございます。私はパスカル伯爵家から戻り、前ローレンヌ王国の王を陥れた書類や領主の不正書類を帝都に送られせました」

「ローレンヌ王を陥れた書類が実在するのか?!」
穏やか表情が一変して驚愕きょうがくの表情に変わる。

「なんてこった…あいつそれがわかっていてこっちに送ったのか…」

「どうかされました?」

「いや、私の真名はネイサン・ローレンヌです。滅亡したと言われているローレンヌ王族の生き残りです」

「では、キャサリン隊長も…」

「はい。我らの母が唯一の王族の生き残りで我らは母の護衛騎士との間にできた子なのです。いつかローレンヌ再興のため名を残すために母と父は結婚せずに身分を隠す為に父の名を名乗っていたのです」

「そうだったんですか…」
ダリルはキャサリンがリーラのことをいつも気を配ってくれていたのは同じ国を追われた王族だからだったのかと気づく。



 ザイデリカ城から男爵領就任式を終え戻ったサイフォン男爵から話を聞く。

「いやはや、全く歓迎されていない就任式でしたよ。ザイデリカ侯爵の息子が現在領主を任されているんですが、一言も発せず全てパスカル伯爵にやらせてましたよ。私は家の片付けが済んでいないと退席を申し出て急いで去りましたが、ちょうど良いタイミングでザイデリカ大臣の捕獲報告の早馬とすれ違ったので城内は大混乱でしょう。後、城内には紫色の髪の人間が居ました。恐らくゾーンでしょうね」

「ひとまず、明日以降、陛下の伝令を待ちガーリング男爵領をどうするか考えましょう」
みなが頷き、その夜は休息に入った。


 翌朝、朝食をとりながら作戦を考えているとリヨンがぺぺを肩に乗せて部屋に入ってきた。

「ぺぺ様がお戻りになられました」

「ダリル、おはようピヨ~」
リヨンの肩にいたぺぺはダリルの肩に飛び乗り足を差し出す。足に紙が撒き付けてあった。

「陛下と言う奴に会ってきたピヨ。ガーリングを陥して下さいと低姿勢でお願いされたピヨ。まぁ、なかなか腰が低い若者だピヨね~」
水の入ったグラスに飛びのりゴクゴクと水を飲む。


紙には 

ーパスカル伯爵家の書類感謝する。
 ガーリング男爵領制圧許可する。
 グリピット基地を拠点にすべし。
 応援送る、6日以内に陥せ。
 ザイデリカ城は騎士編成後制圧予定
 ガーリング陥落かんらく
 ダリル・ハントン帰還せよ。ー

帝国印とクリストファーの署名があった。

「ふざけるな!6日で陥せるか!何が腰が低い若者だ!」
ダリルがテーブルをドンと叩く。

「ほんと、陛下は人使い荒いなぁ」
ジョンがはぁーとため息を吐く。

「はぁ?6日?あの若造馬鹿か?!」
ネイサンもブチ切れる。

「あははは。無茶苦茶ですね。皆さん、不敬発言しちゃダメダメ」
笑うしかないサイフォン男爵。

「えっ?!今から戦争??」
がくりと肩を落とす小隊長。

「じゃあ、リーラのところに行ってからダリルの元に帰るピヨ。明日でいいピヨ?」

「えっ?手伝ってくれるのですか?」

「まぁ、あの若者からも頭下げられたからピヨ~。仕方ないから手伝ってやるピヨ~」
ぺぺの活躍を知る騎士達は喜ぶ。

「最終兵器ぺぺ様万歳!!」

「うむ、窓開けろピヨ。じゃあ明日ピヨね~」
そして再び空に舞う青い鳥だった。


シュッ、
シュッ。
刀を振る音がする。

「精が出ますね。ロッテンハイム卿」

「ジョンと呼んでくだされ、私もダリルと呼ばせてもらいますよ。同じ年の子を持つ親同士じゃないですか」

「じゃあ、遠慮なくジョンと呼ばせてもらいます。明日から戦闘ですね」

「嫌なもんですね。まぁ、騎士としてそんなこと言ってはいけないとわかっていますがね。ようやく戦争も少なくなり落ち着いたなぁと感じてのに。私には5人子供がいまして、3人の息子は騎士で、2人の娘は結婚して商会を切り盛りしてくれてるんですよ。私はずっと諜報部隊にいたので家族にも部隊に所属している事も内緒にせねばならないんですよ。しかし、気づくと息子達はみな騎士になり、上の息子2人は同じ諜報部隊ですよ。 
 小隊長としての私の判断が甘かったんでしょうな。まさかゾーンに行かせた部下、その息子の1人が戦死させるなんて思わなかったですよ」
 ジョンはゾーンのある方向を哀しそうに見つめる。

「ゾーンで戦死した騎士の1人が息子さんだったんですか…。ご冥福をお祈りします」

「すみまないね、気を使わせて。父としてゾーンが国が憎いんですよ。私もゾーンに諜報活動で行ったことがあるんだが、常に何者かに見られているような気はしていたんです。なんでしょうなぁ。あの得体のわからない国、魅惑の実など開発して人を操ったりするなど人ならざる者がいるような気がします」

「わかります。あの国はきな臭い。早めに手を打った方がいい」
ジョンとダリルは頷きあった。

そして、ダリル達は明方にガーリングへと出発したのだった。
 





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