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第5章 リーラとアンデルクの王子

幕間 アンデルク城内にて

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 アンデルク国の首都アンティーレにある城の執務室に1人の初老が部屋に入る。
 
 部屋の中には桃色の髪を一つに束め、ソファーに座りながら酒の入ったグラスを揺らしながら眺める男がいた。

「ご報告致します。宰相一族の族誅ぞくちゅうが完了いたしました」

「そうか、大義であった」

「王子様をおとりにつかうなど陛下も恐ろしい方ですな」

「ふっ。それで死んでしまったらこの国を治めるに値しなかったと言うことだ」

「獅子は子を崖から落とし強くすると申しましたのぅ」

「なんと、不快な。あの国の名を出すでない」

「申し訳ございません」

「まぁ、あの子のおかげで邪魔だった虫達を始末できたから気分が良いから許してやろう。それで、アンジェラの件は?」

「残念ながら断りを入れて参りました」

「まったく、使えん国だなぁ。あの馬鹿娘を送り込めたら国が崩壊できると期待したのに」

「まったく、上手くいかぬものですなぁ」

「あの馬鹿娘の使い道をどうしてくれよう」

「そう何度も馬鹿娘とおっしゃいますな。王妃様が嘆かれますぞ」

「そう言えばライアンを助けたのはあの国の騎士と聞いた。我が騎士団は何をしているのだ?デュークが戻り次第、騎士団には厳しい罰を与えよ!」 

「御意でございまする」

「あの国の騎士に救われるなど我が息子もひ弱な。まったくどうしてくれよう」

「報告によりますとこの事件をきっかけに王子様も変わられたようですぞ。大使の役割を立派に果たされたそうです。
 あの小さかった王子が、いやぁ、成長されましたのぅ。そう言えば、ライアン王子を助けた騎士は女子おなごだったそうです」

「何?女子おなごなのか。女子おなごに命を救われるとはまったく情けない」

扉がノックされる。
「失礼致します、早馬からの情報でございます」

「じいや、読め」

「まったく、老眼のわたくしに読ませるとは酷いお方じゃ。何、何…。?!。なんと、アンジェラ様がナターシャの大使を拾われてご一緒に向かわれているそうですぞ」

「ナターシャだと?あの馬鹿娘、全く役に立たないな!ひとまず警戒体制を引け」

「御意でございまする。では失礼致しまする」

「待て、じいや。ライアンを助けたのは女の騎士と言ったな。女騎士の探りをいれておけ」

「御意」

「まったくナターシャめ、何を企んでいる」

そして、アンデルク王はグラスの酒を飲み干した。


これからアンデルクにひと騒動起こるとは誰も知りはしなかった。

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